表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/183

ハニーキラースマイル


「後悔はない?? ほんとに?? デビューもしてないし、世の中に一曲すら出してなくて? え、それで諦めるの? 顔が良いだけの承認欲求強めな人? その程度の夢だったってことですか?」


あれおかしいな、私は何故こんなにムキになっているんだろう。


初対面でそんな暴言吐いた私に、シンはふんわり笑って頷く。


なんだろう、この花が咲くような笑顔から、こぼれる余裕と多幸感は……。


「大学に戻って考えてみます」


なんだ、大学生なんだ。

戻るってことは、休学してるとかかな。


「ひとつお願いしてもいいですか?」


「……なに? 」


お願いって?……めんどくさいのは嫌だな、そう思ってシンを見上げる。


「社長の意識が戻ったら、私が感謝していたと伝えて下さい」


なにそれ。


「意識が、……戻るって思うわけ?」


「当たり前ですよ!」


自分の悪口は笑ってすませたくせに、今は若干の鋭さを持って、真っ直ぐに私を見てくる。


叔母さんも、山口さんも、この人も、

みんなどうしてそう思えるわけ?


私はこんなに不安で心細くて、全部が怖くてたまらないっていうのに。


「嫌だよ……」


「え?」


ママがいなくなって、パパには会社しかなかったってこと知ってる。


そうさせた原因は私だし、パパにとって会社がどんなに大事かもわかる。


だけど、パパが仕事に行って、家で一人の時間が増えていけばいく程、私は寂しくてしょうがなかった。

会社なんかなくなればいいのに、なんて子供心に思うこともあった。


でも、もしも、私がパパの会社を守ることが出来たら……。

パパが目覚めたとき、パパは私をちゃんと見てくれるだろうか?


褒めてくれるだろうか……。


いや、見てくれなくても、憎まれたままでも、それでもいいから、一人になるのは嫌だ。


「そんなことは自分で言ってよね、あなたがここから出た瞬間、あなたの名前なんか忘れる」


誰かが言っていた。

自立って、まわりへの感謝を伝えられるようになることだって。


「でも、あなたの声は忘れない。それぐらい掴まれた」


それが本当なら、パパに感謝していると言葉にするこの人は、ちゃんと自立している大人ってことなのかも。


「私もあなたはフレデリックだと思う」


「あの、えーと?」


「私がチャンスをあげる。あなたの歌をもっと多くの人に聞いてもらう。だからここにいてほしい、どこにもいかないでほしい」


「それは……どういう意味ですか?」


「へっ? あっ、ええと……」


ちょっと待て、ちょっと待て、


もしかして、私は今、なんかすんごいことを口走らんかったか?


「つまり、あなたが社長の意思を引き継いでくれるという意味ですか?」



「あっ、アハっ? イヤイヤイヤ、そんなのムリっしょ? 私はただの高校生じゃーん? 素人だし? ムリムリムリ~」


シンが真顔で首を傾げている。


今更のキャラ変には無理があったか。


「はーい、じゃあ、今から30秒前の会話、消しちゃおっ!全部ね。はい、削除っ」


パンっ、と手を叩いてみる。

シンが苦笑ぎみに私を眺め、口角をあげた。


「いや……制服姿の女子高生にこんな情熱的な告白をされたら、一生忘れられないですね」


穴、穴はないですかー!

からだがすっぽり入るちょうど良い感じの按配で!!


「はっ、なに、違うし、こっ、告白とかじゃないしっ!!」


やば、声、変なところで裏返っちまった。


確かにまぎらわしい、誤解されるような表現があったかもしれないですけど。時間を巻き戻して訂正させてください。


「お手伝いします」


「へ?」


「いえ、手伝わせてください。自分の未来は自分のもので、誰かに責任を負わせるつもりなんか1ミリもありません。ただ、社長の夢を守る方法があるなら教えてください。一緒に頑張りますから」


「ええと、そういう話だっけ?」


「それから、社長の夢を引き継ぐ資格を持っているのは……やっぱり、あなただけだと思います」



スイートキラースマイル。

または悩殺的微笑男子。

ぴったりなキャッチコピーが今は浮かばないけど、なんかそんなふうなやつ。


私はその、「人を惑わす狐のような微笑み」それに危うく飲み込まれそうになっていた。


そこで、ふと気付く。

待って、実は本当に狐なのかもしれない、って。



「ねぇ、ひとつ確認なんだけど」


「はい」


「もしかして、パパと特別な関係にあったりしますかね?」


「……」


シンは私を凝視して、おもむろに眉間に皺を寄せた。


「だって、そういうことは事前に知っておいた方がいいかと思って」




+++*+++*++++




ここまで読んでいただき、ありがとうございます

たまに作業用BGMなどの紹介をしたりします


シンの脳内テーマソング

韓国ドラマ2521 OSTソング

Your Existence / Onestein

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ