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第27話:姉の遺志、血の記憶



 


再起動する視界の中に、鉄と煙のにおいが立ちこめていた。

クロとミナが降り立ったのは、旧第七研究都市「シグラム」。

ゾンビウイルスと融合技術――両方の研究が同時に進められていた、かつての地だ。


 


「この都市、何かが生きてる……」

ミナの肩に小さな電流が走る。

彼女の体内に埋め込まれた“融合補助核”が反応している。


 


クロは、研究所の跡地に足を踏み入れた。

朽ちかけた壁面、焼け落ちた天井。

その奥、機密隔離ゾーンの中で、1つのホログラムが起動する。


 


『この記録は、フユミ・Kによって残されたものです――』


クロの姉・冬美の記録だった。


 


彼女はこう語っていた。

「もしクロがこのデータを見るとき、私はもうこの世にいないでしょう。

だけど、あなたには生きてほしい。

あなたが“人間”として、どう生きるかを選べるように、私はこの命を投げ出します」


 


「姉さん……」


 


だがそのとき、異音が鳴り響いた。

地下の扉がこじ開けられ、“それ”が現れる。


 


融合体――コードネーム《エラディカ》

かつて失敗した融合手術の果て、理性を失い、破壊衝動だけで動く異形。


 


「来るぞ――ミナ、構えろ!」


 


クロは素早く右腕を切り裂く。

溢れ出た血液が即座に硬化し、鋭いアーマーとなって右腕を包む。


ミナも、左肩から防御血晶ブラッドシェルを展開。


 


「こいつ……普通のゾンビや融合種じゃない!」

「“遺志を失った融合体”……」


 


エラディカの咆哮が空気を裂く。

その巨体は、鉄骨すら紙のようにへし折る。


 


クロの血のアーマーが、攻撃を受けて砕ける。

だが、その破片がさらに細かく結晶化し、敵の腕を突き刺した。


 


「ただの防御じゃない……“血そのもの”が、俺たちの武器になる――!」


 


やがて、クロの中に“姉の記憶”が微かに蘇る。

「進化とは、共に生きる選択。忘れないで、クロ……」


 


エラディカは最後、涙のような透明な液体を流し崩れ落ちた。


その様子を見て、ミナがぽつりとつぶやく。


「……失敗作なんかじゃなかった。ただ、帰る場所がなかっただけ」


 


クロは頷き、拳を握る。


「俺たちが、その場所を作る。融合でも、人間でも、ゾンビでもない“新たな種”の未来を――」


 


夕暮れが、瓦礫の街を赤く染めていた。



---


次回予告(第28話案)


第28話「“感染者の楽園”―ミリアノ自治区」

東の砂漠地帯には、感染者のみが暮らす自治区が存在するという。そこに向かうクロたちを待つのは、“進化を拒んだ者たち”との対話。そして、ミナの出生に関わる衝撃の事実が明かされる――!





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