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キャベツもレタスもみんな野菜



姫ちゃんは、なんかの肉を切って、ポイポイっとボールに放り込んでいるところだった。まだ夕食は下ごしらえの段階みたい。私は手を洗ってぺーパーで拭く。


「今夜はね、みんなが大好きな唐揚げよぉ。奏ちゃん、今日は随分早いじゃない」


「まぁ、ちょうど手があいたから」


「そう、じゃ、そこにあるレタス、ちぎってくれる?」


「(ん、レタス?) ああ、これ?」


私はシンク横に置いてある野菜を手にとる。


「奏ちゃん? それはキャベツ、よね? そっちの」


姫ちゃんが包丁の刃先で指す。


「これは、きゃべつか。えー、レタスって……?」


「隣のフリフリしたやつよ。洗ってザルにあげてあるでしょ……キャベツとレタス、そうか、わからないか……」


「大丈夫、今覚えたから」


私はレタスをちぎってボールに投げていく。


「ところでヒナタ君のダイエット、順調よね?」


「うん、そうだね」


「なんか……ヒナタ君て、とっても美味しそうに食べるじゃない?  見ていて気持ちがいいくらい。そういう子にはお腹いっぱい好きなものを食べさてあげたくなっちゃう」


「ペットじゃないんだから」


「え?」


「そうやって、かわいいからって好き勝手与えて、無責任なんだって。それで、今、苦労してるじゃん」


「少しくらいぽっちゃりなのは悪いことじゃないでしょう……」


「一般人ならね。芸能人の中でもアイドルは外見至上主義。まぁ、今はそれプラス、他の実力もなきゃいけないんだけど」


「そうだけど、あれもこれもって、キリがない。ストレスが増すだけじゃない」


「だって、ビジネスだからしょうがないじゃん。今もお金がチャリンチャリンて減り続けてるわけだし」


「……奏ちゃん、意外と経営者向きなのね、うっすら怖い」


「トップは感情で動きません」



「お疲れ様でーす!」


ユウトがキッチンへやって来た。あとからメルもチョコチョコとついてくる。彼はそのまま冷蔵庫に直行すると、ペットボトルのカ○ピスを取り出し飲んだ。

冷蔵庫の中には、ミネラルウォーター、お茶の他にリクエストに答えて、数種類の飲み物が入っている。

全部飲み放題。


今日の調理当番、ユウトなのか。

夏休みから食事の準備と後片付けを当番制にしたのだ。


「え、今日のお手伝いって、この二人なの?!」


姫ちゃんが私達を交互に見る。


「なに? 随分嫌そうな顔して、駄目なの?」


「だって……いいわ、なんでもない。料理が出来ないワンツーなんて言えない。かえって手間が増えるなんて、絶対言えない」


え、言ってるよ? ガッツリ聞こえているよ?


「そっか、じゃあ……ユウト先生は、キャベツを千切りにしてくれる?」


「はい、任せて下さい!」


「奏ちゃんは、レモンをクシ切りに」


クシ切りか、それなら楽勝。


私達は作業台にまな板を並べて、それぞれキャベツとレモンを置いた。


「さっき、練習室に来てたね。何か用事があったんじゃないの?」


「気付いてたか」


「そりゃね」


「あのさ……ヒナタどう? 付いていけてる?」


「ん? ヒナタ? 頑張ってるよ」


「さっき、鏡の前に1人だけ立たせてたじゃん」


「ああ……あれか。ヒナタさ、嫌いなんじゃないかな、Mirror」


ミラーの発音良すぎるな。


「ミラー? 鏡が嫌いってこと?」


「時々いるんだよね、恥ずかしくて鏡を見られないっていう人、子供が多いんだけどさ」


「私も……朝、顔洗ったときぐらいにしか見ないけど」


ユウトが「?」と私を見た。


私も「?」とユウトを見返す。


「ええと、そういうんじゃなくて、多分自信がないからなんだと思う、あとはcomplex」


「コンプレックス?」


「自分に自信がないのかも」


「ねぇ!! どっちも不正解なんだけどっ?!」


姫ちゃんの悲鳴に近い声がした。そして私達の手元を見て驚いている。


「ねぇねぇユウト先生、それは千切りっていうのかな? どちらかと言えばザク切りのレベル」


ユウトのまな板に、ざく切りキャベツの山が出来ていた。


「ハハハ。ザクザクし過ぎだって、それはさすがに。千切り知らないの? 線みたいに細く切るから千切りっていうの」


私がツッコむと、ユウトはキャベツの芯を口に入れ、モグモグしながら私を見た。


「せんぎりって、千人くらいに切る。じゃないのか」


と、なにやら物騒なことをブツブツと言ってる。


「奏ちゃん、これは輪切りっていうの、しかも太い」


「え……あれ?」


「それも違うんだってさ、残念」


ユウトはニヤッと笑い、私の口にざく切りキャベツの塊をよこした。



☆☆☆☆☆


お、なんか寝ちゃった?

勉強しながら、いつのまにか机に突っ伏して寝落ちしたみたい。

部屋の時計を見ると夜中の1時を回ってる。


喉が渇いたな。机の上のペットボトルは空。しょうがない、なんか持ってくるか。


私は部屋を出てキッチンへ向かった。キッチンへ入り冷蔵庫へたどり着く前に、足が何かにぶつかった。


ひっ!! 何?! 壁に手を沿わせ

暗闇に目を凝らし……足元を見る。



+++*+++*+++


※千切りのせんは、繊だそうです。奏さん、ちょっと惜しいです(^-^;


#7YearsWithSpringDay


Spring Day / BTS

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