第61話:「プロトゼロ:覚醒」
了解しました。
では、連載小説『始まりの終わり ―Z進化―』
第61話:「プロトゼロ:覚醒」
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【南方 第零隔離領域・旧研究所地下】
床に広がる無数のコードと、壁に刻まれた古い警告文。
「Z-Prototype:制御不能」「廃棄禁止」「絶対封印」──すべて無意味となった。
培養槽から立ち上がった“それ”──プロトゼロは、一歩を踏み出すたびに周囲の構造を腐蝕させ、
同時に別の場所を“再構築”していった。
空間が、存在が、彼の意志に適応して変化していく。
「進化トハ、選択デハナイ。必然ナノダ」
***
【防衛区前線拠点】
アヤメがモニターに映った巨大熱源のシルエットに顔をしかめる。
「これ……本当に“感染体”なの?」
「違う。データベースのどれにも該当しないわ」
ナナが端末を叩く。だが、あらゆる検索結果が赤く点滅する。
「コードなし。識別不能。未分類進化種──」
クロが呟いた。
「違う。あれは、進化の“起源”だ」
ナギが腕の痣を押さえると、そこから再び“硬質化”が始まる。血のアーマーが浮き出す。
「……やつは、俺たちの“先祖”かもしれない」
***
【回想:第零研究計画】
かつて人類が“死の予言”に対抗するために立ち上げた計画──
Z進化を人工的に起こし、支配・抑制すること。
その最初の被験体【プロトゼロ】は、自我を持ち、
人間の言葉を理解し、人類の“限界”を瞬時に察した。
そして、彼は言ったのだ。
「進化スル必要ナド、無イ。
我ヲ、恐レロ」
***
【現在・前線】
遠くから、黒い霧と共に“それ”が歩いてくる。
そして、声が響いた。
「ナゼ、進化ヲ“望ン”ダ?」
一瞬、空間そのものが“問い”になったような錯覚に包まれる。
ナギは前に出た。
「答えるつもりはない。俺たちは──“選ぶ”ために戦う」
血液アーマーがさらに強化され、背中に羽根のような突起が現れる。
「俺たちは、“お前”じゃない」
【つづく】