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営業行ってきます



夏休みの内に、行ける所へは行きましょう、という事で今日は山口さんと外出。


駄目は承知でレコード会社を回る。

山口さんの予想どうり、メジャーと呼ばれる会社は、ほぼ受付で門前払い。

前もって連絡したにも関わらずだ。

酷くない? それが大人のやり方ですか?


担当者不在、急な会議、本日はお休みを頂いております。


嘘をつくな、見え透いてるぞ!


ようやく会ってくれたと思ったら、今までの、お付きあい上の義理で会ってくれただけのようで、ほぼ回答は同じ。


プロフィールブックもメールに添付して送ってあったはずだけど、誰一人見ていない模様。


「男性アイドルグループ? もう掃いて捨てる程いるから、売れないし」


「需要ないよ」


「やるなら2次元かバーチャルアイドルじゃない?」


「うちでは難しいかな?」


「今、忙しくて、新しいことは出来ないです。すみませんね」


等々、などなど。


片っ端からまわって、片っ端から断られまくった。


いい加減、これだけ突っぱねられると落ち込むどころじゃない。


「どうしたらいいんだろう。せっかく曲が出来たのにCDに出来ないんじゃ、どうしようもないじゃん」


帰りの車の中で、思わずぼやいてしまった。


「奏さんこの間、敵の敵は味方とかなんとか言っていたあの勢いは、どうしたんですか?」


ああ、それは。


あの大手事務所がよく使っているレコード会社じゃないとこなら、いけるかな? って勝手な素人考えでいたのだ。


それが甘かったって事が、今日、あちらこちらへ行ってみて良く解った。


「考えが甘かったのと、想像していた以上にボーイズグループ売り出すのって、大変てことが身に染みた」


「メジャーがダメなら、インディーズという方法もあります」


「インディーズ? それって自主製作ってこと??」


「今はインディーズの方が、かえって縛りがなくてやり易いかもしれないです」


「メジャーとインディーズって、どう違うの? 良くわからない」


「メジャーは、大手ならではの全国規模での販路や販売促進活動に長けています。その代わり歌手に対しての要求が多いですね。自分達がお金を出すわけですから、当然口も出してきます」


確かに全国規模での販路が魅力的だ。

でも、今はわざわざショップに行かなくてもネットで買えるぞ?


「もちろん、ネットでも買えます」


あ、心読まれた?


「大手はイベント系の販促が強みでもありますし、慣れてますね」


「イベント? サイン会とか、握手会とか? 」


「イベント絡みで、数千枚から、売れてるタレントなら万を売ります」


「ひとりで何枚も買っちゃうもんね」


「対してインディーズですが、少ない枚数から販売出来るのと、今は楽曲を1曲から配信で売ることが出来ますから、わざわざ大手にこだわることもないかと」


「でも、販促面では段違いなんでしょう?」


「考えようですね。インディーズでもメジャーより売れているってことも、実はあるんですよ」


「へぇ、そうなんだ。インディーズかぁ」


「インディーズのレコード会社でも、全国規模の販路を持っている所もありますから、明日当たってみます」


「インディーズかぁ」


「がっかりする気持ちは分かりますが、二度も言わなくていいです」


「はい……」


だって、大手の名前が入ると、権威ががつくというかぁ。


「ただ曲数を増やす必要がありますね、インディーズは採算重視でシビアですから」


「この際、いったん知名度を上げるために無料で配布しちゃう?」


「自信があるからこそ、お金を払って聞いてもらうんです。無料になった途端、彼等の価値は下がります。何より収入がなければビジネスが成り立たないですよ。趣味じゃないんですから。MVを無料公開ならわかります、あれは広告をつけられますからね」


「ちなみにうちの会社は持ってたっけ? アイチューブチャンネル」


「いいえ。タレントも、面白いことを見せられる人も、いやしませんから」


「ハハハ、そうでした。作りましょう。フレデリックチャンネル」


「今は、個人が自作曲やパフォーマンスを世界に向けて手軽に発表出来るんですから、凄い時代になりましたよ。想像もしてませんでした」


「世界か……」


「これからはアジア地域の需要を視野に入れて戦略を練らないと。国内は少子化の影響で、若者向けのコンテンツ需要はそろそろ頭打ちでしょうから」


「とにかく、大手に負けないマーケティングと販売促進活動が課題だね、しかも低予算で」


「大手だと、CMやドラマの主題歌といったテレビ局とのタイアップ、広告代理店を使っての広告、SNSへの集中的な露出、とにかく短期間にお金をかけて、短期間で回収するっていうのが通常のやり方です」


「我が家は、お金なし、権力なし、コネなし、ナイナイずくし。はぁ……」


「本当に何もないと思いますか?」


「え? 何かありましたっけ? これに付け加えて、不当な圧力までかかっているっていうのに?」


「原点に立ち返ってください」



原点? とは??



+++*+++*+++*


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