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ブルーモルフォ



ブルーモルフォ、幸せの青いチョウ。


A/Wのテーマキャラクターは青い蝶なんだそうだ。


佐野さんは、毎回生き物をキャラクターにしていて、昨年の秋冬はミミズク。


ワンポイントの刺繍だったり、プリントだったり、総柄だったり、と様々なかたちで青い蝶々が服の中で舞っている。


私が着ているのは、淡彩画風の植物と蝶がプリントされたトレーナー、カラーはラベンダー。

それにリメイクされた太めのデニムパンツ。

最後に蝶々のワッペンがついているオフホワイトのニットキャップを被せられた。


もう一人のモデル、モナさんがホワイトベースを着用。


モナさんは、目鼻立ちのはっきりした日本人離れした容姿に長いストレートの黒髪が似合う個性的なモデルさん。


佐野さんがコレクションのイメージに合わせてモナさんとアスカさんを選んだ。


コレクションはカジュアルとセミフォーマルの2つが用意されている。


カジュアルライン4パターンからのフォーマル2パターンの撮影予定。


お昼休憩を挟んで丸1日かけての撮影、スチールの他に動画撮影も同時に進行。

動画はグラスホッパーのHPでショートムービーとして公開する予定だ。


☆☆☆☆☆


2階のホールで撮影が始まった。


ノリノリなヒップホップミュージックが流れ始めた。


私が撮るはずだったチーフレ(チームフレデリック)の撮影現場ログは山口さんに頼んである。


今、ハンディカメラでみんなの様子を撮影してくれているはず。


「はい、いいですね。二人とも上で撮影をお願いします」


佐野さんのアシスタントさんに、全身をチェックされてオッケーをもらった。


「ありがとうございます」


モナさんと一緒に2階へ上がった。


途中で、トモキ、ショウゴとすれ違う。


「え、ちょっと待って、奏先輩、ですよね?」


ショウゴが私の頭から爪先までを眺める。


そもそも綺麗な顔をしているからなのか、服に合わせてか、ショウゴのメイクはベースとアイシャドウだけ?

私に比べたらだいぶ控えめに見えるんだけど……。

もともとぽってりとした唇にグロスがのって艶っぽい。


「まぁ、いろいろあって、こうなった。上手く出来た?」


「思ったより気持ちいいです。撮られるのって」


メイクが入って、ますます小鹿具合いが増しているトモキが、ニコニコしながら答えた。


「奏先輩の撮影してるとこ見たいのに」


「早く行って、まだまだ先長いんだから」


「頑張って下さい、昨日の練習どうりで大丈夫です!」


「うん」


トモキに頷いて階段をあがった。


二階のホールで、私とモナさんは部屋の隅に立って待機する。


山口さんが、ハンディカメラで撮影の様子を撮影してくれている。


ピピピピ

カシャッン


ピピピピ

カシャッン


BGMの上にシャッター音が重なる。


シャッターが切られると、同時にストロボが閃く。


「すごい、いいねっ! かっこいい!!」


椎名さんが二人の緊張をほぐすためか、やたらと褒めている。


シンとヒナタが白い背景布の前に立って、シャッターが切られる度、二人は流動的にポーズを変えていく。


シン、青い蝶々の総柄シャツに黒い合皮革のライダース風ジャケット、同素材のパンツ、ハイカットブーツ。


シンは、もうプロモデル並みの表情とポーズで、何も言うことはありませんて感じ。

思わず服の撮影だってことを忘れる。


(拝/写真集が出たら買わせて頂きます)


そして、ヒナタ。


白いガーリーなブラウス、黒地に総柄蝶々のニットベスト、合皮革のハーフパンツ、ゴツい厚底のロングブーツ。

ハンチング帽には蝶の刺繍がワンポイントで入っている。


練習の成果かな、集中力も凄くて多分カメラしか見てない。


姿勢も良くて堂々としている。


ちょっと前まで、鏡を見るのが嫌いで自信もなかった人が……頑張って頑張って、こんなに変わった。


これだったら、ユウトにあれを頼まなくても良かったかな。


「はい、ちょっと待ってねぇ」


椎名さん、PCのモニターを佐野さんと一緒にチェックし終えると二人に微笑んだ。


「大丈夫、完璧!!」


「ありがとうございました」


「お疲れ様でした。そしたら次は背景チェンジだね」


「はい」


池畑さんが背景布へと走る。


池畑さん椎名さん佐野さんへ、きっちりとお辞儀をして、シンとヒナタが私の所へやってくる。


パチパチ、と思わず拍手で迎える。


「奏さん、それは……」


「モデルさん体調不良で急遽……致し方なく私が」


「奏さんだと、思いませんでした……」


ヒナタ、目の回りにピンクブラウンのアイシャドウがぐるっと入っていて目力が増している。


「うん、だよね? 違和感しかなくて」


「綺麗ですよ」


シンが、さらりと普通に褒め言葉を降らせた。


「!!」


ヒナタも微笑みながら頷いた。


いや、そんなわけ……恥ずかしくて、死ぬ。


「じゃ頑張って下さい。楽しいですよ、きっと」


「う、うん。頑張る……」



+++*+++*+++

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