モグモグタイム
「生き物そんなに好きじゃないでしょう?」
びっくりした。なんでわかるんだろう。
実はそう、生き物を飼うってよくわからない。
「生き物飼ったことないし……、接し方わからないし、ってショウゴはどうなの? 何か飼ったことあるわけ?」
「もちろん。犬に、ハムスター、カブトムシとか、あと縁日の金魚とか?」
なんだ、意外に経験値高いんだ。
「お祭りの金魚はすぐ死んじゃったな」
ヒナタが寂しそうに呟いた。
「俺は、弟たちに気づかれないように、いつも朝早く埋めにいってた。金魚」
「マジで? 優しいな」
ショウゴが言うと、トモキは、いや、そうじゃなくて、とすぐに否定した。
「思いやりとかじゃなくて、朝から泣かれるのが嫌だっただけ」
「でも金魚いないって気付くだろ? どう言うの?」
「金魚ランドに行ったんだよ、って。ある程度まではそれでいけた」
「金魚ランド、魚類の楽園的な?」
ショウゴ、真面目な顔で言うんじゃないよ。
「なんかシュール。想像しちゃった」
と、ヒナタは微妙な表情で苦笑した。
☆☆☆☆☆
そろそろ、良い具合に肉が焼けてきたらしい。
食欲を刺激する匂いが漂ってきている。
炭と肉の脂が絡まった煙の中心に、シンが立っている。
「肉、そろそろ焼けたぞー!」
さっきから肉奉行となっていたシンが、待望の第一声をあげた。
バスケをして遊んでいた皆が、待ってましたとばかりに集まる。
「はい、お皿」
行儀よく一列に並んだ皆に、シンは紙皿とお箸を渡す。
「それでは皆さんご一緒に」
「いただきます!!」
シンの音頭で、怒濤のモグモグタイムが開始された。
「どうぞ」
丸テーブルに座って話していた私と、姫ちゃんにシンがお皿いっぱいの野菜と、山盛りの肉を持ってきてくれた。
「あら、ありがとう。美味しそうだわぁ」
「ありがとう、シンも食べなよ。ずっと焼いてる」
「大丈夫、食べてますよぉ」
シンは爽やかなレモンみたいな笑顔を残して去る。
肉を焼くのが好きなのか、ふるまうのが好きなのか……。
どちらにしても、楽しんでるのは間違いなさそう。
「ここがこんなに賑やかなのは、本当に久しぶりね」
「うん。まさか、こんなふうに初BBQをするとは思わなかったな」
「これから忙しくなるわよぉ」
「食事の支度とか、お掃除とか、当番制にしようと思ってる」
「私一人じゃ手が回らないところも出てくるかもしれないから、それは助かるけど」
「何もかも全部やろうとしないで、無理しなくていいから」
「……わかった。でもね」
「うん?」
「嬉しくもあるの。なんか久しぶりに仕事にやりがいを感じているっていうか」
「やりがい?」
「だって、この子達アイドルになって有名になるのよね? 自慢出来るじゃない」
姫ちゃんは、フフフと意味深に笑う。
「そうだね」
「なんか……変ね、奏ちゃん」
「なにが変なの?」
「そこは、業務上の守秘義務ですよ、とか、突っ込むところじゃない。なんだか急に丸くなって、人が変わったというか……やけに優しいというか。ええ、まさか」
姫ちゃんが、不意に大きな声を出した。
「もうすぐ解雇されるの、私? ? ?」
「はい、なんで?!」
「フラグ??」
「なんの?!」
「だって、お金ないんでしょう?」
「姫ちゃんのお給料分くらい大丈夫だよ」
「あら、そう? まぁ、それは冗談だけど。私、全力でお手伝いするから」
「うん、生活面はまかせるね」
☆☆☆☆☆
あっという間に食べもの全部を、食べ尽くした皆さんは、各々で遊び始めていた。
シンとショウゴはバスケ。
ヒナタ、トモキ、はユウトにスケートボードの、乗り方を習っているっぽい。
暫くすると、5人はフリーシュートの練習を始めた。
足元にバスケットボールが転がってくる。
「奏!」
ユウトが私に向かってボールを投げろ、と要求している。
ボールを拾って要求どうりに投げてやる。
そういえば、さっきから呼び捨て……
「一緒にやろう!」
ポーンとゆっくりした速度でまたボールが飛んできて、私は反射的にそのボールをキャッチしていた。
ズシっと手首にかかる反動とボールの重さ。忘れかけていたな、この感じ。
ふーん、私も参加しろってか?
はじめはスリーオンスリーで遊んでいたけれど、さすがに疲れてきたので、全員参加のフリーシュート大会になった。
みんなが順番にシュートを打って、多くいれた人が勝ち、そんな単純なルールで。
ヒナタ0本、ユウトとトモキが2本ずつ、私が3本(腕が落ちた!)を入れたところで、早々に戦線を離脱することに。
残ったのはバスケ経験者のシンとショウゴで、なにやら熱い闘いが始まりそうだった。
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