表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/183

高校生ラッパー③



「あんたはブスね!」


「えー、ひどぃ、傷つく(嘘泣きグスン)」


このガキ、その口をあのウサキャラみたいに縫って差し上げようか。

珍しくお子をかわいいとか、思っちゃって損したぜ。やっぱり子供は嫌い。


「おい、リサ!」


トモキが慌てて妹の口を塞いだ。


「すみません、口が悪くて」


苦笑しながら頭を下げる。


リサがトモキの手を、エイっとどかす。


「やめてよね」


リサ、トモキの手を払い不本意そうに口を尖らせている。


「リサちゃんていうの?かわいい名前だね」


リサ、私を上目使いで見ると、うっすら笑みを浮かべた。

褒められてまんざらでもなさそうだ。

ふん、お子様なんてチョロいもんよ。


「まあーね」

「リサ早く、もう行くぞ」


リサはトモキにせかされ、ペタンと座り靴を履いている。


「すみません、じゃあ家の方へ」


トモキの家は、保育園に近い団地内にあった。


最上階の5階まで狭い階段を徒歩で上っていく。エレベーター、ないんですか?

日頃の運動不足を感じる……。


「すみません、母は仕事で遅いから」


そう言ってトモキが麦茶を出してくれた。


「ありがとう」


四人で囲むと少し窮屈な食卓テーブル。

5階からの眺めは良く、開け放たれた窓から心地よい風が吹いてくる。


リサがトモキの隣に座った。


「リサ、明日の用意して」

「あとで」

「今」

「もう!」


リサ、また口を尖らせながら椅子から下りる。


「すぐに戻るからぁ~待っててね」


シンに向かって手をヒラッと振ると、隣の部屋へ入っていった。


愛嬌の多い子だな。


「君のラップを見て来たんだ」


シンはそう言うとニコリと笑った。


「……急にバズっちゃって、下手なのに恥ずかしいです」


その映像は数週間前から動画サイトに上がり話題になっていた。


「さっきの話ですけど、デビューが1年以内って、絶対デビュー出来るってことですか?」


「うん、まぁ、そのつもりで準備してる」


「ねぇ、お名前なんていうの?」


いつの間にか戻ってきたリサが、再びシンの前に座った。


「シカハラシンといいます」

「シンくん、これねリサが作ったの!あげるね」


シンはリサから折り紙で折られた赤いハートを受け取った。


「上手だね、ありがとう」


「うちの事務所のこと、知ってますか?」


「すみません、あまり……」


「うちは、歌手や俳優が中心の事務所で、アイドルグループを出すの実は初めてなんだけど、でも十分力は入れるし、環境も整えてる」


「あの、そうしたら早ければ来年の5月にはデビュー出来るんですね?」


「計画では……もっと早いかも」


「そうしたら、あの……」


「何? なんでも言ってみて」


「お金……とか、その、契約金みたいのって先に貰えたりしますか?」


「契約金……」


「野球選手とか先に貰えたりするじゃないですか?」


「野球か……そういうのとはちょっと違って、ええと結論から言えば、契約金もお給料もないです」


「そうなんですか……」


トモキはがっかりしたのか、私から視線を外した。


「説明します!まず、斎藤さんとは初めはデビュー候補生として契約させて頂きます。デビューまでの1年間はお給料は出ませんが、デビュー後にはお仕事の分だけ、当社規定の割合でお支払いさせて頂きます」


「1年も……」


「それから、もし契約したらすぐに当社の寮に入ってもらう。これは他のメンバー候補生と共同生活をして、結束を高めてもらうのが主な目的」


「家も出なきゃならないんですか?!」


「そう。その代わり家賃や食費、レッスン料なんかは全部こちらが負担する」


「学校はやめないといけないですか?」


「こっちの学校に転校してもらう。学業はなるべく優先させるというのが、当社の考えなんで」


トモキの顔色が曇る。

いくつかハードルがあるのはわかる。


「ここに、詳しい説明と契約内容が入っているので、親御さんとよく相談してみて」


山口さんに作って貰った契約書のコピーと資料が入った封筒を机の上に置いた。


「お金が必要?」


シンが優しい静かなトーンで訊ねた。




+++*+++*+++


作業用BGM


Off The Record / IVE

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ