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鬼トレーナーのダンスレッスン



みんな、やっと終わったという安堵の表情で水を飲みに壁際へいく。


水のペットボトルが綺麗に並んでいて、各々それを手に取って立ったまま飲む。


冷房はガンガンにかかっているだろうし、大型扇風機も回っている。なのにみんな汗だくだ。


ユウトがまたスマホを手に取る。

また曲が流れてきた。

鬼リピートモードである。

みんな急いで自分の位置へ戻る。


「ヒナタ、音ちゃんと聞いて。ズレてる」


「はい」


「ショウゴ、つま先は正面向けて。外に出すと綺麗に見えないから」


「はい」


「トモキ、腕は肩からあげるの、意識して」


「わかりました」


「シン、ライン気にして」


シンは頷くだけ。

ラインとはなんだろうか?


「もう一度」


ユウト、立ち上がるとヒナタの斜め後方に回る。


そして自らも踊り始める。


ああ……やっぱり全然違う。


線が綺麗だし、軸がぶれない、抜群の安定感だ。


同じ振り付けのはずなのに、みんな見事にてんでバラバラなの。

踊る人によってこうも違うとは……もちろんスキルの差も大きいんだけど。


ダンス経験者のシンやショウゴも苦戦しているのが、素人目にもわかる。

要求しているレベルが高すぎるんじゃなかろうか?

とは、言っても私ごときがとやかく口出すわけにはいかないもんな。

お任せで頼んでますし。


「ヒナタ鏡みて」


ヒナタ、動揺して振りが飛んだか、慌てふためきバタバタする。


隣のトモキもつられてバタつく。


「いち、にぃ、さん、バババ、バーン、タンタンタンっ、ワンツー」


ユウトの口から謎の擬音が飛ぶ。


口調はとても静かなんだけど、かえってそれが緊張感を煽っている気がするんだよな……ヒナタとトモキはこの空気感によく耐えられてるな……。


ムリムリ、私は無理。胃がヒリヒリしちゃう。

ダンス出来る人、ほんとに尊敬する。


上半身と下半身と頭と手足と、どうしたらバラバラに動かせるわけ?

どういう脳の伝達方法なの?


私、生まれ変わってもダンサーにはなれない、絶対。盆踊りくらいを楽しむ人生で大丈夫。


「ヒナタこっち」


ユウトの手招きでヒナタが鏡のすぐ前に呼ばれた。

やだ、なに? こわい。

まるで、自分が呼ばれたみたいに緊張しちゃう。私、共感性高過ぎるな。


曲は流れたまま、他の三人はそのまま踊り続けている。


ユウトがなにか話しているみたいだけど、流石に聞こえない。


ユウト、ヒナタの後ろに回ると、ヒナタの両肩に手をのせ後ろに引いた。

ヒナタは、コクりと頷く。

次にユウトはヒナタの隣に並び直立する。

肩を何回か上下させストンと腕を下ろす。

それから腕を下に伸ばしたまま両手の平を鏡に向けた。

ヒナタも真似してやってみている。

ユウトが下を向いたままのヒナタの顎を、上げ起こした。


ヒナタ、胸が開き姿勢が良くなる。


鏡を見てというジェスチャーをされ、ヒナタは頷いた。


姿勢が悪いってことなのかな。

それから下を向かないとか?


でもさ、足の動きとか直接見ちゃうよね。鏡なんか見慣れていないからさ。


でも、そうするとずっと下を向いたままになっちゃうっていうことか。


ステージに立ったら、いつだって前を向かないといけない。

なんなら、常にカメラを意識して表情作って、歌って、踊って、笑って。


……凄いな、アイドルって。

タスクが多重すぎやしません?


一曲のパフォーマンス、例えば3分~4分くらいの間に、果たしてどれだけの努力が詰まっているのかってことよ。


ヒナタがまた自分の立ち位置へ戻る。


まだまだレッスン続きそうだし、写真撮るのは明日にしようかな。

こんな空気の中へ入っていくメンタルないや。


フッと私も背筋を伸ばす。


両手をだらんとさせて手の平を前にする、あ、ほんとだ自然と胸が開く。


私も猫背気味だから、ちょっとこれやってみよう。



1階に戻って、キッチンへ行く。

姫ちゃんのお手伝いをするために。


夕食の支度は本当に大変、人がいっきに増えたから、やることも増えてあたり前なんだけど。


キッチンでは姫ちゃんが忙しそうに働いていた。


「お疲れ様です。今日のメニューは?」


キッチンは美味しそうな匂いに……はまだ包まれていなかった。



+++*+++*+++

ダンス練習曲(参考)


ASH ISLAND―MELODY


https://youtu.be/dKF9JARksWo

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