負けず嫌いな王子たち
「いったん、仕切り直そうか」
シンが涼しげな顔で言う。
「いいでしょう」
ショウゴも余裕ありげに頷く。
「3本投げて、多く決めた方の勝ち」
「わかりました」
ジャンケンで、シンが勝ち後攻を選んだ。
私達はコート脇の地べたに座り、勝敗の行方を見守る。
ユウトはスケートボードの上に立って愉快そうに見物。
位置に着いたショウゴ、軽くドリブルしながらゴールを見据える。
やがて気持ちが整ったのか、ボールを胸の前に構え、スッとボールを宙に押しだした。
無駄のないとても綺麗なフォームだ。
これは入るだろう。
ボールは高い放物線を描き、自ら選んだかのようにゴールの中心へと落ちる。
「よっしゃ!」
タンタンタン、
ゴールから落ちてきたボールをキャッチし、ゆっくりドリブルしながら、今度はシンが位置につく。
特にラインを見るでもなく、シンはすぐにボールを放った。
ボールはリングのフチにひっかかりながらも、なんとかネットを揺らした。
「おー」
ギャラリーがどよめく。
今のはちょっと危なかった。
タン、タン、タン
ショウゴがボールを強く叩くから、音も力強く大きくなる。
「2本め、いきますよ」
タン、タン、タン、タン
両手で左右交互にゆっくりドリブルを打つ。
そして、ボールを構えてから息を整え集中する。
ボールが指先を離れ、再び正確な放物線をたどりゴールへと入る。
「おー、ナイスシュート!」
ギャラリーからパチパチと拍手が起こる。
「我ながら完璧」
ショウゴは最上級のドヤ顔をシンへ向けた。
シンはポンっとショウゴの腰を叩いて、その場所からどかす。
今度はシンの番。
シンが軽くドリブルしながらゴールを眺める。
ボールを構え、ヒョイっと投げた。
「!」
ボールは再びリングに当たり、今度は無情にも、ゴールには入らない。
「あー!」
ギャラリーから思わず声が上がる。
「3本め、これ入れたら俺の勝ちですね」
「入れたらねー」
「見てて下さい。絶対入れるんで」
タンタンタン、タンタンタン
今度は早いドリブル。
ボールを持ち上げゴールを睨む。
いち、に、さん、3つ数えて押し出す。
あ、少し力が入りすぎたかも……。
ドン、板に当たりボールは跳ね返った。
ターン、ターン、ターン。
高いドリブルを叩き、シンはゆっくりやってくる。
「力みすぎ」
タンタンタン。
シン、ボールを持ってかまえる。
スッ、と軽く投げただけなのに、ボールは当たり前のようにゴールに吸い込まれた。
もしや、シンて……。
「サドンデス方式で、決着を付けましょう!」
「いいよ、負けたらどうする?」
「どうするって?」
「あー、皆にアイス奢るってのはどう?」
「いいですよ、皆にアイスですね!!」
「じゃあ、俺が先にやるね」
シンがボールを持ってかまえる。
さっきとかまえが逆だけど?
ん、シンてもしかして左利きなのでは?
☆☆☆☆☆
\\ いただきまーす、ショウゴくーん //
コンビニから走って帰って来たのか、ショウゴは息を切らせ、汗が首筋を伝い流れていた。
袋からアイスを取り出し皆に配る。
「わざと外してたでしょう」
私はガリゴリ君をかじっているシンの横に座って聞いた。
「さぁ、どうでしょう」
「あれは絶対ゴール職人の仕事じゃん。左利きなの隠してた」
リバウンド取ったら絶対ゴール決める人とか、フリースロー絶対外さない人とか、いるんだよ。
「ショウゴ、面白いなぁ」
そう言うと、シンは人の悪そうな顔をしてアイスをかじった。
☆☆☆☆☆
「ショウゴは人前で何かをする事自体、気負わないし、初めてのことでも動じないんですよ」
「しかもあまり緊張もしないで堂々とやってのけてしまう。ダンスバトルで初めて見たときから、そういう意味での大物感がありました」
「それから、ユウトの振りをすぐ真似出来るんですよ彼。なかなか高難度なんですけど、見てすぐ出来るっていうのは、もう才能でしかない」
オーディションを行った日の帰り、シンはショウゴのこと凄く褒めていた。
「この先、グループの中でどんなふうに成長するのか見てみたい気がします」
シンはそんなふうに言って、そよ風みたいに笑っていた。
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