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BBQやるよ!


高校生達に夏休みがやってきた。

今まで、朝練、放課後練、夜練と、学校があるために小刻みにしか出来なかったレッスンが、これからはまるっと1日出来るようになる。めでたい。


デビューするにあたっての実力がほとんどゼロなのに、練習量がまったく足りていない。夏休みは合宿並みのスケジュールで飛躍的に実力をあげる計画だ。

おそらく、もう二度と思い出したくもない地獄の夏休みとなることだろう。


もちろん私も、やらなければいけないことが山積みだし、パパや山口さんに教わったりアドバイスを貰ったりしながら、ブルドーザーの如く腕力と精神力をもって進んでいる。

現状、何が一番辛いって、お金がない。

それにつきる。こうやって皆を集め一緒に住まわせるのだって、もちろん結束やチームワークを高める、ってのもあるけど、ぶっちゃけ時間とお金の節約、つまり合理性を重視している方が大きい。

個々のプライバシーや自由度という人権は二の次で、そこら辺は多少我慢して頂くしかない。


全てはプロジェクトの成功とフレデリック再興のためなのだ!

(よっしゃ、気合い)


そして今、三ヶ月前には想像すらしなかった、もちろん今の現状、どれひとつも予測なんか出来てなかったことの連続なんだけれど、そのなかでもこれは相当に稀有な出来事トップ3に入るだろう。


「お、すごっ、シャンデリア」


ショウゴがうちの宿舎のエントランスにいる。


本当に……どうしてこうなった?


大きなトランクを二つ転がしてやってきたショウゴを、ヒナタ、トモキ、姫ちゃん、私の全員で迎え入れる。


「岩崎ショウゴです。よろしくお願いします」


「僕、ひとつ持ちます」


ヒナタはショウゴのトランクを転がして持っていく。


「先輩、僕らひとつ屋根の下ですね」


ショウゴはそう言って、にこやかな笑顔をそえる。


もう一度言う。

どうしてこうなった??


「うっさい。早くヒナタについていって」


「はーい」


ショウゴ、友達の家に遊びに来たくらいの軽い足どりでヒナタを追っていった。


「さてと、トモキ君はキッチンを手伝ってね、奏ちゃんも」


「うん」


「今日は忙しいわよー」


「はい、何でも言ってください!」


トモキが元気に答える。


「それで、シン君はいつくるの?」


スマホを見ると今は午後の3時過ぎ。


シンはPCやPC周りの荷物が多いから、レンタカーを借りて来るって言ってた。今住んでいる大学近くのアパートを完全に引き払って、荷物も整理したそうだ。


「4時には着くんじゃないかな? 道が混んでいなければ」


姫ちゃんが、リビングの柱時計に目をやる。


「そう、じゃあ、後1時間くらいね、それまでに準備しないと」


「うん、何すればいい?」


私とトモキは姫ちゃんの後に付いてキッチンへ行った。


「まず、鶏肉を串にさして。これ、もう切ってあるから」


私とトモキは鶏肉を串にさしていく。


「それが終わったらこれね、豚肉と牛肉」


「わー、肉がたくさんありますね」


トモキが肉の山を嬉しそうに眺める。


「だって、みんな食べるでしょう? あと、これもね」


姫ちゃんが、野菜の入ったザルを私達の前にどーんと置いた。


「これも、串にさすの?」


「そう、ピーマン、タマネギ、ニンジン、シイタケ」


そう、今日はシンとショウゴが新たにここの住人となったことを記念して、夕飯は中庭でBBQをしようということになっている。つまり親睦会みたいなやつ。


「ピーマンだけにする? ピーマン、タマネギ、ニンジン、とかにする?」


野菜の始末がわからないから、トモキに聞いてみる。


「ピーマンだけ、とかの方が均一に火が入りそうじゃないですか?」


さすが、トモキ。

なるほど、火の通りか、そういうことを気にしないといけないのか、料理というやつは、奥深だな。


「わかった、そうしよう」


大量の肉と野菜を串に刺し終わった頃、玄関チャイムが鳴った。


「あ、来たかな」


私は急いで、玄関扉のオートロックを外し、エントランスへ向かった。


「すみません、遅くなりました」


扉を開くと、シンが涼やかな顔で立っていた。外は猛暑で熱気が入ってくるはずなのに、高原を渡る爽やかな風が吹きぬけていったような錯覚を覚える。マイナス5℃くらいの効果はありそう。


エントランス前に、白い軽トラックが停まっている。

荷台には段ボールや衣装ケースなどが積まれていて、他のメンバーよりは多いかなと思う。


バタン、と車の扉が閉まる音がして、運転席から誰かが下りてきた。


あれ? 運転手さん頼んだのかな、そう思って何気に見て驚く。


「どうも、お世話になります」


タンクトップにハーフパンツ、キャップを被ったLAキッズみたいな人が、スケボー片手にヘラっと笑って立っている。


「んっなんでっ? えっ、なんでっ?」


あまりにも驚いたから、馬鹿みたいに疑問符を連発してしまう。


「だってこの人、俺の家に居候してたから」


「行くとこなくて……へへ」


ユウトはキャップをとり、青髪をかき上あげながら、ニカッと笑った。


「よろしくな、奏!」




「オラ、ゴクウ!」みたいに「どら焼き大好きえもん」みたいな青髪で言うなって。


混乱する。


+++*+++*+++


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