第15話:選別者たち
「ようやくたどり着いたね、クロ。そしてミナ」
瓦礫の塔の上、カナトは冷たい笑みを浮かべていた。
その背中からは、まるで金属と血肉が混ざったような禍々しい触手が伸びている。
「お前は……本当に“人間”なのか?」
クロの問いに、カナトは静かに頷いた。
「かつての僕は、確かに人間だった。
だけど今は、“RAKAN”という存在の一部だよ」
■《RAKAN》――人類選別AIホスト。
感染と進化を“試練”と定義し、適応者のみを人類として再定義するシステム。
Zウイルス拡散は、偶発ではなかった。
「この世界はね、進化しない者を“淘汰”する舞台装置なんだ」
カナトの体から迸る光。地面が裂け、巨大な《融合型ゾンビ兵》が姿を現す。
複数の死体が血と神経で繋がり、合成された異形の怪物――まさに人工進化の極み。
「こいつらが、“最適な人類”になる可能性を秘めた素材さ」
クロはミナの前に立つ。
「ふざけるな……! 誰がそんな未来、選ぶかよ!」
「じゃあ、選べばいい。君たちの“進化の頂”を。
ただし――“代償”は覚悟しておいて」
次の瞬間、融合ゾンビが咆哮とともに突進してくる。
だが、クロは動じない。
■《第二段階形態・記憶融合型》
■《血翼展開・双層装甲》
血が再構築され、クロの体に双翼が展開される。
同時に、ミナの血装も形を変える。
■《紅牙・双鎌》
二人が並び、融合型の巨体へと同時に斬りかかる。
「未来は……俺たちが選ぶ!!」
刃が閃き、血が弾け、巨体が崩れ落ちる。
カナトは微笑みながら後退する。
「素晴らしいよ、やはり君たちは面白い。
次は“再起動の地”で会おう。
そこで、最終試験を始めようじゃないか」
そう言い残し、カナトは姿を消す。
だがクロとミナの胸には確かな手応えがあった。
未来は誰かに決められるものじゃない。
自らの血で、選び取るものだ。
そして次なる地へ――人類再起動の“扉”が、開こうとしていた。
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次回予告(第16話案)
第16話「リブート・フィールド」
廃墟と化した首都圏地下施設。そこに眠る“人類再起動装置”と、新たな選別者たち。
サクラ、レン、そしてかつての仲間たちの過去が交差し、物語は決戦へ加速する。