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第33話:「記憶の叫び」



 


終末の地――旧研究都市ネクルス・コア。

地下最深部で、“最初の適応者”にして“最悪の進化体”――アレンが姿を現した。


 


その身体は、もう人の形ではなかった。

肉体は硬質な黒晶化皮膚に覆われ、背には複数の血管状の器官がうねり、空間に“感染波”を放っている。

だが――その瞳だけが、わずかに人間の面影を残していた。


 


「……アレン……聞こえる?」


ミナが一歩、前に出る。

アレンの視線が、ピクリと動いた。


 


「私だよ。ミナ……ノエルの姉、そして……君にパンを焼いてあげた隣人でもある」

「君が熱を出して寝込んだとき、私の手を握って“怖い夢を見た”って言った……覚えてる?」


 


応答はない。だが、アレンの足が微かに止まった。


 


「ノエルは、君のことを最後まで信じてたよ」

「君が変わっても、きっとどこかに“人間の部分”が残ってるって……」


 


その時、クロがアーマー化した右腕を掲げ、記憶具現化システムを発動する。

血液から生まれる黒赤い光が、空間に“ノエルの記憶”を映し出す。


 


> 【映像:ノエルとアレン、パン屋の前で笑っている。】

「アレン、今度はアップルパイを作ってみようか?」

「えっ、甘すぎるのは……でも、ミナさんが好きだから……うん、いいかも……」




 


その記憶が、アレンの心の奥に波紋のように広がっていく。


 


「アレン……帰ってこい」


ミナが叫ぶ。


「君はもう、戦わなくていい! 生きるために“人間”を殺さなくていい!」


 


アレンの瞳が、微かに揺れた。


だが――


 


「オレハ……オレハ……」


その肉体が膨れ上がり、黒い結晶化がさらに進行する。


 


「――遅かったのか……?」


エルナが呟く。

感染進化は、感情すら完全に上書きしようとしていた。


 


クロが叫ぶ。


「まだだ! まだ“声”は届いてる!」


 


クロの全身が血液硬化を超えて“全身アーマー化”を始める。

彼の体から迸る、“共生進化”の波動。


 


「記憶がある限り、“人”は消えない! 俺たちはそれを証明するために――ここにいる!」


 


アレンの咆哮が響き渡る。

巨大な影が牙を剥く。

戦いは、ついに最終局面へ――


 


――第33話、終わり。



---


次回予告(第34話案)


第34話「最終進化体 vs. 共生体」

進化の行き着く先が破滅か希望か――クロの共生体としての限界を超える一撃が、アレンの“人間だった心”に届く瞬間が訪れる。だが、その代償は――。





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