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ヤバイやつのヤバイやつ②



グラスの上部を手で塞がれた。


長い指の主を見上げる。


プラチナブロンドの派手髪。

白シャツに黒いベスト、ここの制服姿で片手をグラスに置き、一方の手は黒ズボンのポケットに突っ込んで、上から男達を見下ろしている。


「お客様すみませんが、うちの店でこういう真似、やめてもらえます?」


ギロリと黒瞳が動き白目が閃く。



私の肩にまわされていた腕が外れた。


「俺たち客だけど? 何? この店は 店員が客に難癖つけるんだ!?」


グレースーツが大きな声をあげる。


「これ飲んだらどうなるか」


グラスがグレースーツの男の前へ移動した。


「よくご存知でしょう?  あっ、カメラ一緒に見ますか?」


皆が天井を見上げる。


剥き出しの配管やダクトの間に赤と緑色の点滅する光が見える。

監視カメラだ。

ダミーではなく、正常に作動中みたい。


「それから、警察呼んでポケットの中を確認してもらいましょうか?」


「しっ、知らねぇよ!」


「べつに何もしてねぇだろっ!!」


二人はそそくさとスツールから下りると、早足にフロアの人混みを押し退け逃げていった。


……緊張がほどけて楽になる。


身体の両側に知らない男達の気配と気持ち悪さだけが残ってムカムカする。


やっぱり殴っとけば良かった。


「知らないやつが用意した飲み物を飲むんじゃねぇよ」


「だって」


「そもそも来るなって、聞いてない? シンから」


「聞いてる……」


「あんたさ、俺がいなかったら、どうなってたか、わかる??」


「えっと、わかるような、わからないような……」


「ウジみたいなゲスはどこにでも涌く、あんたみたいなお嬢様がぽやっとしてたら……」


「なんでユウトいんの?」


茶髪女子が何処からかいつのまにか現れて、ユウトの前に立っていた。


「遅番じゃないの?」


「シフトが変わったんですよ」


「変わった?」


「カリンさん、クビになったから知らなかったでしょう?」


茶髪女子、カリンていう名前なんだ。


えっ、ていうか、クビ?!

クビってさ、なかなかな事をしないと、そうはならないヤツでは?


「あー、マジでダルい」


カリンが指先で、毛先を巻き巻きし始めた。


「ブンブンブンブン、あなたの周りを飛び回る目障りなハエを駆除してあげようと思っただけなのに、なんで邪魔するかなぁ」


「ポンタさんも誰かにやらせた?」


ポンタさん?

ポンタさんが何だって?!


「だって、ウザイからあいつ。ただのおっさんのクセに、カリンに説教するんだもん」


「俺に付きまとうの止めろって、そう言われただけだろ?」


「関係ないじゃん!! ユウトとカリンの問題なのに、首突っ込んできて」


「そうじゃない、あなたの一方的な付きまとい行為が問題なんだよ」


「カリンが一方的に??  嘘でしょ? そんなことない」


「カリンさん、俺は何度も言ってるでしょ?  適正な距離をとって下さいって」


「違うよ、それはユウトの本心じゃないんだよ? ポンタや、この女が、言わせているだけなんだよ? 気づいてよ」


カリンがユウトの手を握る。


びっくり、私いつからかなにかに巻き込まれていた?


「私達が出会った時のこと覚えてる? ダンスバトルで、ステージから私に笑顔をくれたじゃない」


「それはたぶん、勘違いです」


なるほど、ちょっと見えてきた。


つまり、この女はヤバいやつ!!

相当ヤバいやつ!!!


ユウトのパフォーマンス中の笑顔、あれ完全に演出だから、特別な誰かに向けた笑顔なんかじゃない。


ポンタさんが言っていたストーカーって、本当の話で、それがこのカリンだったってこと。


「嘘だよ、あれは勘違いなんかじゃない。その後、特別なドリンクも作ってくれた」


まって、ユウトはドリンク係だから!

誰にでも作るんだよ?

特別でも何でもないよっ?!


ユウトは首を振り、カリンの手を振り払った。


「自首して、カリンさん」


「酷い……私だけなのに、世界で一番あなたのことを愛しているのは」


あれ? カリンの手元で何かが光った?


私は咄嗟にスツールから飛び降りて、ユウトとカリンの間へと割り込んだ。


尖った何かが、私の腕の皮膚をえぐっていった。


あ。



+++*+++*+++


作業用BGM


Bad News / KISS OF LIFE

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