表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/78

第42話:「黄金の瞳の少女」



 


――静寂の中で、彼女は目を開けた。


カプセルの中、重力も時間も意味をなさない閉ざされた空間。

それでも、彼女の“意識”は明確だった。


 


「……わたしは……誰……?」


 


誰の声でもない。誰かの記憶が、彼女の中に流れ込む。


 


《記録:No.3実験体 名称:ナナ》

《ウイルス適合率:99.94%》

《感情反応:有》

《自我崩壊:未確認》

《任務:進化制御核として機能維持》


 


――そして、目覚める。外界へ。


 



 


「ッ……!?」


クロの拳が止まった。暴走しかけていた血のアーマーが、何かに引き戻されるように震える。


ミナが声をあげる。


「クロ……止まった……?」


 


《レコーダー》がわずかに首をかしげた。


「干渉信号? ……いや、違う。これは……“意思”だ」


 


カプセルが開き、光が満ちる。


少女――ナナはゆっくりと降り立った。

長い銀の髪、黄金の瞳。そしてその背後にゆらぐ、粒子のような光。


 


「……あなたたち……戦わないで……」


 


声は静かだが、確かに心に届いた。

それは“進化”を超えた、何か――


 


「私は……止める。ウイルスの暴走も、あなたの暴走も」


 


ナナの手がゆっくりと宙を舞う。

すると、クロの血液アーマーが静かに剥がれ落ちるように鎮まっていく。


 


《レコーダー》の目が光を帯びる。


「驚異的だ。No.3、いや“ナナ”。君は制御核として……完成している。

ならば、予定を変更する。君を回収する――」


 


「させない!」


ミナがナナの前に立つ。


「この子はもう“モノ”じゃない!意志がある、人間よ!」


 


クロもまた、深く息を吐きながら立ち上がる。


「この子の中にあるのは、希望だ。俺たちが失った、未来の……光なんだ」


 


その瞬間、上空から轟音。


――何かが、降りてくる。


強制着地した飛行ユニットの残骸から、現れたのは……


白いコートの、女性。


 


「――おや、間に合ったようね。面白いものが揃ってるじゃない」


 


その声は、冷たくも艶があった。


 


「名乗ろうかしら。私はイザベラ・クロード。元・ウイルス研究主任で、今は逃亡者。

あなたたちに、“進化の真実”を教えてあげるわ」


 


 


――第42話、終わり。



---

次回予告(第43話案)


「逃亡科学者イザベラ」

彼女が語る“進化の真実”とは? ナナ、クロ、ミナ……三人の運命が交差する中、新たな選択が迫られる。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ