第59話:「空が見える場所へ」
爆発寸前の進化中枢を背に、ナギとアヤメは出口へと駆け抜けた。
ミナが手を伸ばし、ナギの腕をつかむ。
「遅いっつーの……!」
「ごめん、でも──ただいま」
ミナの瞳が潤む。その横でナナが端末を叩きながら叫ぶ。
「自動遮断が起動した! 出入口が──閉じるよ!」
「跳べ、ナギ!」
クロが叫ぶと同時に、アヤメが彼の背を押した。
全員が跳躍したその瞬間、白い閃光が爆心から放たれた。
***
気がつけば、そこは崩れた廃都市の高台だった。
風が吹いていた。
灰と煙の匂いをかき消すように、澄んだ空気が。
そして──
「……空が、見える」
ミナがつぶやいた。
その空は青く、どこまでも広がっていた。
ナギは拳を握った。
「終わった……いや、始まったんだな」
「ここからが、私たちの“生きる”ってことだよね」
アヤメの言葉に、クロも笑った。
「“始まりの終わり”……ってやつか。洒落が効いてるぜ」
ナナがふと問いかけた。
「でもさ……進化は終わってないよね?」
ナギのアーマー化した腕が、ゆっくりと消えていく。
その跡に残ったのは、奇妙な痣。
「……これは“兆し”だ。希望かもしれないし、警告かもしれない」
彼は空を見上げた。
「俺たちが選ぶんだ……何のために進化するのかを」
その空に、まだ見ぬ脅威の影が差すとも知らず――
【つづく】