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のびしろしか見ません



「おはようございます。はじめましてインストラクターのスイです」


非公開オーディション当日、シンと私はダンススタジオの入り口で、スイ先生に迎えられた。


スイ先生は30代前半くらいで、立ち姿の綺麗な人という印象。


「おはようございます、鹿原です。こちらは桑山さん」


「よろしくお願いします」


おはようございます、といっても今は夜の19時。

業界では、いつ会っても挨拶は「おはようございます」なのだ。


今日の参加者はオーディションクラスの男性10名、スタジオ外からの紹介生が3名、事前のエントリーどうり、欠席者や辞退者はなしとスイ先生から聞く。


オーディションといっても、いつも練習している時間に見せてもらう感じで、生徒さんへ特別な緊張感は与えないように配慮してもらった。


B練習室内では生徒さん達が待機していて、各々身体をほぐしたり、ダンスの個人練習をしたりしている。


私たちは練習室Aに入りすぐセッティングにとりかかる。


「机、この辺りでいいですか?」


スイ先生が折りたたみ机を鏡の前に設置し、椅子を持ってきてくれる。


シンが壁際にパイプ椅子を広げ並べていたので私も少し手伝う。


「あと他に必要な物があれば伺います」


「ありがとうございます。大丈夫です」


私は机の上にパソコンを置いて開いた。


シンは三脚を立て、記録用のビデオカメラをセッティング中だ。


「期末試験どうでした?」


「まぁ、ギリギリ?  今回、全然勉強する時間なくて……そっちは?」


パソコンを立ち上げ、今日のエントリーシートが入ったファイルを開く。


「おかげ様でなんとか。 前期の単位のメドはついて、たぶん取れてるはずです。あとは試験を受けるだけです」


「良かった。来週には宿舎に引っ越して来るんだよね?」


「はい、土曜日に。みんなはもう夏休みですか?」


「うん、その辺りからちょうどお休みに入る」


「え、こっちに座らないんですか?」


私が壁際の椅子を持って部屋のすみに移動すると、シンが隣の椅子を示した。


「なんで、いいよ。二人もいたら圧が凄いじゃん? みんなが緊張する。それに私は見たってわからないし」


「ええ?  一人で心細いじゃないですかぁ」


「嘘だよ、そんなわけないじゃん」


「嘘じゃないですって、僕だって初めてなんですから、それは緊張しますよ」


ほらほら、と手招きをされ、そんなに言うんならしょうがないか、とシンの隣に座った。


シンが私の前にパソコンを置き、満足げに笑う。


「なに?」


「僕は見ないので」


エントリーシートには通し番号と写真、氏名、年齢、身長、体重、簡単な自己紹介が書かれている。


「ふーん」


審査はボーカルかラップのどちらかと、ダンスを見せて貰うことになっていた。


「じゃあ、どんなところを見るの?」


「そうですねぇ、ビジュアルと人柄が一番見たいところですね。ボーカルとラップは声質、リズム感、ピッチの正確さ、かな」


「ん、ダンスは?」


「ダンスは、まぁ正直、誰でも練習すればそれなりに上達するんで……身体の柔軟性と使い方、リズム感、後はのびしろしかみないです」


「のびしろねぇ……」


「さて、そろそろ始めますか」


「うん、声かけてくる」


私はB練習室へ行って、スイ先生を呼んだ。


「スイ先生、準備が出来たので、お願いします!」


「はい! 3人ずつでいいですか?」


「ええと、……いいと思います」


よく、わからないけど

一度に三人ずつ室内にいれるってことだろうか。


生徒のなかにイヤホンをして、身体をほぐしているショウゴの姿があった。


親からちゃんとサインを貰ったかな。ウェブ上での著名だから、なんとでもなるっちゃあ、なるんだよな。


隣の練習室へ戻ってシンの隣に座る。


早速審査を始める。


1人目、柔らかく軽やかなダンス。

リズム感も良く、表情も悪くない。


音楽が止みシンがニコリと微笑む。

というか、シンはずっと笑顔を絶やさず見ている。


「お疲れ様でした」


私はただ座って見ているだけ。

審査には参加しない。


今フリーのダンスを踊った生徒以外の二人は、壁際の椅子に座り自分の順番まで待機。


生徒さんには、まず1分程の歌かラップ、それからダンスを披露してもらっていた。


どちらもフリーで選曲は自由。


生徒さんは息を弾ませながらシンの言葉を待っている。


「どうして、このオーディションへ参加したんですか?」


「あ、アイドルになって、たくさんの人へ夢や希望を届けたいからです」


華奢な身体に細い腰。


容姿は普通だけど、透明感と儚さが同居して独特の空気感がある。


「(身長はどのくらい?)」

シンがこそっと聞いてきた。

「(170)」

エントリーシートを見て、こそっと答えた。


「わかりました。ありがとうごさいました」


身長か……。ヒナタやトモキとのバランスを考えているのかな。


そんなこんなで生徒さんの審査をすぺて終え、次はスタジオ外の生徒さんの審査になる。


「次の方どうぞ」


「はい」


張りのある元気な声がした。



次は、いよいよショウゴの番だった。



+++*+++*+++

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