表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/78

第36話:「ウイルスの記憶」



 


適応者との激闘の中、クロは奇妙な感覚に囚われていた。


目の前の“敵”と刃を交わすたび、脳裏に焼き付くように流れ込んでくる記憶の断片――

それは、“彼”が語らずとも伝えてくるウイルスそのものの記憶だった。


 


最初の映像は、冷たい実験室だった。


白衣を着た科学者たち。

透明なチャンバーの中で蠢く灰色の液体。

「超回復」「戦闘耐性の強化」「老化抑制」――

目的は、兵士の肉体強化のためのナノウイルス開発だった。


 


だが、ある時点で研究は逸脱する。


ある被験体に注入されたプロトタイプが、意識を持ったのだ。


 


『感染ではない。これは“共生”であるべきだった。』

研究ログに残された最後の言葉。


そして、研究者全員が“感染”という形で消えた。


 


クロは気づく。


「……お前、最初に感染した被験体の記憶を――いや、存在そのものを継いでる……?」


 


適応者は応える。


「記憶こそが命である。我らは“忘れぬもの”。人類が切り捨てた真実の化身」


 


ミナが割って入る。


「でも、あなたたちは人類を滅ぼした。進化のために」


「それは人類が望んだことだ。“管理された進化”を試みた結果だ。我らはその延長線にあるだけ」


 


クロの血液アーマーが微かに震える。

そこに、アレンの記憶が再び流れ込んでくる。


 


――「進化ってのはな、人間を捨てることじゃねぇんだ」


 


クロは叫ぶ。


「お前らの進化に、魂はあるのか!?

ただの本能に、痛みや希望を乗せられるか!!」


 


その瞬間、クロの胸部アーマーが砕けるように開き、血が脈動する。

その血は、地面に落ちたミナの涙と混ざり、蒸気を上げながら**真紅のスカーレットランス**へと変貌した。


 


「魂の進化、見せてやる――!」


 


――第36話、終わり。



---


次回予告(第37話案)


「紅の槍、貫けしは」

クロの新たな武器、“真紅の槍”が適応者を穿つとき、感染者の記憶の深層に潜む“ある少女”の存在が浮かび上がる――。それは、全ての鍵を握る存在だった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ