表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

110/183

学校での人気が急上昇



「行ってきまーす!」


「遅刻しそうなので、お先にすみませーん!!」


玄関でローファーを履いていると、後ろから元気な声がふたつ聞こえた。


ヒナタとトモキが、シューズ棚から靴を取って、半ば駆け足で玄関から外へ飛び出して行った。


「いってらっしゃい……気をつけて」


そう声を掛けたけど、二人の影すらもうそこにない。


彼らの夏服は淡いブルーのシャツに白いニットベスト、グレーベースのチェック柄ズボンだ。


その爽やかな彩りだけがちょっとだけ記憶に留まる。


「早くない? あいつら俺達より学校近いのに」


玄関を出ると、ショウゴがリュックを背負って待っていた。

ネイビーカラーのポロシャツにベージュのズボン。


制服を見ればどこの学校かすぐわかる個性的な夏服だ。

私も同じポロシャツにベージュベースのタータンチェック柄のヒダスカート。


「確かに……どうしてあんなに慌てて行ったんだろう」


ショウゴが私をじっと見てくる。


「なに、なにか変?」


「いやー、夢みたいで。こんなふうに奏先輩と同じ家から一緒に登校出来る日がくるなんて……」


感慨深そうにしみじみと言うから面白い。


「あ? 一緒に行くって言ったっけ?」


ショウゴを追い越して駅へ向かって歩き出す。


「そう言う、そんな意地の悪い……って今始まったわけじゃないか」


トトトトト、っとショウゴは早足で私を追い越すと、スマホを空へ高く掲げた。腕が長いのでそれが自前の自撮り棒となる。


パシャ。


「勝手に撮んないで、肖像権の侵害」


「フフフ。安心してください、誰にも見せませんから」


「変態なの? キモイ」


「……って酷いな」


「あっつ……」


空は澄んで高いのに、秋の気配があまりしない。


「そういえば昨日、途中でユウトさんと外出したじゃないですか、何の用だったんですか?」


「ん、ああ、それはちょっと」


昨日のTFCで、私がトラックの荷台へ閉じ込められ熱中症になったことは、高校生組には内緒にしていた。


いらない心配をかけてショーに集中出来ないと困る、というユウトの咄嗟の判断だった。


早い手当てと休養のおかげで重症は免れ、今朝はいたって元気だ。


お医者さんの話だと、後10分発見が遅れていたら、死んでいたか脳機能にダメージを受けていたかもしれないって。


恐ろしくないですか? 熱中症って。

いやいや、それより扉を外から閉めたのが誰かって話なのよ。


それがまだわかっていない。


事故なのか、故意なのか……。


故意だとしたら悪質すぎるし、やるとしとらあいつしか心当たりがない。


砂川会長。


今日、シンがコンベンションセンターの警備室へ行き、駐車場の防犯カメラの映像を見せて貰うそうだ。


それによっては警察へ被害届を出そうと考えている。故意なら立派な殺人未遂事件である。


☆☆☆☆☆


電車内は通勤通学時間帯のため混んでいた。


私達は隣同士でつり革に掴まり立っている。


ふと、視線を感じて横を見る。


視線の主達は、同じ路線を使う学校の女子高校生らで、視線はスマホで漫画を読んでいるショウゴへと向けられている。


なるほどやはり目立つのか。


そういえば、このお坊っちゃまは電車などに乗って学校へ行くなんてこと、初めての経験じゃないのかしらね?


「なんですか?」


ショウゴが私の視線に気づいてこちらへ顔を向けた。


「いや、女子が見てるから」


ショウゴは辺りを見回し彼女たちを見つけると、爽やかな微笑みを惜しげもなくばらまいた。


ファンサービスがプロアイドルじゃん、仕上がってるなぁ、こういうところは。


一駅乗って電車を降りる。


学校へ向かう道すがらも、完全に遠巻きに包囲されていた。


「なんだろう……急に俺の人気が爆上がり??」


「ショウゴー、TFC見たぞ!!」


ショウゴの友達がそう言って手を振ってきた。


「お、おお」


ショウゴ、軽く手を上げ答えた。


「あ、それか……」


それでさっきからのこの反応なのか。

凄いな、やっぱり10代には絶大な人気を誇る神イベントなんだ、あれ。


ファッションとかコスメとか、あまりにも興味がなさすぎた。これからはビジネスのためにもっと勉強しなくちゃな。


校門を入り、私が三年生の教室へ向かうと、彼は途端に女子に囲まれた。


そもそも華やかで人気があったショウゴだから、この騒ぎは本人の中では予定調和なのかな、あまり驚いている様子がない。


「昨日見たよ! ねぇ、モデル業復活したの?」


「ん」


「あそこの洋服かわいいね。たくさん買っちゃった」


「あ、私も!」


「おお、ありがとう」


「ねぇ、モエカと会った?  可愛かった?」


「誰それ?」


「知らないの? 」


「うん」


「じゃあ、ミンチェンは?」


「知らない。中国人?」


「人気のあるモデルさんだよ」


「そうなんだ、あんまり他の出演者とは会ってなくて」


ちょっと立ち止まり、ショウゴ君のミニファンミーティング、の様子を眺める。


私といた時には誰も寄って来なかったけど。こういうのって、どうなの?

相変わらずの避けっぷりを思い出してなかなか傷つくね。

あの事件以来、私は要注意人物、関わっちゃいけないリストにでも載っちゃっているのだろう。


私は人避けかってぇの。


おっと、待てよ??


こっちが、これなら……ヒナタとトモキも今頃、大勢の女子に囲まれているの?  かも?


トモキはともかく、ヒナタは面喰らってるだろうな。


ハハハ。


帰ってから、話を聞くの楽しみだな。




+++*+++*+++




ちょうど更新しようとしている今、TGCがYouTubeでリアル配信してまして。たまたま偶然なんですけどね、物語のなかとタイミングがあってしまいました。


※ちなみにTFCはTGCとはなんら関係のないイベントです、けどね!!


作業用BGM


Wife / (G)I-DLE





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ