表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

175/183

まさか仲が悪いんですか?


デビューショーケースを前に練習にも気合いが入ってくる。


練習が深夜近くになることが多くなり、今日も終了の声をかけに地下へ下りる。


じゃなければ時間を忘れて、いつまでもやってしまうのだ。


「お疲れ様です、もう終了時間ですよ」


扉に半分からだを入れたまま伝える。


「トモキ、そこ下がるとき後ろ見ないで、ショウゴはちゃんと退くから、いちいち見なくていい」


「ヒナタは前に出るとき、タンタンタンのタンで出ないと間に合わないから!」


「ショウゴはシンと肩の角度合わせて、それから今立ってるとこ、どこ? 0.5外だろっ」


「シン! お前ショウゴよりちっさいんだから大きく踊れよな! 」


ユウトが早口で捲し立ててる。


なんか白熱してる……大丈夫かな。


「ちっさいは余計、ショウゴがのびのび踊り過ぎ」


シンがボソッと言うの聞こえた。


「小さく踊るの無理なんで、大きいんで」


私に聞こえるんだから、皆にも聴こえていて当然か。


「はい、やめやめ、練習終わりー、解散!」


睨み合っている二人の間にトモキが割って入り、ショウゴを連れてくる。


「お疲れ様です」


「ん、お疲れ様でした」


扉を押さえて待っている私の前を、にこやかなトモキとブスッとしたショウゴが過ぎていく。


ユウトがモップを滑らせる。


「お疲れ様です、おやすみなさい」


シンがエアコンと扇風機を消して出ていった。


「お疲れ様です」


ヒナタは肩をすくめ苦笑しながら出ていく。


「調子ど?」


「あー? どうって?」


ユウトは端から端へ向かい、真っ直ぐ歩いていく。


「うまくいってるかなぁーって」


「?」


チラリと私の顔を見てまた前を向く。


「ちょっと、厳しくないかなぁーって」


「全然厳しくないけど。当たり前に出来ることが出来てないから言われてるだけ」


ハハハそうですね。

ダンス担当も真正の鬼だった、忘れてた。


私は静かに扉を閉じて部屋へ戻った。



☆☆☆☆☆


ほぼ1年前、シンと出会ってボーイズアイドルグループを作って売る、という突拍子もなく無謀なことを思いついた。


その為に企画書というものを初めて書いた。

大学の図書館に入り浸り、浅い知識と経験なりに見様見真似でそれをまとめた。


今見直すと、恥ずかしいくらい。あれは子供の落書きのようなもので、スケッチにさえなっていなかった。


「アイドルのフレデリックをつくる!」


最初は、そんな簡単な表題で、A4の紙が10枚くらいだった。


でもパパや山口さんや叔母さんは、その落書きを見ても、馬鹿にしたり、突き返すようなことはしなかった。


こんなことをやっても無駄だとか、お金がないからとか、そんな事も一切言わなかった。


「やってみようじゃないか」


病室で企画書を読み終わったパパは、そう言うと私の顔を見て微笑んでくれた。


認められたようで嬉しかった、あの気持ちを忘れていない。


そこで受け入れて貰えていなかったら、BEFAMはこの世界のどこにも生まれてはいなかった。


メンバーが集まり、個々の個性が足される度、私の企画書はページを増していった。


世界観、サウンド、グループコンセプト、それに伴う5人各々のコンセプトとストーリー、それを基にスタイリングのアイディアを出しあった。


デビュー後2年分の事業計画と目標はAMRと共有していて、状況に応じて見直す予定。


先行デビュー曲の『春の奏』に比べ後続デビュー曲はテンポが早くノリが良い。「元気で明るくてポップなサビと宇宙っぽいエモさ!」

が、コンセプトに基づいて私が出したデビュー曲へのオーダーだ。


シンは「またまたそんな、意味のわからないことを」

と、言いながらその日のうちに1曲、その後も30曲以上は生まれている。


その中から、メンバーみんなで選んだ曲を、シンとパパとでアレンジし、ユウトとショウゴがコレオを作った。


トモキがラップ部分の歌詞を書き、それ以外はヒナタとシンが担当している。


このデビュー曲とアルバムは流出を防ぐため、レコーディング後から慎重に扱われている。


の、はずだったのに、またしても事件が起こった。



+++*+++*+++


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ