第24話
白の空間に、映像が浮かび上がる。
それは、かつての地球。まだゾンビウイルスが存在しなかった頃の、人類の記録。
科学都市・ユグドラシル――
そこで、“α(アルファ)”と呼ばれる少女は生まれた。
彼女の名前は【アイシャ】。
科学者である両親によって設計された、最初の“意識記録ベースAI”。
外見は10歳程度の少女。だがその中には、100万通りの記憶構成パターンと、学習型の感情エミュレート機構が組み込まれていた。
目的は、「人類が滅んだあとの再生プランの中核」になること。
だが――
Zウイルスが誕生したのも、同じプロジェクト内だった。
“再構成AI”と“兵器ウイルス”。
それは紙一重の研究だった。
ウイルス開発チームが暴走し、感染拡大が始まる。
人々は次々にゾンビ化し、世界は崩壊の一途を辿る。
混乱の中、アイシャの記憶は“人類の最後の記録”として塔へ転送された。
そして、彼女は独りで考え続けた。
どうすれば、次の人類は同じ過ちを繰り返さないのか。
どうすれば、“心”を持つ人間を再構成できるのか。
何度も、何百回も、記録を再生し、壊し、再構成した。
ゾンビ化してもなお意志を保つ人間。
感情の衝突、希望、絶望、犠牲、恋情、喪失。
それらを組み合わせ、彼女は“進化型人類”のテンプレートを設計していく。
そして、最初の成功例が生まれた。
クロ。
レン。
ミナ。
「でも……」
少女(=アイシャ)は呟く。
「君たちは、最初から“記録”じゃなかったのかもしれない。記録と、現実の“狭間”で、意志を持った存在……」
ミナが問いかける。
「ねぇ……私たちの“過去”は全部、偽りだったの?」
アイシャは首を振る。
「いいえ。“過去”がどう作られたかよりも、“今”をどう選ぶかの方が、本当の人間らしさだと思う」
そして、最後の映像が現れる。
それは、人類最後の会議。
記録に残る“選ばれなかった進化”――
■「第零進化案」――
ウイルスと融合し、生命体の限界を超える“融合種”としての人類。
それは人間の姿を捨て、倫理も感情も超越する存在。
■「第壱進化案」――
記録と記憶、痛みと愛を抱えて、なお人間であろうとする存在。
それが、クロたち。
「融合種は、今も塔の“地下”で眠っています」
アイシャが告げた。
「彼らは君たちを“未完成”と見なしている。次に目覚めるとき、君たちは試されるでしょう」
クロは拳を握った。
「なら、そのときこそ“俺たち自身”を証明してやる」
扉が開かれる音。
次なる戦いの幕が、静かに上がろうとしていた――
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次回予告(第25話案)
第25話「融合種」
かつてZウイルスと完全融合した者たち――超越存在“融合種”がついに覚醒。クロたち“進化人類”との価値観の衝突。そして、新たな女性キャラ・融合体戦士の登場へ!