キッズと強面(イケメン)お兄さん
ユウトがバイトをしているダンススタジオはここから、2つ先の駅にあって、駅から徒歩5分となっていた。
電車を降りて、スマホの地図アプリを見ながら歩いていくと、それらしきビルはすぐに発見出来た。
8階建ての新しく綺麗なビルで、入り口にフロアの案内板がある。
ダンススタジオは地下1階。
地下への階段を下りると、スタジオはすぐ右手にあって、明かりがついてる。
あんなイカツイ感じで、キッズたちは怯えて泣いているんじゃないか?
なんて想像しながら、スタジオの自動扉を抜けると、受付的な小さな机が置いてあるけど、そこには誰もいない。
壁際には4人掛けのソファがあって、正面の2つのスタジオを眺めることが出来た。
スタジオの扉にはAとBのアルファベットがあしらわれている。
それぞれの部屋には小窓が2つずつ、そこから中の様子が見える。
Aの方で子供達が床に座り柔軟体操をしているのが見えた。
スカイブルーのTシャツにアディダスの白いハーフパンツ、黒いキャップ姿のユウトが、部屋の端にある棚の前で、スマホをいじっている。
流れていた音楽が明るい洋楽に変わった。
スマホを部屋内のスピーカーに直接つないでるのか。
ユウトは子供達の前に戻り座る。
「ユウト先生!見て!!」
小学生くらいの男の子が、おもむろに足を開き上半身を床にピタリと付けて見せた。
「おっ、すごいじゃーん」
「ユウト先生!私も!!」
「見て、僕も!!」
と皆が次々開脚し身体を倒し始めた。
ユウト、にこにこと笑ってそれを見守る。
「みんな上手ですねぇ」
子供は8人いた。
幼稚園から小学生まで、年齢は様々っぽい。
ユウトは胡座をかいて、ゆっくりと首を回している。
予想に反してとても和やかな雰囲気。
ふと、窓越しにユウトと目が合った。
ニコリ。
ユウトが笑った。
私に笑いかけた?!
そして、ニコニコ笑いながら手招きをされる。
私を呼んでいる?!
昨日の冷たい態度とはまったく逆で、なんか歓迎されているみたい?
私は靴を脱ぎそれを靴箱に置いてから、スタジオの扉を開けた。
スタジオ内は土禁で、みんな好きなダンスシューズを履いている。
もちろんシューズを持っていない私は、靴下のまま。
子供達が一斉に振り返り、たくさんの小さい目玉に見られる。
「こっ、こんばんは」
私が挨拶すると
「こんばんは!」
子供達が大きな声で挨拶を返してきた。
げっ、元気だ、な。
「今日、体験レッスンするお姉さんでーす!」
ユウトは私を手招きし、自分の隣の床を指し示す。
トントン、手のひらで床を叩いた。
体験レッスンってなによ。
そんなのには申し込みしてないと思うんだけど?!
「座って」
ニコニコ。
「体験って?」
「まずは身体を解して」
ニコニコ。
ユウト足を広げ開脚、軽く前屈しながら私を見る。
ああ、真似すればいいわけ?
開脚、からのー、前屈。
自慢じゃないけど、身体は硬いの。
正直ほんとに。
これが精一杯です。
決してふざけてはいないんだけど。
ユウトは手を伸ばし、胸をペタリと床に付けている。
やわらかっ!!
チラリと私を見て、
「?」
という顔をする。
私も
「?」
という顔を返す。
「サキちゃん」
ユウトが誰かを呼んだ。
「ハイ!」
私の目の前にいる女の子が元気に返事をした。
「手伝ってあげて」
「はーい!」
女の子は立ち上がり、私の後ろに回ると、両手で背中を押してくれる。
「あっ、ちょ、そんなに、押さなくても……」
グググっと容赦なく押されて、股関節に負荷がかかる。
「イタタタっ!」
クスクスクスっと子供達の笑い声が聞こえる。
なんか、みんなに笑われているみたい。
「イタッ、イタタ」
クスクスクス。
こうして子供達に笑われながらの、地獄の体験レッスンが始まった……。
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好きすぎるコレオグラファー
woomin jang先生は
ユウトのロールモデル
定期的に見たくなるガールズの振り付け
https://youtu.be/xbRjg9c3Ojw