ショウゴとの出会い
ショウゴと初めて会ったのは、学校の図書室だった。
私が中間テストの勉強をしていると、フラッとやって来た彼が、目の前の席に座った。
そしておもむろに私のノートへ付箋を張っ付けてきたのだ。
そこには(LINY or IGG 交換してください)という文字が、赤ペン先生みたいな几帳面さで記されていた。
顔をあげると、白餅みたいな肌の男の子が頬杖をつき、にこにこと私に向かって微笑んでいるのだ。
なんだこいつは?
キモっ、きもっ!!
ごめんだけど、それがショウゴへの第一印象なのである。
「スマホ持ってないから」
私は付箋をくしゃっと握りつぶし、ショウゴの前に転がした。
ショウゴは筆箱の隣にある私のスマホに視線を向けている。
私が問題集に目を戻すと、やがてついっと立ち上がり彼は消えた。
ああいう顔のいいやつは、皆が自分のことを好きになると思ってるフシあるからな、邪険にされてプライドが傷ついたか。
それで全て済んだと思っていた。
けれどそうではなかった。
彼はそれからも何度も私の前に現れた。
どんなに冷たくしても、また次の日にはふらっと現れ、ニコニコと笑って遊んでもらいたい犬みたいについてくるのだ。
それで迂闊にも、情が湧いたんだと思う。
今も、ふわっとした笑顔で隣に座っているショウゴをまじまじと見る。
「あのさ、前から不思議だったんだけどショウゴ氏、どうして私なんかに懐いてくるの?」
「そんなの決まってます、うちの学校で一番綺麗だから!」
私はイチゴ牛乳を吹き出しそうになった。
「知らないんですか? 奏先輩は学校人気ランキングの2位ですよ、まぁ、1位は俺ですけど」
今度こそ牛乳吹いた。
「ああ、ティッシュどうぞ」
「そんなランキングある?」
「そういう下界のお遊びにはまったく関心ないところもいいんですよねー」
「下界って……」
ほら、とショウゴがスマホアプリを見せてくる。
名前と投票数がずらりと並んだランキング内には、確かに私の名前があるのだった。
なにこれ、勝手に人の名前エントリーさせてるの、なに?
「でも、先輩、『ICE QEEN』だからなぁ」
「なにそれ」
「先輩のあだ名ですよー。もちろん」
「それ、いい意味じゃないんでしょ、どうせ」
「いつもひとり、誰も寄せ付けない、何があっても笑わない。氷の女王様はオーラ出しまくって……ちょっと近寄り難いところがあるからですかねぇ、ハハハ」
最後のハハハが白々しい。
「……」
「でも、俺は平気です。氷のツララで何度刺されようとも、北極海へ投げ込まれようともー」
ショウゴは大げさに自分の胸を押さえる。
「何故なら、奏先輩をリスペクトしているからです!」
ゴホっ。
「奏先輩は、俺の世界を唯一ぶっ壊した人なんです」
「ええと? 私、何かしたっけ?」
「わからなくていいんです、こっちの事ですから」
なんのことやら、まったく心当たりがない。
でも、今はショウゴがここにいてくれて、とても心強いということは確かだった。
「あとでショウゴに投票しておく」
「ほんとですか?! いやあんなクソアプリのランキングなんて正直どうでも良くて、先輩の中で俺の地位が、日々向上していく、というのが目標であり喜びですから!」
地位向上だって?
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