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閑話.タマキ・ホシノ

ハリの産みの母の過去エピソードです。


この国では珍しい白い髪は「まるで老婆のようだ」と陰で言う者もいたが、そう言っているのはほぼ自分よりも容姿も気品も家格も劣っている者ばかりだった。ただの負け惜しみ、とタマキは広げた扇の下で嘲笑いながら、細いがメリハリのある肢体を見せつけるが如く人々の間を優雅に泳ぐように渡って行く。


「お兄様」

「ああ、タマキか。踊らないのか?」

「ええ。わたくしの目に適う方は見当たらないようですわ」


幾人か声を掛けられたが、タマキからすると口を利くのも鬱陶しいような令息ばかりだったので、曖昧な笑みだけを浮かべて躱していた。そして少し人の輪から離れていたすぐ上の兄ヘリオトの隣に立った。タマキより四歳年上の次兄は白に近いプラチナブロンドをしていて、華やかな容姿と相まって二人が並ぶと光り輝いているような印象になる。


その二人が見つめる先には、夜会の会場の中でも一際華やかな集団がいた。むしろ華やかを通り越して、目にも耳にも品のない煩さを感じさせた


その集団は、今をときめく高位貴族の令息が多く集っていた。それも特に見目の良い者ばかりで、彼らがそこに集まっているせいで、ダンスのパートナーにあぶれる令嬢がそこかしこに散見された。


その華やかな集団の中心に埋もれるように、まるで花が咲いたかのような濃いピンク色の髪が見え隠れしている。令息達が取り囲むようにしているのではっきりと姿は確認出来ないが、その特徴的な派手な色を持つ者はそう多くない。その髪色を持つのはこの夜会の主宰者であるトーカ侯爵家の末娘で、小柄で鮮やかな緑色の大きな瞳の愛くるしい顔立ちであるのに、肉付きの良い体付きでとかく目を惹く存在だった。そしてその令嬢の気を惹こうと、夜会で多くの令息達が彼女の周囲に侍るように取り囲むことがここ最近よく見かける光景だった。


彼らの談笑する姿に眉を顰める年配者も多いが、トーカ家は数代前に王女が降嫁している王家の血縁であるし、国内でも有数の資産家でもあるので、いくら陰で囁いても負け惜しみにしか聞こえないだろう。それにタマキや次兄が距離を取って眺めているのは、その集団の中心に近い場所にホシノ家の嫡男の姿を認識しているからだった。


ホシノ侯爵家の後継でもある長兄は、以前から熱心にトーカ侯爵令嬢に婚約の打診をしていた。家格も釣り合い、互いの家同士の利もあるとして選ばれてもおかしくはないのだが、トーカ家はなかなか色よい返事を寄越すことはなく、のらりくらりと先延ばしにしていた。トーカ家、というよりその令嬢がまるで長兄の惚れた弱みに付け込んでいるかのように、他の令息達と競わせては翻弄していた。

タマキなどはさっさと見切りを付ければいいと思っているのだが、一度遠回しに忠告したところ「愛らしい彼女に嫉妬している」と決めつけられて話にならなかった。


「いい加減、お父様も諦めればよろしいのに」

「父上には父上なりのお考えがあるのだろうさ」


もう貴族令息としては適齢期の終盤に差し掛かっているのに、未だに父の侯爵は長兄のトーカ家との縁談を諦めようとはしていない。それだけトーカ家との繋がりは政略的な旨味があるのは分からなくもないが、そのせいで下の二人の婚約に影響が出ているのだ。特にヘリオトは、長兄が令嬢を射止められなかった場合の次の彼女の候補者として他家の打診すら受けないままにされていた。さすがにタマキは内々の候補は数人いるが、それでも正式に婚約を結んでいる訳ではない。

もともと本来はタマキがトーカ家の嫡男の婚約者にどうかと連れて行かれた顔合わせの場で、同行していた長兄が令嬢に一目惚れをしたのが切っ掛けだった。ホシノ家としてはトーカ家との繋がりが出来れば相手は誰でも良かったので、そのままタマキとの話は流れた。実のところ、タマキもトーカ家嫡男に淡い恋心を抱いたのだが、その後長兄を通じてトーカ家は末娘の令嬢を溺愛していて何を於いても彼女を優先するところを目の当たりにして、婚約を結ばなくて良かったと心底思ったのだった。



「タマキ様、こちらにおられましたの」


どうしようもない苛立ちを誤摩化すようにヘリオトと並んでワイングラスを手に取った時、背後からおっとりとした声が聞こえて来た。こんな風に無防備に声を掛けて来るのは一人しかいないのだが、タマキは振り返って顔を確認して初めて気付いたような表情を作った。そうやって一拍置かないと、内心の苛立ちがそのまま顔に出てしまいそうになるからだ。

タマキの後ろには、ふんわりとした癖毛のピンクブロンドに薄緑の瞳をした淡い色合いの令嬢が立っていた。小柄でぽっちゃりした令嬢は、まるでトーカ侯爵令嬢を薄ぼんやりと滲ませたような印象を与えた。


「まあ、エリカ嬢、お久しぶりね」

「エリカ嬢、今宵もお美しい。優しい色合いのドレスがよくお似合いです」

「ま、まあ、わたくしったらご挨拶もしないで…こんばんは、ヘリオト様」


彼女、エリカ・ラッセルは、彼らの幼馴染みの伯爵令嬢だ。母親同士が親友だったのと娘同士が同い年だったこともあって、幼い頃から交流があった。おっとりした性格の可愛らしい令嬢と言えば聞こえはいいが、どちらかというと気が利かない愚鈍な女と周囲での評価はあまり高くない。令息達の間ではそこが庇護欲をそそると一部では人気があるが、同性からはやんわりと交流を避けられている。タマキも母の取りなしがなければ彼女の言動の端々に苛立たされるので疎遠になりたいところだが、何故かエリカは昔からタマキに懐いているので仕方なく交流を続けているのだ。

それにエリカのことはヘリオトが気に入っているらしいというのも、タマキを苛立たせる要因の一つだった。


タマキはその苛立ちはおくびにも出さず、その場はエリカと他愛のない会話を交わして、さして実りのない夜会から帰宅したのだった。



そしてそれから数日後、トーカ家の嫡男とエリカの婚約が発表され、社交界をざわめかせたのだった。


それから半年程経って、タマキの婚約もようやく正式に結ばれた。どうやら父の侯爵は、兄二人だけでなくタマキもまだトーカ家との政略の一手として考えていたらしい。だが、嫡男の婚約は調い、それも一応ホシノ家とも縁戚ということもあってようやくタマキの嫁ぎ先を決めたらしかった。


タマキの婚約者は幾人かいた候補者の一人で、資産家の伯爵家の嫡男だった。その伯爵家ならば嫁いでも苦労することはないという親心から選ばれたものだったのかもしれないが、タマキは地味な見目の令息に対して何の感情も抱かなかった。ただ粛々と貴族令嬢の義務として縁談を受け入れた。タマキが高く評価していたのは、彼がトーカ侯爵令嬢に侍っていた中にいなかったことくらいだ。


ただ少しばかり、自分よりも格下だったエリカと自分の立場が、嫁いだ後は逆転することは不満に思っていた。見た目は好みであったが、何でも妹優先にして締まりのない笑みを妹に向けるトーカ侯爵令息への気持ちはとうに霧散していたが、それでも微かにタマキの心に落ちた染みは確実に心を曇らせていたのだった。


婚約者の伯爵令息は美しいタマキを姫君のように丁重に扱い、多くの贈り物で彼女を飾り立てた。夜会では常に付き従い自ら世話を焼くような惚れ込みようで、タマキも満更ではないと絆されるようになっていた頃、彼女の全てを揺るがすような大事件が起こった。



トーカ家が禁術と言われる方法を用いて、王座の簒奪を目論んだ。その内容は、類似の事件を起こさないようにと固く秘匿され、トーカ家の一族郎党がほぼ即日処刑された。何も知らないような末端の分家から、幼い子供まで一切の例外はなかった。そしてトーカ家の計画に関わっていたとして、ホシノ侯爵と息子二人も処罰対象となった。タマキも母も寝耳に水で、何が起こっているのか理解が出来なかった。呆然とする二人に、次兄ヘリオトだけが何度も謝罪していたのは覚えている。後になってタマキは何となくヘリオトだけは巻き込まれただけか、父と長兄を止めようとしていたのではないかと思い当たったが、それに気付いたのは彼もこの世を去って大分経ってからのことだった。


ホシノ家は血の繋がりはなかったことから、何も知らなかったであろうタマキが家を継ぐことを許された。しかしそれでも罪は罪として、領地の半分は没収されて爵位も子爵位に落とされた。そして互いに家を継ぐ立場になったとして、タマキの婚約も解消された。もっとも、重罪人を出した家として後継にならなくてもタマキの破談は確定していただろう。

そして王家への忠誠を試されるかのように、王家から最も遠い立場にあるアスクレティ大公家の末端の分家から婿を迎えるようにと王命が下されたのだった。



「タマキ様、どうぞお楽になさって」

「お気遣いありがとうございます、シオシャ公爵夫人」

「昔のようにエリカ、と呼んでくださいませ」

「そうは参りません。私は…子爵家の者です。本来ならばお目にかかれるような身ではございません」

「そんな…」


タマキの目の前には、かつてトーカ家の嫡男と婚約を結んでいたエリカが微笑んでいた。あの頃はぼんやりとした色合いにもかかわらず淡い色のドレスばかりを好んでいたせいか野暮ったさの抜けない田舎貴族のようだった彼女が、今は多くの使用人にかしずかれて品の良いドレスや宝飾品に身を包んだ、洗練された貴婦人へと変貌していた。


トーカ家の嫡男と婚約をしていたエリカも、本来ならばそのまま連座で罰を受けてもおかしくない立場であった。だがトーカ家の反逆が明るみに出る直前に彼女の婚約は白紙になり、入れ替るようにシオシャ家から望まれて新たな婚約を結んでいた為に何らお咎めも受けずに済んだのだった。トーカ家よりも家格の高いシオシャ公爵家の当主が半ば奪い取るように横槍を入れたと言われていて、エリカは強運の持ち主としてしばらく時の人になっていたのだ。

公爵家当主のコールイはエリカよりも10歳以上年上の貴族と言うよりも騎士寄りの気質で、背は高くないが分厚い体躯と口数の少ない無骨な男で、まさか人の婚約者を家の力で奪い取るような情熱を持っているとは誰も思っていなかった。しかし結婚してからというもの社交に出ることはなく、同盟国の内戦や反乱を沈める為に友軍として陣頭指揮を執る役割を進んで担っては異国に赴いてばかりで、殆ど国内にいなかったのだ。留守を守るのは新たに公爵夫人になったエリカではなく、優秀な家令を始めとする部下達が執り行い、エリカは真綿で守られるように社交にも出ずに屋敷で優雅に暮らしているともっぱらの噂だった。


「旦那様はわたくしの好きにしていいとおっしゃっているの。殆ど帰れぬから、せめて寂しい思いをしないように、と。だからタマキ様も我が家に来るのは遠慮なさることはないのよ」

「…ありがとう、ございます」


相変わらず少女のようにおっとりと微笑むエリカに、タマキは声を震わせて顔を伏せた。少し離れたところにいる使用人達の目には、どのような立場になっても変わらず接しようとするエリカにタマキが感極まっているのだと映った。


「本当言うとね、こんなに広いお屋敷に一人だととても寂しいの。せめて子供でもいれば、と思うのだけれど。タマキ様にはご嫡男がいて羨ましいわ」


ギリッ…


タマキは無意識のうちに手にした扇子を握り締めていた。


今の自分は、後継教育を詰め込まれてどうにか体裁を整えただけの子爵家当主だ。まだ婿入りした令息が役に立てば良かったのだが、いざ婿入りしてから彼は多くの女性と浮名を流して自堕落に振る舞う実家でもお荷物令息だったことが判明した。所詮は当主が王家に歯向かった罪人の家には違いないので、まるで刑罰のように結ばされた縁組みだったのだ。それでも貴族としての矜持がタマキを支えていたのだが、ほとぼりが過ぎた頃だろうと呼び出された公爵家で、苦労知らずで美しく着飾ったエリカが自分は不幸だと言いたげな話をしながら溜息を吐く。そのことがひたすらにタマキの苛立ちの琴線に触れた。いや、触れるどころかどこかが切れてしまった気がした。



その日、タマキはどうやって公爵家から帰宅したかはよく覚えていない。しかし安い女物の香水を身に纏わせている顔も見たくもない夫に珍しく話掛けたのは覚えている。


「領地の方で問題が起きたそうですから、私は当分領地の方で暮らしますわ。ああ、でも()()のシオシャ公爵夫人が閣下がいないことが寂しいから話し相手になってくれと頼まれたばかりだったの。ああ、残念だわ…」


その時の夫は、どんな顔をしていたのか分からなかった。ただタマキはそれだけを言い残して、翌日逃げるように単身領地へと向かったのだった。



その後タマキは王都から離れた領地に引きこもり、王都での話題は殆ど耳にする機会はなかった。当初は領政は上手く行かず、不便で娯楽のない土地に気が狂いそうな程鬱屈して行ったが、しばらくして元婚約者が訪ねて来た。領地が隣り合わせだったこともあり、タマキがいるのを知って来てくれたのだった。


かつては淡々と義務として接していた相手だったが、時を置いて再会すると元婚約者の優しさや気配りが心地好く、今更ながら大切な人は誰だったのかを思い知って、逃した魚の大きさを実感したのだった。


元婚約者も今は別の相手を妻に迎えて後継も産まれているが、妻とは気が合わないとことあるごとに口にしていた。最初は互いの伴侶に対する愚痴を零し合う友人として付き合っていたが、やがてかつてのように近しい間柄になり、更に一線を越えた関係になるのに時間は掛からなかった。


やがてタマキが元婚約者の子を身籠ると、その子をホシノ家の後継に据えようと王都に戻って夫との子だと思わせるように小細工までした。愛情も感じられない長男より、真実愛する相手との子は腹の中にいる頃から全て違っていた。しかしそのことに夫は気付いていたのか、産婆に金を握らせて、産まれたばかりの子を別の貴族家の嫡男として連れて行ってしまった。出産後で朦朧としていたタマキが気を取り戻した頃には、愛しい相手との子は既に聞いたこともない下位貴族の息子として届けが出されていた。

タマキはまだベッドから起き上がれない中で夫に猛抗議をしたが、彼に王命で結ばされた婚姻相手とは違う相手の子を後継に据える行為は王家への反逆だ、と言われて言い返すことが出来なかった。それに王命でなくても、互いの不貞の子を身籠ること自体が罪だと分からないのか、と呆れたように告げられてしまった。

タマキからすればあちこちで浮名を流す夫に、どの口がそう言うか、と思ったのだが、夫が相手にするのは独身であったり未亡人であったりする女性ばかりで、気を付けているのか婚外子が出来たという話は一切なかった。


普段は政務など何もしない夫にしては手慣れているので、彼があちこちで遊び歩いている中で何度か同じようなことをしているのではないかと疑ったものの、タマキには何もすることは出来なかった。その後タマキは夫を呪いながらもすごすごと領地に戻って、それから夫の前には、たとえ葬儀であっても二度と顔を見せなかった。



数年後に夫が亡くなり、更に数年経って嫡男の成人と同時に家督を譲ったタマキは、隣の領境付近に屋敷を建てて元婚約者との関係を続けた。その様子はまるで本当の夫婦のようで、周囲の領民もそのように思っていた。そのまま穏やかな日々が続くと思われたが、タマキがまさかの三度目の懐妊が発覚した。


タマキは奪われた二番目の息子の代わりに、今度こそこの子を後継に据えると主張したが、元婚約者は今まで見たことがない程冷ややかな目でタマキを見つめた。


「もう君の夫が亡くなっているのに後継に?冗談じゃない」

「まだ長男のところには子供はいないわ。前に私がされたように、この子を長男夫婦の子として届けを出せば」

「止めてくれ!そんなことをしたら私にまで飛び火して迷惑がかかる!」

「め、迷惑ですって…!?」

「そうだ!前の子は君に夫の子だと誤摩化したから産ませてもらったんだろ。しかしそれでも疑わしいとして他家に出したんじゃないか」

「え…」

「はっ!知らなかったのか。わざわざ王家が、下位貴族に何の為に王命まで出して婚姻を結ばせたのかも分かっていなかったと?ははは、どれだけ愚かな女だったのか」



王家とアスクレティ家は、友誼の為に血の交わりをしないと誓い合ったと表向きは言われているが、実際は血の呪いと知っている貴族は多い。大半は文献に残すような危険は冒さず、嫡男にのみ口伝えで言い聞かされる。王家とアスクレティ家の血を引く者同士は、決して子を成すことはない、と。

アスクレティ家の本家や筆頭分家、近しい縁戚などは大貴族であるので政略の縁を望む家門も多い。だが、末端の下位貴族の縁組みに王家が仲介するというのは、それは決してこの先中央で関わるような活躍も出来なければ、その後子々孫々縁組みに苦労するということが確定したようなものだ。王家の血統は広くこの国に存在し、時折平民の中にもその血筋を示す者が現れる程だ。それに高位貴族の大半はどこかしらに王家の血が入っている。つまりアスクレティ家の血が入った時点で、次代の縁組みに苦労するということに他ならない。

そして周囲も王家に睨まれるような真似をした家門と認識するので、大抵の家は次の代かその次の代で血が途絶え、全く別の家が継ぐことになる。直接的に家を取り潰せば遺恨が残るが、こうすれば責任の所在をぼんやりさせたまま穏便に家を絶やすことが出来る。


それはこの国の王家がいつしか作り上げた、家門断絶の刑罰なのだ。



「もう私が君と会うことはない。君の懐妊が知られる前に、縁を切ったことにすれば私だけはどうとでもなるだろうさ」

「そんな…!私を一番愛していると言ってくれたではないですか!」


追いすがるタマキを一瞥すると、長年寄り添って来たと思っていた元婚約者は無言で出て行ってしまった。



残されたタマキがどうなったかは、その日の夜に起こった不審火で暮らしていた屋敷が全焼してしまった為に記録には残されていなかった。



お読みいただきありがとうございます!


本当はエリカ側からのエピソードも入れる予定でしたが、ひたすら長くなったのでそちらはもう少し本編が進んでからにします。

ホシノ家に入った婿は、もともと自分の血筋が罰ゲームのような縁談に使われるのは知っていたので、敢えて選ばれないように遊び歩いていました。が、遊び人の才能があったのか、本当に遊び人になってしまったという残念な人です。

一応タマキを気の毒に思って最初は誠実になろうとしていたのですが、タマキ自身が頑なに彼を受け入れなかったので次第に慣れた方に流されて夫婦関係は破綻しました。それでも次男ごとタマキが消されないようにあくまでも自分の子だと見張っていた王家の影には言い張り、他家に出すことで辛うじて妻子の命を繋いだ功労者でもあります。彼なりにタマキには愛情はあったのですが、全く伝わっていなかったというやはり残念な人なのです。


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