表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/78

第2話:死者のささやき



> 「……待って」


瓦礫の影から、細い声が聞こえた。

クロがゾンビに襲われる寸前、空気が震えるような破裂音とともに、紫色の閃光が横から飛んだ。


ゾンビの頭部が、煙とともに弾ける。


クロが驚いて振り返ると、そこには一人の少女が立っていた。

白い外套を羽織り、片手に大ぶりな銃――だが銃身は半分、黒い骨のような質感をしている。


少女は淡々とクロに言った。


「感染者……じゃないよね?」


「……いや、たぶん俺は……感染者だ」


言いながらも、まだ自分が何者かすら掴めていない。

少女はその答えに少し眉をひそめたが、すぐに頷いた。


「あんた、血が流れてない。つまり、適応型……“Z進化者”だ」


そう言う彼女の首筋には、赤黒い痣のような模様が見えた。

それはゾンビ化の兆候――ではなく、感染者特有の“生体紋章”。


少女は銃を収め、名乗った。


「私の名前はサクラ。タイプZ-4。装甲血鎧ブラッドアーマー持ち」


「クロ。たぶん、それが俺の名前だ」


少女サクラは、ちらりと彼の異形化した左腕を見る。


「あんたも、まだ目覚めたばかりだね。だったら……今からくる“あれ”には気をつけな」


「あれ?」


サクラが顔をしかめると、周囲に空気の圧が走った。

ビルの谷間から、歪んだ人型のようなゾンビが現れた。


骨が露出し、背中には無数の手。目はなく、口だけが大きく開いている。

通常のゾンビとは異なり、異常に素早い。


サクラはすぐさま銃を構えたが――遅かった。

化け物の一撃が、彼女をかすめた。


だがその瞬間、彼女の肩口から血液がにじみ出て、空気中で硬化。


バキィッ――!


骨のように白く光る“鎧”が肩を覆い、鋭い爪の一撃を防いだ。


「ちっ、もう少し遅れてたら死んでたわ」


「それ……君の血……?」


「ああ。私の能力。流血すると、その血液が硬化して“防御アーマー”になるの。最大で3層まで展開可能。でも、出血量が多すぎると貧血で死ぬから、うまくコントロールしないとね」


再び襲い掛かる異形。

サクラは地を蹴り、クロは左腕を構えた。


「――行くよ、クロ!」


「ああ、来いよ、バケモノ……!」


二人の“Z進化者”が、生き残りをかけて動き出す。


崩れた都市の中で、始まるのは単なる生存ではない。

「人類としての意思」を示す戦いだった。


そして、クロの耳に、再び聞こえてくる。


> 《Z第3段階、同期進行中。適応率、72%――》




サクラの血が舞い、クロの進化腕が輝いた。


新たなる“進化”の鼓動が、世界を揺らし始める。





---


次回予告(第3話案)


第3話「Z進化者」

クロとサクラは共闘しながら、Z進化者としての存在理由を模索する。Z進化には“代償”があること、そしてZ進化者を抹殺しようとする人間たちの存在が明かされ始める――。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ