デビューするぞ!
デビューまであと10日となった。
BEFAMはデビューショーケースで披露するパフォーマンスの準備が中心になっていく。
今回はプレデビューとは違い、デジタル配信以外にもCDという形態が2パターンある。
そのCDも、今は配送センターから販売店舗と予約客への発送準備に追われている。
CDカバーは(V)ビジュアルイメージと(A)アーティストイメージの2種。
「ビジュアル」はメンバーの集合フォトを使用、「アーティスト」は、BEFAMの世界観をイラストとグラフィックで表現したもの。
アートワークは前回と同じデザイナーさんとイラストレーターさん。
どちらもCD収録曲は同じ、だが、フォトブック、トレカ、イベント参加券は異なる物が封入されている。
つまり、ファンは2枚とも購入せずにはいられない。そういう心理に付け込んだ、多売戦略だ。
でも、2パターンは良心的な方で、世の中には5パターンや7パターンもあったりするし、販売店別に特典が違うとか、とにかくレコード会社は購入させることに異常な程執念を燃やす。
何故なら、レコード会社はCD売上が利益の半分以上となるからだ。
ショーケースの場所は都内某所。
千人程度のキャパで50分、パフォーマンスとファンとの交流か主だ。
その後、韓国の音楽番組にもいくつか出演が決まっている。いくつか、と定まっていないのはショーケースの反響に寄って、増える可能性があるかも、ということらしい。
韓国放送局では、ほぼ毎日どこかしらの局で音楽番組の放送があって、Kポップアイドル達の主戦場となっている。
デビューしたからといって誰でも出られるわけではもちろんなく、政治的な背景や、事務所とテレビ局との関係だったり、お金の問題だったりする。
幸い政治的な側面でいえば今は良好で空前の日本ブームらしい。
以前は国営テレビから日本語が流れることさえ微妙だった時期があってね、と園田さんが教えてくれた。
今は韓国アイドルも日本好きを堂々と公言し、日本の市場狙いで頻繁に来日している。
日本の懐メロがDJによってクラブで流されていたり、日本居酒屋や、日本料理が人気なんだって。
テレビ局との関係でいえば、AMRは韓国にも支店を構えていて、韓国人ソロアーティストも抱えていたりするので、まぁパイプは強い。
そして、お金の問題、これが一番大きい。
特に番組制作費の負担。
ステージのセットはアーティスト側の持ち出しというのが通常で、その出来と見映えはお金次第ということになっている。
AMRはお金持ちである。きっと立派なセットを組んでくれることだろう。
うちが出せと言われたら、それは到底無理なレベルの額を。
プロモーションは韓国の後に、台湾、タイ、インドネシア、シンガポールを予定している。
ここでも、各国の音楽番組やバラエティーに出演し露出と知名度をあげるプロモーションが緩やかに組まれている。
当初の計画ではもう少しハードなスケジュールだったが、ヒナタの体調を考慮し、キャンセルされたものもある。
ヒナタについては、月1回はカウンセリングに通うことと、1日の仕事時間の短縮、充分な休息と睡眠時間の確保(つまり規則正しい生活)が前提で、BEFAMへの参加が可能になった。
つまり、デビューは予定通り出来るのだ!!
メンバー内の話し合いでは全員一致で、
『ヒナタがいないなら、デビューは延期』
だった。
「AMRからのデビューがなくなっても、デビューが出来ないわけじゃない」
「レコード会社は、またインディーズから探せばいい」
「プレデビューで、そこそこ知名度が上がったしファンも付いた、それを財産に頑張れるんじゃないか?」
次第に
「借金の5億6億なんぞ、たいした額じゃねぇよっ!」
「そうだ! 一発当てれば、そんな額はすぐ返せるんだ!!」
「そうだ! そうだ!」
うん、頑張って一発当てよう! 当ててください、頼みます!!
と、ポジティブマインドの伝染力とその場で調子づいた高揚感だけで、なんとかなるさー、と思考停止状態で終わっていた。
究極の奇跡の到来や、人生の逆転狙い、そんなものを回避出来て、本当に心底良かったと思う。
下手したら契約金の返還、ということになっていたかもしれないし。
しかも、契約金はとっくに使ってしまって残っていない。
実はとても危ないところだった。
☆☆☆☆☆
※2024.4月現在の日韓情報です