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原宿迷子



あーーー。


夏休みの竹下通りったら!!


なんじゃこりゃぁーーー!!


日本に若者ってこんなに居たんだ?


全国から来てるんでしょ?


そうだよねっ、絶対!!


人混み大キライーーー!!!



と、いったん心の中で叫んどく。



「すごい人、お祭りみたいっ!」


何故かテンションが上がっているヒナタ。


「マジかぁー、でもなぁここを突破しなきゃ、クレープには辿り着けないし」


半分萎えてはいるが、気合いを入れ直そうとしているトモキ。


「あー、ねぇ。私はここで待ってるからさぁー」


「さぁ、さぁ、行きますよ、奏先輩!」


「えっ、ちょっ、待って!」


ショウゴに背中を押され、人の波に放り込まれた。


身長がある分、人に埋もれることはないんだけど、人の流れに乗るのが嫌だ。


ゆっくりモタモタ、この短い道を何分かけて歩くわけ?


早くクレープ買って帰りたい。


ていうか、なんで私も連れてこられた?



ヒナタとトモキが前々から原宿に行ってみたい、って言ってたのは知っていた。


今日の午前中たまたまスケジュールが2マス(時間)空いたから、言ってくれば? みたいな提案をしただけなんだ、私は。


「俺、電車でどうやって行くのかわからないです(キリっ)」


ショウゴ君、キミは乗り換えアプリというものを知らないですか?便利ですよ? それから電車やバスという公共機関を使うのは社会勉強になりますよ? このお坊っちゃまがっ!!


「僕、迷子になったら宿舎まで帰る自信がありません(スン)」


いくら田舎出身とはいえ、子供ですか? 幼稚園児並の知恵しか持ち合わせてないんですか?!

会社が支給したスマホがあるよね?

そいう時こそ使ってみよう、ヒナタ。



「都会は恐いです……悪いスカウトマンに怪しい個室へ連れていかれたり、ガタイのよい方々にキャッチされたら、いろいろ買わされるって聞くし…(ブルっ)」


そんな事前情報どこで調べた?

◯◯知恵袋?!

コミュニケーションを取れ!

怪しいと思ったら、キッパリ断れ!!

中学生じゃぁないんだ、もう高校生なんだ!!!


で、我はここにいるナウ。



ゼブラ柄のシャツに短パン、白いハットにサングラスという海外リゾート地のヤングリッチみたいな格好のショウゴ。


そのシマウマの後を付いていく。

頭二つ分は人波から飛び出しているので、追いやすい。




「ところで原宿って、何を着ていけばいいですか?」


トモキが私に訊ねた。


「えっ?なんでもいいんじゃ……」


いいかけて、思いあたる。

ヒナタとトモキは服の持ち合わせがない、多分。


制服以外はTシャツとジャージの練習着が何着かあるだけ。

それをフルに着回している。

ていうか、ほぼ同じローテーション。


「大丈夫、俺の服を貸す。好きなのを選んで良し」


「えー、ショウゴの服派手なのばっかりじゃん、ムリ」


ヒナタはショウゴにもタメ口だった。


「俺も、着こなす自信ないかも」


「え、地味めなものもあるし、トモキなら絶対着こなせるし」


三人はワイワイ言いながら部屋に戻り、暫くして戻ってきた。


「おお、凄い。さすがだ。二人ともモデルかと思ったよ」


ヒナタはこの2ヶ月で随分痩せたこともあって、服を綺麗に着こなせるようになっていた。


淡いピンク色の開襟シャツに、ベージュの短パン、白いハンティング帽はカンガルーマークが前にきている。

痩せたことにより、目鼻立ちがより強調されている。

メイクと照明で充分にいける範囲。

ヒナタのスタイルとビジュアルに問題はない。

私とシンの目にはやはり狂いがなかった(ドヤっ)



トモキはヒップホップがコンセプトらしい。

全面にロゴが大きくデザインされたグラフィックTシャツをダボッと着て、下はカーキー色の太いワークパンツ。

白いハットを目深に被ったら、顔が半分見えなくなる。


シンプルだけどスタイルがいいから、なんでもおっけ。



「ほんとですか? 」


「ほら、俺だってシンプルで爽やかめな服、ちゃんと持ってるのわかった?」


ショウゴは満足げ笑いに二人を眺めた。




で、そんなゼブラ柄のシャツ着たショウゴが突然消えちゃったんです、よ。


ちょっと一瞬、スマホに目を落としただけなのに。


「あれ? どこいっちゃった?」


顔を上げたときには、完全に三人の姿を見失っていた。


右を見ても左を見ても、三人の姿はなかった。


「うそ、まさか」


これは、私が迷子に??


慌てて横路にそれる、もしかしてこっちに曲がったのかな?


暫く歩いても、三人は見つからない。


「そうだ、電話しよ」


ショウゴへ電話をかけたが出ない。



暑いし、疲れたし、どうしよう。

もう、歩きたくないよ。


私は日陰になっている店の軒先にへたり座った。



「どうかしましたか? 具合でも?」


お店から、女の人が出て来て目の前にしゃがみ、私を覗きこんだ。



+++*+++*+++


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