第62話:「問いの戦場」
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【前線・極限交戦区】
プロトゼロが歩を進めるたびに、大地が変質していく。
機械のように規則的な骨の柱、血液でできた鉄の花弁、
空を逆巻く黒い螺旋雲──それは世界そのものが“書き換え”られていくようだった。
ミナは立ち尽くしていた。
彼女の視界に、戦う意思を示す仲間たちの背中が映る。
「……私は」
震える手を見つめながら、彼女は自分の“能力”を思い出す。
攻撃を受けるたびに発動する、血液アーマー。
今まで、それは「守るため」のものだった。
だが──
「もう……逃げない」
彼女は前へ踏み出した。
***
【空間・戦闘領域】
ナギが先陣を切り、プロトゼロに拳を放つ。
だが、その攻撃は“吸収”されたかのように消える。
「……なるほど」
プロトゼロの声が脳内に響く。
「貴様ノ血ハ、“自我ヲ持ッタ”進化。
面白イ。ダガ──未完成ダ」
反撃の一撃がナギを吹き飛ばす。
すかさずミナが駆ける。腕を交差し、盾のように受け止める──!
「はあっ……!」
その瞬間、ミナの全身が赤く発光し、アーマーが強化されていく。
受け止めた衝撃によって、彼女の能力が“加速進化”したのだ。
「それでも私は……ここにいるッ!」
アヤメとクロも同時に動く。
連携してプロトゼロを翻弄するが、それはほんの一瞬のことだった。
「キサマラノ進化ハ、感情ニ依存シテイル。
不安定ダ」
プロトゼロの体から無数の触手が生え、空間を裂いてゆく。
***
【ナナの作戦室】
「無理……あんな存在、計算できるわけが──」
だが、そのとき。
ナナの端末に一つの“旧データ”が表示される。
「……待って、“彼”が動いている……?」
映ったのは、かつて“封印されたもう一体のZ進化体”。
コードネーム──イグザクト(EXACT)。
「まさか……“彼”が、反応したの?」
***
【戦場・終端】
ミナの血液アーマーがさらに形を変える。
背中に翼、腕には刃のような硬化、そして瞳が赤黒く光る。
「ナギ……一緒に戦おう!」
ナギが頷き、ふたたび立ち上がる。
プロトゼロの問いに、今、彼らは戦いの中で答えようとしていた。
「選べる未来のために──!」
【つづく】