LXB ……(-ε- )スネル
「あっ、ええと、今ちょっと二人の話を聞いちゃってたんですけど、カリンさんがこんなことするなんて?って言ってませんでした?」
「ん?」
ポンタさんがハテ? という顔をして私を見ている。ショウゴの追及から逃げるためだけど、話の展開が強引すぎたかな。
「だから、カリンさんがやったことだと知っていたのかなって」
「あああ、それは多分違う話なんだ」
「違う話?」
「一緒にいたの」
「一緒にって?」
「襲われたとき、カリンと僕は」
「えっ!」
「で、気づいたらカリンいなくて、まぁ、怖くて逃げたかと思ってたから。でも、警察呼ぶとか、後で様子見に来るとか、してくれても良かったよね?! いくら嫌いでも…… っていう話をしてたんだ」
「怪我をしたポンタさんを置いていったと……」
「まぁ、そう。仕方ないかぁ、怖いよね普通は女の子だし、って思ってたから。今カリンが主犯っていう話聞いて、なんかいろいろ妙に納得したっていうか」
「そうだったんですか……」
自分が計画したこととはいえ、ポンタさんが殴られてるの、見たくなかったのかな。
いやいや、殴らせておいてなにが?
ではあるんだけど。
「ねぇ、俺の話は?」
隣のショウゴが半眼で私を見ている、のを感じる。
「なんで、差し入れしてたのかって話」
「それはさ、スカウトだよね?」
あっ、ポンタさん。
それ以上は言わないで下さい。
業務上の機密です。
「スカウト? なんの? どうして奏先輩が?」
「えっ、知らない? 先輩は芸能プロダクションの代理さんで、実は僕もキャスティングされてるんだよ。フフフ」
「芸能プロダクション代理? ポンタさんがキャスティング?? なんの話ですか?」
しょうがない、話せるとこまで話そう。
ショウゴにはパパが倒れたとき、助けてもらったから。
「じつは」
「こんにちは」
背後から聞き覚えのある声がした。
「おお、シンじゃないの」
「奏さん、来てたんですね」
「うん、さっき来たとこ」
「どうぞ」
ショウゴは立ち上がり、ベッドから離れた窓際に移動した。
「……君は、LXB君だよね?」
「はい、まぁ」
誰に対しても愛想の良いショウゴにしては珍しく、今、すこぶる感じが悪かった。
「これ、プリンです。よかったらどうぞ」
シンがプリンが入っているだろう箱をポンタさんへ渡した。
「ありがとう頂くね。僕みたいなおっさん、誰かに気にかけてもらうなんて事、ほとんどないから嬉しいよ」
「具合どうですか?」
「ああ、もう明日には退院出来るの。たいしたことないの」
「そうですか、良かったです」
「ユウトは? どうしてるの? 大丈夫?」
「警察に呼ばれて、明日行くみたいです」
「そうなんだ。迷惑かけちゃうな……」
「ポンタさんが責任感じることじゃないですよ。ユウトも来るって言ってたんで、後で顔見せると思います」
シンが、ふと窓の方へ目を移した。
あからさまに目をそらすショウゴ。
「それではポンタさん、私はこれで失礼します」
「えっ、もう帰っちゃう?」
「はい、お大事にしてください」
私は椅子を隣へ返し、ショウゴを手招きで呼んだ。
☆☆☆☆☆
病院の中庭に来たのは初めてだった。
パパのお見舞いに来るときには、いつも病室か売店しか寄らないから。
「ちょっと、座る? 何か買ってこようか? 飲み物とか?」
「怪しいですね、めっちゃ。奏先輩が俺にそんな気を使うなんて」
「ははは、そんなことないで……しょう?」
「シンさん知ってます。ユウトさんの友達っていうくらいですけど。それに異次元の鬼イケメンですし」
「あー、ええと」
「先輩、もしかしてイケメンを囲ってますか? 」
そ、それは言い方が……
近からず遠からずではあるんだけれども……
+++*+++*+++




