表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/78

第5話:ミナの鍵



 


――記憶の欠片が、道標になる。


クロとサクラは、廃都市の地下へと潜っていた。

そこは、かつてORD(人類再興機関)が設置した「記録中枢オルム」。

選ばれたZ進化者だけがアクセスできる“記録の墓場”だった。


「……ここが“オルム”。記録された脳波、思考、実験データ……すべてが蓄積されている」


サクラの声が、金属の壁に反響する。


(ミナ……君の記録は、ここにあるのか)


クロは胸元に差し込まれたIDチップを握った。それは、自分の身体から摘出された“ナノ鍵”――記録領域への唯一のアクセスキー。


> 「ID認証完了。アクセス承認。開封する記録:ミナ・アサギリ個人ログ 第79層」




記録装置が青白く光り、ホログラムが現れた。

白衣を着た若い女性。だが、その目には疲労と、決意が滲んでいる。


 


「これが最後の記録になると思う……。私はZ進化を止めたかった。だが、クロを犠牲にしてしまった――」


(俺を……?)


「クロ、君がこれを見ているなら、どうか許してほしい。君は“人類最後の正常な進化体”なの……。君の中にある“再構築因子”だけが、この世界を救えるのよ」


映像が揺れる。奥から、誰かの足音が近づく。


> 「ミナ……ここにいたのか。逃げるな。お前も、Z進化者だろう?」




その声とともに、映像は黒く塗りつぶされた。


 


「……彼女はこの直後、処分されたのよ」

サクラが静かに言った。


「処分……だと?」


クロの指先が震える。怒りではない。罪の共有者としての痛みだった。


 


「それでも、彼女は君に希望を託した。だから、記録を封印せず、君に渡したの。……その意味、わかるでしょ?」


そのときだった。


> ――「希望、ね。それが、どれだけ多くの人間を壊したと思ってるの?」




女の声が響いた。機械ではない、生きた声。


振り返ると、そこにいたのは――銀髪の女性。

片目をバイザーで覆い、右腕は義手。

肩口から血液のような赤い物質が流れ、アーマー状に拡張されている。


 


「カナ・ジンライ……! ORDの“記録破壊者”!」


サクラが身構える。


「へぇ、あんたがクロ? よくここまで来たね。……でも、残念。ミナの記録はここで“完全に消える”の」


カナの右腕が赤く光る。血液を硬化させたような刃が形を取っていく。


「ミナはね、“Z進化の鍵”を自分の記憶ごと埋め込んでたの。あんたがそれを取り戻すなら……私が殺すしかない!」


 


「だったら、やってみろ」


クロの瞳に燃えるような光が宿る。

彼の全身から滲み出す血が、空気と反応して鎧となり、音を立てて“装甲化”していく。


「彼女の記録を、誰にも壊させはしない――!」


 


> 世界が終わっても、記録は生きる。

そして、記録は次の“進化”へ繋がる。




 



---


次回予告(第6話案)


第6話「進化の共鳴」

カナとクロの激突――血液を媒介にするアーマー同士の進化バトルが勃発。

互いに“記録された記憶”を読み取りながら、戦いは“感情の共鳴”へと変わっていく。カナの目的とは?

そして、ミナがクロに遺した“最後の記録”とは――?



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ