エピローグ / 青春ゾンビ
薄暗い部屋で虹色に光るゲームPC、画面は目まぐるしく変わり激しく明滅している。
「今日さ、凄い人がいたんだ」
ヘッドフォンをしたショウゴはキーボードを操作しながら話を続ける。
「女バスの先輩でさ、あのキモい顧問にブチギレして、パトカー呼んだの」
「ほんとすげぇカッコ良くてスカッとした」
「けど、自分が恥ずかしくなった。見てるだけで何も出来なかった」
「兄さんと似てる、正義感が強くて不器用でバカ正直」
「そんなことない。兄さんは今もカッコいいよ」
☆☆☆☆☆
「今日さ、初めて話しかけたんだ。めちゃ勇気出してみた」
「うん、兄さんの言う通り無視された」
「だけど平気、また行く。だって、無視されるのは慣れてるじゃん」
「違うよ、兄さんのせいじゃないよ」
「この家で出来損ないが無視されない方法は、素直で可愛い役回りをすること。でも、そうだね、兄さんが引きこもっちゃったせいで、俺の役目が少しずつ、ややこしくなってるのは確かかも」
☆☆☆☆☆
「おはよ。ああ、学校? こんな天気だし、正直めんどい。聞こえてる? 雷の音」
「兄さんは? 今から寝るの? 」
「ちょっ、ちょっと待って!! 電話きたっ!! 初めてきたっ!! 奏先輩から!!」
☆☆☆☆☆
「兄さん、俺、この家を出ることにした」
「兄さんより先に出ちゃうけど、なんかごめん」
「あ、聞こえてた? そうだね、初めてかもあんなふうに言い返したのは。可愛い俺じゃないから、お父さんとお母さん、めちゃ驚いてた。卑怯かな? そう? ちょっと胸が痛むんだ」
「ありがとう、応援してくれる? 兄さんだけ、そう言ってくれんの」
「奏先輩? まったく期待されてない」
「見抜かれてる気がする」
「え? なにって、俺がほんとは嘘つきで情けなくて何も出来ないやつだって」
「兄さんが? 俺より情けないわけないじゃん。兄さんは頭が良くて運動も出来てイケメンで、皆から好かれてる」
「えー、ほんとだって。兄さんは俺の憧れで、自慢の兄貴だよ」
「今はずっと頑張ってきた分のインターバルみたいなもん? 自分を保つためには給水とおやつとゲームが必須なんだよ」
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