俺が異世界の学園に通うまでの話
生きてると不思議なこともあるもので、俺は高校3年の秋、突如として異世界トリップなるものを果たしてしまった。
きっかけは特になかったと思う。普通に生活していて、ハッと気づいたら、この世界の、小さな村の、教会の中だった。
不思議なこともあるものだ。
なんやかやあって、俺はその教会が運営する孤児院のスタッフとして住み込みで働かせてもらえることになった。不思議世界の不思議ルールで、文字を読めはしないのに言葉が通じるのはとても便利で助かった。
教父さんたちにこの世界のことなんかを適当に教えてもらいつつ、チビッコたちのお兄さんとして生活して一年ほど。
ある日お遣いでやって来た近くの町で、道端で蹲っていた人を施療院まで連れて行ってやったところ、なんかその人にやけに感謝されるというイベントがあった。
金持ちの家の遣いだったらしいその人は、「主人に伝えてお礼をさせてもらいたい」から「屋敷のある王都まで一緒に来て欲しい」とかめんどくさいことを言って来た。
俺は教父さんから「街中でなんか面倒になりそうになったら神とか言っとけ」と言われていた通り、「私は神に仕え(ている教父さんたちに仕え)る身、これは神の思し召しです。どうぞお気遣いなく」と言ったのだが、もうそれを聞いたら何が心の琴線に触れてしまったのやらより一層鼻息が荒くなってしまい、結局王都まで連れてかれる羽目になってしまった。
「王都に行ってきます」と教会に手紙を出し、馬車に揺られること五日。やっと着いた王都で、屋敷の主人はびっくりするほど歓待してくれた。すごく良い人かつ信心深い人だったらしい。一ヶ月くらい泊まれとか言うので、もう本当みんな心配してるしなんなら神も心配してるしとか言って、なんとか二泊で逃げ出した。
たんまりともらったチビたちの服だのなんだのはありがたかったが、なんかげっそり疲れたイベントであった。
と、イベントはこれで終わったと思っていた俺だったが、そうではなかった。
それから少しして、その金持ちから教会に手紙があり、いわく、
「私の従者の命を救ってくれた彼には感謝してもし尽くせない。従者の命とは私の命に等しく(中略)彼は学齢期だが学校に行っていないと聞いた。ぜひ私が経営する学校に招かせてはくれないか」
「おまえすげーのに当たったな」と口悪く笑うのは教父さん。口は悪いが優しい人で、俺の好きにしていいと言ってくれた。
俺は元の世界でも履歴は中卒だし(あとちょいで卒業できたんだけど)、この世界でも学がない。この世界の人はわりと魔法が使えたりするが、俺は魔法も使えない。このままではよくないなとは思っていた。
せめて資格とかあれば、孤児院の経営を助けられるかもしれない。
というわけで、俺はこの世界でいう高校みたいなところに通うことになったのである。