【番外編】長き夜の女神の戯れ3
「レンさん、ご馳走さまでした。どうもありがとう」
「こっちこそ、一緒に来てくれてありがとう」
「次に出掛けた時は私が沢山ごちそうするからね」
「期待してます」
店の外に出ると、先程より人が増えているようだった。おそらく皆夕食を終えて、賑やかな街に繰り出しているのだろう。
今夜の祭は女神を楽しませるという名目があるので、女性を連れている男性側がご馳走をするということが多い。必ずしも決まっているものではないが、風習的なものとして一般的に広まっている。レンドルフもその風習に従って、先程のレストランの支払いは全て彼が受け持っていた。
「どこか行きたい場所はある?」
「そうねえ…ちょっと上の方に行ってみたい。高いところから見下ろした風景が綺麗、って聞いたから」
「分かった。でも疲れたらいつでも言ってくれる?運んで行くから」
「それはさすがに恥ずかしいから!」
子供連れでも多ければそこに紛れることもあるだろうが、今夜は大人だけが参加出来る祭なので抱きかかえられたら目立って仕方がない。さすがに冗談だろうが、レンドルフはユリくらいならいつでも抵抗なく運びそうなので一応釘を刺しておいた。
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緩い坂道を手を繋ぎながら登って行くと、商店が立ち並ぶ一角が途切れてその先は公園になっている付近まで来た。低い山が丸ごと公園になっているようなものなので、どちらかと言うとピクニックコースという感じだった。公園内にも沢山のランタンが下げられていて、多少人は少なくなったもののやはり上の方から街を見たい者はそれなりにいて、皆公園の奥へと続く坂道を登って行く。
その公園の入口に、小さな屋台のような、テントのようなものがあった。周辺には店もなく他の屋台もない。そこは食べ物や飲み物を売っているような様子ではないので、その前を人々はただ通り過ぎるだけだった。
「占い…?」
「あのテント?」
「うん。小さいけど『占い』って看板が出てる」
「随分変わったところで店を開いてるんだな」
ユリは一瞬だけ足を止めてテントの方に顔を向けた。すると、テントの中にいた人物がちょうど顔を上げたので、バッチリ視線が合ってしまった。
「おや、お二人さん。ちょっと寄って行かないかい?」
テントの中にいたのは、群青色の髪のふっくらとした感じの人の良さそうな老女だった。そして目の合ってしまったユリに向かって、ニコニコと手招きしている。
「あ…ええと」
「いやあ、場所が悪くて誰も来てくれないんでね。ちょっと移動しようと思ってたんだよ。験直しに占わせてもらえんかねえ。タダでいいよ」
少し困ったようにユリはレンドルフを見上げた。相手の占い師は、テントを設置している場所は怪しいが、人物自体は普通の優しそうな老女にしか見えない。返答を迷っているユリに代わって、レンドルフが少し彼女の前に出て老女の前に立つ。
「ではお願いします。でもちゃんと代金は支払わせてください」
「いやいや、そりゃ悪いよ」
「今日は女神様の祭です。女性に負担をさせるのは良くないですから」
そう言ってレンドルフが懐から財布を取り出し銀貨を差し出すと、老女は何度か瞬きをした後にカラカラと愉快そうに笑った。
「おやまあ、久々に女性扱いされたもんだからビックリしちまったよぉ。じゃあ、ありがたくお代はいただこうかね」
老女は大切そうに銀貨を受け取って懐にしまうと、テントの中から小さな椅子を引っ張り出して来たので、レンドルフが慌てて手を貸す。そして言われるままにテントの外に椅子を二つ並べ、更にその正面に一つ置いて、ちょうど三角形のような配置にした。
「あんたじゃ中には入れんからねえ」
老女はレンドルフに礼を言いながら、三角形の頂点の位置に置いた椅子にゆっくりを腰を下ろした。
「レンさん。大丈夫なの?」
「一応危害は加えて来なさそうだし、何か放っておくのもどうかと思って。不安ならユリさんは俺の後ろに隠れてて」
「でも、目が合ったのは私だし」
「大丈夫だよ。魅了とか混乱とかを無効にする魔道具は身に付けてる」
「それは私も付けてるから」
相手に聞こえないようにレンドルフとユリは相談して、折角なので占ってもらうことにした。普段ならば立ち寄ることはないが、祭なのでこんなことがあってもいいだろうと思ったのだ。
老女に促されるまま、レンドルフとユリは並んで椅子に座る。正面に相対した彼女は、纏っているローブの中から白い杖のような物を取り出し、自分の顔の前で捧げ持つように持ち上げた。
「さぁて、何か占って欲しいものはあるかね?」
「あー…」
「ええと…」
「何だい、恋愛運とかじゃないのかい」
特に何も考えてなかった二人が口ごもって、互いの顔を窺うように視線を交差させると、老女は少し残念な口調で溜息を吐いた。
「じゃあ、全体運でも占おうかね。それでいいかい?」
「はい」
「お願いします」
老女は、ふ…と笑顔を消して、両手に持った杖を向き合った。何か魔力を流しているのか、その白い杖が柔らかい光を帯びる。その光は不思議な温かさを感じさせ、見ているとまるで何か柔らかい布にでも包まれたような感覚になった。
「……これはまた」
老女がそう呟くと、杖の光が消えた。時間にすればほんの一瞬だったのだろうが、レンドルフとユリはハッと夢から醒めたかのように我に返って瞬きをした。そして、いつの間にか互いの手を繋いでいたことに気付いて、慌てて離して自分の膝の上に戻す。その様子を見て老女が少し笑ったのか、彼女の目尻の皺が深くなった。
「お前さん達、どっちも異性運がちょいとばかしマイナスだねえ」
「…マイナス」
「でもマイナスを掛け合わせればプラスに転じる。決して悪い出会いじゃないよ」
そう言いながら老女の乾いた手がサラサラと杖を撫でた。杖の向こうから真っ直ぐに見つめて来る彼女の金色の目に、レンドルフはどこか落ち着かないような気分になった。
「互いに傷を舐め合うようじゃマイナスが重なってより落ちるだけ。だが、一歩踏み出して螺旋に乗れば」
彼女は杖を上に向けて、くるくると渦を描いてみせた。
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『螺旋は同じところを幾度も巡るように見えて、更に上に向かっている。近道ではない。が、必ず、ではある』
不意に、目の前にいた老女の姿が、臈長けた美女の姿に転じる。纏めてあった群青色の髪が夜空に溶け、金の目は月と星になる。その姿は、神殿などの壁画に描かれている女神フォーリの姿そのものだった。
『糸は脆い。が、繋がり、絡み、螺旋を紡ぐことで切れぬ縁となる。やがて螺旋は大きくなり、天を駆ける竜にも成ろう』
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パシリ
老女が杖を軽く手の平に打ち付け、乾いた音が鳴った。
「お前さんがたの縁は悪くないよ。ま、仲良くおやんなさい」
レンドルフとユリは、一瞬ポカンとしたように目の前の老女を眺めた。彼女は先程と変わらぬ様子で杖を持ってニコニコと笑っていた。
「他には何かあるかい?今ならサービスしておくよ」
「…あ、い、いえ。俺は大丈夫です」
「私も…ありがとう、ございました」
レンドルフとユリは、何か言われたような気がしたのだが、それが何だったのか思い出せなかった。
「ああ、そっちのお嬢さん」
「は、はい?」
「アンタが持ってる一番強い武器は、まだ使わん方がいい」
「武器、ですか」
「時が来れば分かる。頭でなく、ここ、での」
老女はそう言いながら手にした杖で、ユリの胸の辺りを示した。
「あとは、失せ物は出て来るが、諦めた方がいい。変なモノが付いとるからの。そっちの彼氏さんにねだって新しいの、買ってもらいなされ」
「は、はあ…」
よく分からない占い結果だったが、ひとまず二人は礼を言ってその場を辞することにした。
何か奇妙な感覚が頭の奥にこびり付いているようだったが、それが何なのか説明がつかなかった。レンドルフもユリも、互いにその感覚を有しているのだが、それが自分だけなのではと思って言い出せずにいた。言ったところで上手く説明出来る自信もなかったのだ。
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何となく気まずいような気持ちのまま、二人は手を繋いでしばらく無言でゆっくりと公園の中を散策した。
「…何か、さっきの占い、それっぽいけど、結局普通のことを言われただけのような気がするのよね」
「ユリさんの武器とか?」
「あんまり心当たり無いんだけど。あと、失せ物とかも特にないし」
「何か俺に買って欲しいものとかある?」
「その心当たりもないし!」
建物の明かりがなくなったせいか、公園内は思ったよりも暗く感じた。けれど、無数に付けられたピンク色のランタンが闇の中で輝き、より一層幻想的な光景に見せていた。
「こういうお祭に出てる占いだし。芝居の一場面を見せてもらった、って感じでいいんじゃないかな」
「…そう、ね。うん、お祭だしね」
「それに信じるなら、『縁は悪くない』ってとこだけ受けとこうよ」
「……『仲良く』だっけ?」
「…うん」
どちらともなく、互いの手にほんの少し力が籠った。
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突然、周囲に張り詰めたような気配が走った。
物理的な衝撃があった訳ではないが、強いて言うならいきなり空気が固くなったような感覚だった。
「ぐっ…!」
「レンさん!?」
それと同時に、レンドルフが口元を押さえてガクリと膝をついた。
「レンさん、髪…!」
周囲はピンク色のランタンの光に包まれているので分かりにくいが、明らかにレンドルフの顔から血の気が引いていた。しかしそんな状況でも、反射的にレンドルフはユリを守るように周囲を見回しながら彼女の小さな体を背に庇うような体勢を取る。
変装の魔道具に異変が生じたのか、レンドルフの栗色にしていた髪色が、本来の薄紅色に戻っていた。
(魔道具が、停止した…!)
ユリは自分の腕に装着している魔道具を服越しに触れた。いつもなら指先に微かに稼動している魔力の流れを感じるのだが、今はそれが全く感じられなかった。特殊魔力を持つユリは、魔力遮断の魔道具を付けていないと強い魔力を持つ者に悪影響を与えてしまう。おそらくレンドルフが崩れ落ちたのも、自分の魔力の影響だろうと気が付いた。
そしてそれと同時に、自分も使っている変装の魔道具も停止していることにも気付いてしまった。
「ユリさん、急いでここから離れて」
「駄目…!」
わざわざ確認しなくても、胸元に掛かっている髪の黒い色が視界の端にも映っていない。今振り返られてしまったら、レンドルフにこの国では忌避されている「死に戻りの色」を隠していたことが発覚してしまう。しかし、ユリが止めるよりも早く、レンドルフは膝を付いたままの姿勢で振り返り、ユリに顔を向けた。
「ユリさん…?」
ユリの魔力の影響で、相当気分が悪くなっているであろう冷や汗の滲む辛そうな表情のレンドルフが見上げて来る。ユリは絶望的な気持ちでレンドルフの顔を眺めてその場から動けなくなってしまった。
が、ほんの一瞬、辛そうな様子でありながらレンドルフの口角が上がった。その顔は、どう見ても微笑んでいるようにしか見えない。ユリは思いもよらない表情を向けられて、レンドルフに向かって口を開きかけた。
『……シー…』
「っ!」
『ユ…シーズ…』
振り返ったレンドルフの後方で、何か黒い物が蠢いていた。周囲はランタンの光で照らされているのに、そこだけが闇が凝っている。その闇の中から、ズルリと人型のナニかが這いずり出て来て、ユラリと立ち上がってゆっくりとこちらに向かって来ていた。
『ユリ…シーズ…』
ハッキリと姿は見えなくても、ユリにはそれが何者であるかすぐに分かった。そしてソレは、ニチャリ…と音がしそうな気配をさせて笑っている。それが肌感覚で嫌でも分かってしまい、ユリは足元からゾワリと悪寒が走るのを感じた。
『やはりお前は××××××××××××!』
「ヒッ!」
突如ひび割れたような声でソレが叫び、甲高い声で哄笑した。耳を覆いたくなるような耳障りな音だったが、ユリの体は凍り付いたように指先一つ動かすことが出来なかった。喉の奥で張り付いた悲鳴が、僅かに空気を吸う音となって漏れる。
ソレはジワリ、と近付いて来る。決して速い動きではないのだが、ユリは動くことが出来ずに、ただ少しずつ視界の中で大きくなって行くソレを見続けるだけだった。気持ちの上では逃げなければと警鐘が鳴っているのだが、足が全く動こうとしない。ソレが発する禍々しい空気が、直接触れられているかのような不快感を伴いはじめて、ユリの足元がグラリと揺れた。
「ユリさん!!」
突然、何か温かいものに包まれたかと思った瞬間、急に視界が開けた。そのまま地面に引きずり込まれるような感覚に囚われていたのに、それとは真逆にフワリと体が浮かび上がった。
一瞬で我に返ると、ユリはレンドルフに高く抱きかかえられている状態だということを理解した。そして彼の広い肩越しに蠢いているソレは、ユリの視界の下の方でひどく醜く矮小に映った。
「失せろ!」
ユリを両手で抱きかかえているので、レンドルフは側まで近付いて来ていたソレに向かって回し蹴りを繰り出した。レンドルフの鋭い蹴りは、ちょうどソレの首の辺りにまともに入り、人のものとは違う濁った悲鳴を上げて吹き飛んで行った。
次の瞬間、周囲でパリンと何かが砕けるような音がして、フッと空気が軽くなった気がした。そしてユリの腕に装着している魔道具が微かに魔力を流し始めたのを感じた。
「今のは…幻覚…?」
レンドルフに抱えられたまま少しだけ周囲を見回すと、何人もその場で座り込んだり、周辺をキョロキョロ見回していた。さっきまでレンドルフしかいないような感覚になっていたが、思ったよりも周囲に祭の参加者がいたようだ。
「あれ、ハーピー、かな」
「え?」
レンドルフは自分が蹴り飛ばした先に、羽根を持つ異形の姿が倒れているのを少しだけ目を細めて確認した。
ハーピーは、人に似た顔を有しているが体は鳥に近い姿をした魔獣だ。そこまで強い力はないが、群れで行動するのと幻覚魔法を使用して来るのでかなり厄介な部類に入る種族である。基本的に幻覚魔法は、見せられる側が最も大切に思っている存在の姿になる為、分かっていても攻撃がし辛いことで有名だ。
ハーピーは翼を広げると2メートルくらいが一般的な大きさだが、向こうで倒れているのはそれよりも大分小ぶりに見えた。そして羽根の色は白かグレーなのだが、その個体は良く言えば虹色、どちらかと言うと油膜のような気味の悪い色をしていた。
「もう絶命してるみたいだし、ちょっと確認して来るからユリさんはここにいて」
「え、あの」
レンドルフは抱えているユリをそっと地面に降ろしたのだが、彼女は足に力が入らなくてクラリとよろけてしまう。慌ててレンドルフが抱え直す。
「ごめんね。ちょっと足に力が入らなくて」
「大丈夫?無理しないでいいから」
再度抱きかかえたユリは、厚手のコート越しでも体が震えているのがはっきり分かった。そしてランタンの明かりの下でも分かる程彼女の顔色は悪い。片手で抱きかかえて、レンドルフは空いた手の方でユリの背中を軽くさすると、彼女は大きく息を吐いてレンドルフの肩に顔を埋めるようにして体を預けて来た。
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「みなさん!ご無事ですか!」
声のした方に顔を向けると、警邏隊の制服を着た者と、冒険者風の出で立ちの者が数人走って来た。誰かが通報をしたのか、エイスの街のように魔獣を感知する魔道具でも設置してあったのか、彼らは手に武器を携えていて、魔獣を討伐する為に駆け付けたようだった。
「怪我人がいたら教えてください!回復薬を持って来ています」
鞄を抱えた冒険者が大きな声で呼びかけた。幸い大怪我をしている者はいないようだが、転んだ時に擦りむいたり、足を挫いた者は数名いたようだった。
ユリは体調が悪そうではあるが、怪我をした訳ではない。心配そうに冒険者から回復薬を勧められたが、このような場合には回復薬は効果はないのでレンドルフは丁重に辞退した。
その場に居合わせてしまった祭の参加者は安全の為に一カ所に集められ、数名の警邏隊の者が護衛に付いていた。簡単な事情聴取の後、安全が確認され次第公園から退去してもらうことなどを説明される。
しかしその集められた一般市民な参加者の中に、明らかに騎士にしか見えないレンドルフが混じっていたので、何となく奇妙な光景になっていた。とは言え、レンドルフはまだユリを抱えているので、こうして護衛が付いてくれるのはありがたかった。
「あの…あちらの魔獣は貴方が倒したと伺いましたが」
「はい」
どうやら出没した魔獣はレンドルフが蹴り倒した個体だけらしかったが、念の為と駆け付けた彼らが周辺を警戒して回っていた。そして息を切らせながら少し遅れてやって来たギルド職員が、怪我人や被害の状況などを確認していた。
その時に、誰かがレンドルフが魔獣を蹴倒したのを見ていた者がいたらしい。年若い男性のギルド職員に話しかけられて確認されたので、レンドルフは素直に頷いた。
「これからギルドで詳しいお話を聞かせていただいてもよろしいでしょうか?差し支えなければご身分も…」
「連れの体調が思わしくないので、後日改めていただけますか。冒険者登録をしていますので、こちらで確認を」
レンドルフはユリを抱えたまま、片手で懐からギルドカードを取り出した。男性職員は恭しくカードを受け取ると、腰に下げていた魔道具にカードを翳した。
「はい、確認いたしました。それでは後日改めて調書作成の為にお話を伺いますので、ご都合の良い日をご連絡下さい」
「よろしくお願いします」
「こちらこそ。お嬢さん、お大事になさってください」
しばらくすると安全は確認されたということで解放されたので、レンドルフはユリを抱えてその場を離れることにした。最初よりは大分治まっているとは言え彼女の体はまだ小刻みに震えていて、レンドルフの肩に顔を埋めたまま、しがみつくような体勢で離れようとしなかった。コートの襟を握り絞める小さな手には力が入っているのか、手元の生地の皺が固く深い。
「ユリさん、今日はもう帰ろう」
「…ごめんなさい」
「また来ればいいよ。絶対休みをもぎ取ってみせるから」
「……うん」
小柄な彼女を抱えることはレンドルフにとっては負担ですらなかったが、密着している彼女からフワリと甘い香りが漂って来るので、別の意味で色々と大変だった。
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公園の入口に向かうと、安全の為に通行止めになっていて、ここまで足を運んだ参加者達が残念そうな顔をして引き返していた。街中に戻る彼らの流れに混じりながら、レンドルフは公園入口の脇をチラリと確認したが、占いのテントは見当たらなかった。もう賑やかな場所へ移動したのだろう。
そのまま街中を抜けて、街の門まで歩きながら何となく気になって注視していたが、あの時の老女のテントは結局見つけられなかったのだった。