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第1話「秘めたる能力」

夜がすっかり更けた頃、街の灯りがひとつ残らず消えた頃、全身を闇に包んだような男が深い夜の中へと姿を消したのを、空に輝く月すらも見ていなかった。


―――ある朝

「おはよう。」「おはよう。」と、いつもと同じ道を通っていつもと同じ人たちに朝の挨拶をされる。

そしてなんにも代わり映えしない一日が始まることに憂鬱を感じながら、学校へと向かう。


「小平静」これが俺の名前だ。女みてぇな名前だってのは自分が1番思ってることだから言わなくていい。

そんなことより問題なのは、毎日なんもなくてつまらねぇってことだ。

昨日までは夏休みだったから、その気持ちも薄れていたんだが…今日から新学期が始まっちまう。そうなったらまたつまんねぇ毎日を過ごさなきゃなんねぇのがたまんなく憂鬱なんだよ…


と、そんな風に悩んでいるさなかだった。俺がそいつと出会ったのは。


??「おい。そこのお前。」


そいつはいきなり初対面のはずの俺になんとも無礼な感じで声をかけてきた。


??「お前、心のなかに『お前しか持っていない何か』を持っておるな?


「誰にも理解されない、教えることが出来ない何かを秘めておるな?」


そいつは真っ黒なローブみてぇなものを頭からすっぽり被ってやがってよ、フードからは真っ白な髪を覗かせていた。まるで魔女みてぇな見た目をしてやがったんだ。

はじめはスルーしてやろうと思ったぜ?でもよ、こいつには俺をこのなんもねぇ毎日から引きずりだしてくれる何かがあると思ったんだよ。

だから、話だけでも聞いてやろうとおもったのさ。


静「あんたよぉ。他人に話を聞いてもらうにはよぉ、まず自分が名乗るってのが『礼儀』ってもんじゃねぇのか?」


??「これは失敬。儂の名はカルタ。お前は占いを信じるタチか?」


静「占いだと?」


「そんな下らねぇことの為に俺を呼び止めたってのかよ?」


カルタ「そうじゃ。儂は世界の各地を転々として道行く人間共の観察をしているんじゃ。」


なんか胡散臭え野郎だが…だからってなんで俺なんかに声をかけたんだ?全く見えてこねぇな。


カルタ「そして儂はお前の中に何か秘められたものを、特異な何かを見たのじゃ。だから声をかけた。」


こいつ…心でも読んでるみてぇに…


カルタ「心でも読んでるみたいだったかな?」


静「なっっ!お前!本当に心が読めるってのかよ?!」


カルタ「いかにも。儂は心が読める。そいつの本質を見る能力を持っておるんじゃ。」


「そして儂が持つ能力と同じような何かをお前も持っているという訳じゃ。」


静「俺が?」


「俺がなんか特殊能力を持ってるって言ったのか?」


「そんなんあったらよぉ!こんなつまんねぇ毎日送ってねぇぜ!胡散臭えと思っていたがやっぱりそうか!このペテンババアが!」


カルタ「ペテンババアぁ?儂は詐欺師でもババアでもないわ!このたわけぇ!」


そいつがフードを取ると喋り方には似つかない中学生ぐらいのガキがいた。だがどっちみち嘘つき野郎ってことには変わりねぇぜ畜生!


カルタ「お前はどうやら自分では気づいていないようだが、特異な能力を持っておる。儂には分かる。そして証明できる!」


そう言うとそいつは立ち上がった。そしてそいつの足元!足元の影が形を変えて本みてぇな物が浮かび上がってきたんだ。


カルタ「これが儂の能力!『神のみぞ知る(ピークノート)』じゃ!」


「やはり見えておるようじゃな。これが見えると言うことはお前にも何か能力が宿っておるはずじゃ。」


静「でも待てよ。俺は今までの人生においてそんな風になったことはねぇ!本当に俺にもお前の本みてぇなやつがあんのかよ!」


カルタ「まあ、本みてぇとは限らんがな…どれ、こっちに来てみろ。儂がお前の能力がどんなものか見てやろう。」


俺はそいつに言われるがままそいつが座っていた妙な占い机に向かい合って座った。するとそいつは虫眼鏡で俺の顔を見始めた。


静「虫眼鏡でそんなにジロジロみて、何が分かるってんだよ。俺は虫や雑草じゃねぇんだぞ。」


カルタ「黙っておれ。いちいちやかましい奴じゃのう。そして分かったぞ、お前の能力…」


静「本当かぁ?俺が分かってねぇのにお前が虫眼鏡で覗いたくらいで分かってたまるかよ。」


カルタ「どうやらお前は既にその能力を発動させておるようじゃ。」


静「はぁ?嘘こくのも大概にしろよな。」


カルタ「嘘などではない。そしてお前の能力は…簡単に言うと『何も起こさせない能力』じゃ!」


静「なにも起こさせない能力…だと?!」


「じゃあ俺が最近ずっとなんもなくてつまんねぇのもその能力とやらのせいってことか!?」


カルタ「お前が退屈かどうかは知らんが、おそらくそうかも知れんな。だが普通は能力ってのはずっと発動してられる程簡単なものじゃないぞ。つまりお前はちいとばかり異常ってわけじゃな。」


静「おい!カルタとか言ったな…オメー。どうやったらこいつを解除出来るんだよ!教えやがれ!!」


カルタ「さっき儂がやったように能力を具現化させるんじゃ。そうすればお前の異常な能力も…自分の思い通りに操れるようになる!」


そうして俺はその日学校にがっつり遅刻、皆勤賞狙ってたのによぉ…。だが、俺のつまんねぇ毎日とはおさらば出来そうだぜ。

そんでカルタとかいうヤツだが…どうやら日本に来る時にほぼ金を使い果たしたらしく、俺の能力の稽古をつけるだとか言って俺のアパートに居候している。訳あって家族は居ないし、俺も能力とやらをさっさと解除したいんで、win-winってことで居座らせてやってるってワケだ。


続く…


――登場人物――


静:ごく普通の高校2年生。自分でも分かっていない能力に目覚めていたことが発覚。少々口が悪い。


能力名:???

能力:なにも起こさせない能力


カルタ:世界を転々としているらしい占い師。今は静の家で居候をしているが、静が五月蝿いので、家賃を払うためにコンビニでバイトを始めた。少女の見た目だが、本当の年齢は神のみぞ知る…


能力名:神のみぞ知る(ピークノート)

能力:本質を見る能力。何かのレンズ越しに他人を見ることで、見たものが心の奥底に秘めた変えられない本質をみることができる。

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