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プロローグ / 青春ゾンビ
「速報です。
今朝、人気女性アーティストのリリアさん(25)が、自宅浴室内にて心肺停止の状態で発見され、その後病院で死亡が確認されました」
……誰が彼女を殺したのか?
★★★★★
【 ぼっちの居場所 】
奏は机に頬をつけたまま、教室の窓ガラスを這う雨の雫を目で追っている。
昼休みの教室は騒がしくて好きじゃないが、雨なら外にも出られず行き場がない。
せめて窓際の席であることが救いだ。
四方を人に囲まれているのは居心地が悪くて落ち着かない。
この窓ガラスみたいに心が無であればいい。
雨があたっても何も感じない。
無機質で透明なものであれば尚良いと思う。
そうすればこの四角い空間が死ぬほど退屈でも、なんとも感じないから。
偏狭で、馬鹿みたいに騒々しく幼稚。
何を見て、何が楽しくて、あんなに無邪気なんだろう。
……感情の心電図は概ねフラット。
実年齢からすれば、とっくに死亡宣告済みの生きているだけのゾンビ状態。
桑山奏、18歳は、箸が転がるだけでも笑える、アオハル群青時代を日々淡々と、無味無情に過ごしていた。
……日常が当たり前ではなくなり、
彼らと出会うまでは。