表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/183

責任を取ってください



「責任を取って、ひとつ教えて下さい」


「教えるって、何を?」


「前に言ったじゃないですか、芸能界がクソだからって」


「ああ、それか」


「はい、何があったのかと……」



ユウトがクスッと笑って目をなくす。


「びっくりした。結婚でも迫られるのかと思った」


「今は笑えない冗談」


「……そうでした、すみません」


ユウト髪をかきあげ、スっと立ち上がった。


ロッカーまで行くと、救急箱をロッカーの上に置き、ロッカーの扉を開いた。


中から何かを取り出すと、バタンと音をさせ扉を閉じた。


向かい側のソファへ浅く座り、ソファテーブルへ名刺の束を置いた。


私の名刺だ。

差し入れの中に一枚ずつ忍ばせていたやつ。


「あんたが本気だっていうのは、よく分かった」


「そう? なら通ったかいがあった」



「昔、お祭りの日に、ダンススタジオのステージを見たんだ。衝撃だった、鳥肌がたって。すぐ親にこれやりたいって言ったんだ」


「何歳のとき?」


「5歳」


「5歳で、自分のやりたいこと見つかったの? 凄い」


「別にダンスがやりたかった訳じゃなくて、本当の動機は不純もいいとこ」


「あ、可愛い子がいたとか?」


「実はそう」


「それは、不純だわ」


クスっと笑いまた目をなくす。


「スタジオに通って1年が過ぎたころ、その子に初めて話しかけられた」


「うん」


「下手くそって」


「えっ」


「初めて言われたのが下手くそって、もうショックで、ダンス辞めようと思ったんだ」


「下手だったの?」


「まぁ……自分でいうのも何だけど、下手だったよね」



「そりゃ、そうなんだ。動機がその子に会いたくて通ってただけだから、ダンスはオマケみたいな感じでしょう」


ユウトが下手だった?

最初からキレキレに踊ってそうだけど。


「恥ずかしくて辞めるってなったとき、その子が来て言ったわけ」


「うん」


「辞めんの? せっかく才能あるのに、残念だよって。えっ、待て、俺才能あるって褒められたよね?! ってなって、辞めるの止めた」



「それから練習ちゃんとして、猛特訓して、どうしてもその子のレベルに追い付こうと毎日頑張ったんだ」


「そしたら、コンテスト出るメンバーに選ばれて、その子とペアになれた。しかも優勝した」


「すごい」


「そこからは純粋に踊ることが楽しくなった、もっと上手くなりたいって思った」


「うん」


「けど、彼女がスタジオを突然やめた。スカウトされて歌手になったんだ」


「最初のうちは、よく連絡とってたんだけど、そのうち彼女が忙しくなって、連絡も少なくなって、ほとんど会うこともなくなっちゃって。俺が海外に居たって事もあるんだけど」



「うん」



「ある日、ネットのニュースで知ったんだ」





「彼女が死んだって」



「!!」




+++*+++*+++

作業用BGM


In The Stars / Benson Boone

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ