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一番星を追いかけて



11月の下旬、砂川エンタからデビューしたビージーズの盗作問題が解決した。


こんなに早く裁判もせず事が進んだのは、砂川エンタのイメージが著しく毀損したことによるものだ。


ビージーズがタイアップするはずだった大手コンビニチェーンや朝の情報番組が手を引いたことから「飛行少年」というあの曲は販売停止となり、二度と公では披露されることはなくなった。


砂川エンタのアイドルグループとはいえ、デビューしたばかりでデビュー曲ごと消されてしまうとは、本当に同情してしまう。


でも、まぁ、同情するけど、ライバルが減ったことは素直に嬉しい。


「そもそも、ライバルの器としては小さかったし」


「え、なんて?」


ヒナタが通りすがりに私の独り言を拾った。


「なんでもない」


「そうですか? ライバルがどうとかって」


「それより、今日のお題はなに?」


学校から帰ってきた高校生組が、制服のシャツの上からエプロンをつけてキッチンへ入っていく。


「え、奏さんが決めたんですけど? パンケーキ作るって」


「ああ、ふわふわパンケーキを作りましょう、の回か。でもさ、制服汚れるんじゃない?」


「それも、制服の方が海外受けがいいからって、奏さんの指示ですよ」


後ろからカメラを持ってやってきたシンに言われる。


「シンは? 制服は?」


「今日のログは高校生組だけ、私は撮影担当です。制服コスプレはまたいつかのためにとっておきます」


「いつか? ふーんま、そのときにはもう似合ってないかもしれないけど。さてさて、ふわふわパンケーキ、美味しく出来るかねー」


キッチンで、ログの撮影が始まる。


こうやって、週に一度ログを撮って「BEFAM 活動日記」として、AMR のプラットフォームにアップするのだ。


あらかじめ1ヶ月分のネタと大体の台本を簡単に作って渡していた。来週は「クリスマスツリーを飾って、カードを書こう」とかだったかな。


台本といっても、あまり細かく決めてなくて適当にこんな感じで、あとは君たちのバラエティー力におまかせ、といった具合。


「まず、卵を卵白と黄身に分ける」


ヒナタがスマホを見ながら作り方を読む。


「じゃ、やってみましょう!!」


と、ショウゴが卵をボールの縁に当て、ゴンゴン当て過ぎ、だなそれ。


「う、おっ? ちょっと待って卵黄と白身って分けられなくない?」


ショウゴ、普通にそのままボールに卵を割りいれた、殻も入った多分。


「ショウくん、そういう時はこれ使うんだよ。ジャーン卵を白身と黄身に分けるアイテム、バーイ百円良品」


ヒナタ、それは別に宣伝しなくていいやつ。


「へぇーすごっ、これだと簡単に分けられるんだ、便利だね!!」


トモキ、君もテレビショッピング的な口調で言うのやめなさい。


「さ、次は白身を角が立つまで泡立てるって」


「今日はなにしてんの?」


リビングのソファーからキッチンを見ている私の横にユウトが座った。


「ふわふわホットケーキを作ろう、だと思う」


「うぉーい、それは楽しみだな」


「ところで、さ」


「うん?」


「ありがとう、グループに入ってくれて」


「なんだよ、急に」


「ちょっと言う機会なくて、今になっただけ」


「ありがとう」


「え?」


「俺を諦めないでくれて」


ニッと口角を上げて笑う。

こうやって笑うと、目はなくならない。


「……なにそれ。変な日本語」


「帰国子女なので」


「やっば!!」

「ちょっ! トモくん助けて!!」

「うわっ、ショウゴ、それ焦げてるってっ!!」


キッチンで大事件が起きているようだ。


「美味しいは期待できなさそう」


「あと、ツーテイクくらい、アタマから撮らせるか?」


「ちゃんと作れたら面白くないじゃん」


「まぁ、そうか」


「そうでしょう」


「それ、もしかしてアメリカの?」


ユウトが私が手に持っているパンフレットを見て訊ねた。


「うん、語学の学校」


「いつから?」


「来年の夏か秋くらい」


私は国内の大学へは進学しないことに決めていた。


パパとも相談して、海外の大学へ行こうかと思っている。


まずは英語の技量に不安があるので、1年間はファウンデーション(語学予備)校へ通い、ネイティブの授業についていけるように頑張って勉強するつもりだ。


米国の大学で、経営やエンタメを学んでフレデリックプロダクションのタレント達を世界で活躍させられるような会社にしたい、そんな夢が私の中でうっすら芽吹き始めているのだ。


園田さんや佐野さんやメンバーの活躍や頑張りを間近に見て、私も何かに挑戦してみたいなと思って。


日本から出て海外で学ぶことは良い経験になるから、とパパも全面的に(特にお金)協力するからと、言ってくれた。


こんなふうに自分から何かをしたいと、パパに頼むことは初めてのことだった。


海外生活は不安もあるけど、それより楽しみの方が大きい。


だから、BEFAMはもうすぐ私の手から離れることになる。


「さぁ、ホイップクリームの上にチョコの星をのせたら出来上がり!」


「出来ましたっ!!」


「ふわふわぱーんけーきー完成でーす!!」


パチパチパチパチ。


+++*+++*+++

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