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221.見合いの結果と奇妙な新人騎士


レンドルフの休暇の半分を使って行われたノルドの見合いは、大成功までとは行かないがまずまずの将来的な手応えを感じて終了となった。


ノルドが一目惚れをした年上の魔馬(シャクヤ)は、面食いの気質があるようでノルドよりも何故かレンドルフの方をいたく気に入ったらしく、ノルドは弟判定、つまり恋愛対象外として認識されてしまった。そこでレンドルフに恨みを向けないでただしょげているのがノルドらしいところであるが、レンドルフが姿を現すとどんなに遠くに居てもシャクヤが擦り寄ってアピールして来るのでどうにもレンドルフが気まずかった。


そのシャクヤと一緒に娘のギンセンカという魔馬も来ていたのだが、彼女はノルドを兄か友人枠で気に入ったらしく、よくノルドにじゃれ付くように遊びを仕掛けていた。ノルドも楽しげに並んで走り回ったりはしていたが、まだギンセンカは幼い個体なので、繁殖可能になったら変わるかもしれないということで様子見となった。


そして人間側で大本命の純血のスレイプニルのカンナは、少しでも気に入らない雄がいると攻撃を仕掛けて視界から消えるまで噛み付いて追い払うらしいのだが、ノルドは近寄ると追い払う仕草はするが同じ馬場に居る分には許容されたようだった。カンナを担当している厩舎番は、「カンナがこんなにも気に入るなんて…!」と少々引くくらいの滂沱の涙を流していたので、余程普段の対応が塩を通り越して激辛なのだろう。

ノルドの方はカンナに対しては、クロヴァス家タウンハウスにいる他のスレイプニルと同じ感覚なのか、特に意識した様子はない。ただの同族の隣人的な感覚なのだろうか。しかし互いに嫌っている風でもないので、これは機会を見て見合いを重ねて行こうという方針で両家がまとまったのだった。


実は前回の見合いではもう一頭、ツイナという魔馬がいたのだが、この魔馬は血の繋がりはないがシャクヤに育てられたも同然なのでシャクヤを母親同然に慕っていた。そしてシャクヤに色目(?)を使うレンドルフを気に入らないらしく、すっかり敵認定されていたのだ。本気になればレンドルフも負けることはないのだろうが、互いに無傷では済まないだろうということで今回はツイナは別の場所に隔離されていたので姿を見ることはなかった。レンドルフとしても、種族を越えた三角関係に巻き込まれて蹴られるのは遠慮したい。



「今回はありがとうございました」

「こちらこそ何日もお世話になりました」

「いいえ。何かありましたらいつでも我が家をご利用ください。レン様では通常の宿ではなかなかゆっくり出来ませんでしょう?」

「…その通り過ぎてお恥ずかしいです」

「父で慣れていますから。本当にその際はご遠慮なくいらしてください。父も喜びます」

「お心遣い感謝します」


レンドルフと同じくらいの体格のテンマも、通常の宿ではまず寝具から足がはみ出す。バスタブがあっても足を伸ばせるどころか下手をしたら尻が嵌まって抜けなくなる可能性もあるのでシャワーだけで済ませることが大半だ。そして鏡を見るのも、ドアをくぐる時でさえ気を配らねばならないという規格外なのだ。服や靴も、何かあってもすぐに補充出来ないので予備を持参することは忘れないため、必然的に大荷物になると言う宿命である。


そのテンマが前当主だったミダース家は、彼が過ごしやすいように全体的に大きく作られている。跡を息子に譲った今は、生活しやすいように通常サイズに変更されているが、そもそもの出入口や照明の位置などはそのままであるし、何かあった時にテンマが不自由がないように一部の家具などはそのまま残されている。そういう意味ではほぼ同サイズのレンドルフが来ても完璧に対応出来るのだ。


「休みが取れましたらなるべく同行いたしますが、どうしても遠征などと重なった場合は家の者を寄越しますので、よろしくお願いします」

「はい。こちらこそよろしくお願いします」


トーマと挨拶を交わしていると、隣の屋敷の方からテンマが車椅子に乗ってやって来ているのが見えた。テンマは数ヶ月前に大怪我をして手足の一部を喪い、魔動義肢でリバビリ中だった筈だ。杖は付いていたもののそれなりに歩けていたので、急に車椅子姿を目にして一瞬レンドルフの背中をヒヤリとしたものが走る。


「いや、すまない。義足の方の具合が悪くてな」

「大丈夫ですか?無理に来られなくても…」

「本当に大丈夫なんだ。ただ、ちょっと今朝から義足の方の魔石を変えたら出力が上手く行かなくなってな」

「大事じゃないですか」

「いや、むしろ今気付いて良かった。ユリ嬢には後で礼状も出すが、レンくんからも礼を伝えてくれるか」

「ユリさん、ですか?」


テンマが言うには、ユリのアドバイスに従ってすぐにエリザベスには胎児の潜在属性を調べてもらい、テンマが使用している魔動義肢の魔石との相性などを詳しく調べてもらったそうだ。その際に、胎児には潜在魔力ではなく聖魔法の属性が強いということが判明したのだった。最初に検査をしてもらった際はまだ発現していなかったが、成長とともに強く現れたらしい。産まれてから後天的に属性が変化することは殆どないのだが、胎児の時点では稀にあるということだ。

テンマの発現している属性魔法は闇属性で、胎児の聖魔法とは反発する属性だ。テンマ自身はそこまで強い魔力ではないのだが、胎児の方は非常に珍しいほど強い魔力を有しているそうだ。テンマの闇属性は魔石自体が少ないのと他の魔道具に使用される為に義肢用に使用出来るものがなく、幾つかの魔石を組み合わせて義肢の動力に使用していたのだが、それが胎児との相性があまり良くなかったらしい。その為、テンマが近くにいると反発していたので母体のエリザベスに影響が出ていたことが今朝判明したらしい。

そしてそれが判明すると、テンマは即座に魔石を影響のないものに変更したということだった。それは今までのリハビリをゼロからやり直しをすることになるのだが、そこに一切の迷いは感じさせなかった。


「一度調べていたから安心して再検査を思い付かなかったからな。おかげで神殿の方で色々と準備してくれることになった」

「それは良かったです。ユリさんにも伝えておきます。きっと安心すると思いますよ」


神殿は聖魔法の使い手が多く神官を務めている。出産に際して子と同じ属性魔法の者がいた方が万一に備えて対処がしやすいと言われているので、神殿で準備をしてくれるなら安心だろう。


「危うくリズの側にもいられず、下手をしたら生まれた子に拒否される可能性もあったからな。ユリ嬢にはいくら感謝しても足りないな」

「それも伝えますね。また近いうちにご連絡しますが、どうか皆様ご健勝で」

「ありがとう。リズは来られないが、よろしく言っていたよ」

「お気持ちだけで十分です」



レンドルフは連れて来てもらったノルドに騎乗すると、ミダース家を後にした。荷物の大半は配送をしてくれるということだったので、随分と身軽だ。


「お前、ミダース家でちやほやされて少し太ったんじゃないか?わっ!」


何となく走る音が重そうに聞こえたので思わず呟くと、ノルドは少々不満だったらしくわざと足並みを乱した。勿論慣れたレンドルフはその程度で落ちるようなことはないが、妙なところで話は通じるものだと思わず苦笑していた。


「悪かったな。でも、ユリさんが乗ってる時は絶対にするなよ」


レンドルフがノルドの背でそう呟くと、まるで「する訳ないだろ」と返事をするようにノルドは一度大きく鼻を鳴らしたのだった。



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ショーキが食堂でオムレツのチーズを増量してもらってホクホクしながら寮の部屋に引き返す途中、共有の談話室で四人の騎士達がカードゲームで盛り上がっていた。隊は違うようだが仲が良さそうなので、研修で同期だったのかもしれない。その中に第四騎士団所属の者もいた。その彼がショーキに気付いて、軽く手を振って来た。


「おー、ショーキ、お前今休暇だよな」

「そうだけど」

「じゃあ一緒にカードやらねえ?もう一人くらいいた方が盛り上がるんだ」

「いいけど。何か賭けてる?」

「明日の朝食のベーコン」

「それ、僕じゃ賭けになんないんだけど」


リス系獣人のショーキは、肉は食べられなくはないがそこまで好まない。決まったメニューなどで出されれば食べるが、自分から選べるなら別の物をチョイスする。しかし基本的に騎士達は肉好きが多いので、ベーコンも立派な賭けの対象になるのだろう。


「じゃあショーキが勝ったら好きなモン分けてやるよ」

「そう言って嫌いなサラダとか押し付ける気じゃないの〜?」

「まあ気にするなって!」


否定もしない彼らにショーキは苦笑しながらも、カードゲームは嫌いではないので参加することにした。隊が違うとあまり話すことはないが、お互いに顔くらいは知っている。確か二人は第二騎士団に所属していた筈だ。そして一人だけ知らない顔の騎士がいたが、年の頃はあまり変わらないようだった。


「ああ、こいつは先月入寮したばっかりだから。確かショーキは遠征に行ってた時じゃないか?」

「そうだね。どうも、ショーキです。第四所属です」

「…アイル、です。まだ、見習い、です」

「ええと、上階?」

「はい…」

「大丈夫。こいつはあんまりそういうの気にしないって」


アイルと名乗った騎士は茶褐色の肌に淡い金髪のヒョロリとした体格で、座ったままなので分からないがショーキより背は高そうだが体重は軽そうに見えた。騎士と言うよりも魔法士と言った方が通りそうだ。大抵騎士団に入る者は、貴族は学園を卒業すると同時で、それ以外の平民などは年中受け付けてはいるが、新人を受け入れるのはまとまっていた方が指導がしやすいということで、見習い期間の終了を揃えることである程度一斉に入団させる。しかし色々な事情で時折妙な期間に入団する者もいる。このアイルは何らかの事情で入団したクチだろうと誰もが推測出来るが、それは当人が話さない限り聞かないことにするのが不文律として存在している。



王城騎士団の寮は入口や共通エリアなどが繋がっているが、中では各団ごとで分かれていて、更に細かいことを言うと貴族と平民で階が分けられているのだ。空きが無い場合などは多少変わるが、基本的に貴族出身者は上階に配置され、多少日当りが悪い下の階は平民が入る。昔は出身に関わらず空いた部屋から入寮させていたのだが、平民と同じ扱いをされたくない貴族も一部には存在するので、それが原因で上階の平民騎士に嫌がらせなどが横行していたことがあった。そこで仕方なく階を分けたそうだ。そういったことから、今は互いの寮生の部屋の行き来は申請がないと基本的に出来ないことになっている。

アイルは、騎士の割に鍛えていない印象を受けたのもそうだが、この国では珍しい褐色な肌だが日焼けしているというようには見えなかったので、貴族出身かと思ったのだ。そしてその予想は外れていなかった。基本的に実力主義と言われている騎士団だが、やはり身分差は存在する。特に平民出身でこの国では少々肩身が狭い獣人のショーキは色々と気に留めなければならないことが存外多いのだ。



「母が異国の商家の出の第二夫人なので、僕は貴族の教育はあまり受けてませんから。気にせず仲良くしてくれたら嬉しいです」

「僕はリス系獣人で平民出身。気にしないでいいなら遠慮なく接するから、よろしく」


アイルからおずおずと右手を差し出されて、ショーキは笑ってその手を掴んだ。正面から顔を見ると、アイルの目はかなり色素の薄い水色をしていた。顔立ちは整っていてこの国の基準でいっても美形の部類に入るだろう。しかしクセなのか分からないが、笑うと少し眉が下がるので何だか困った表情に見える。


「?」

「あの…どうかしましたか?」

「あ、ああ…静電気かな。ちょっとピリッとした」

「すみません…」

「いや、アイルのせいじゃないし」


握手をしたほんの一瞬、ショーキは僅かに違和感を覚えた。それが顔に出てしまったのか、動きを止めたショーキにアイルは怪訝そうな顔を向ける。ショーキはその違和感が何なのか分からず、その場は静電気と言って誤摩化すことにしたのだった。

そしてショーキは配られたカードを手にすると、あまりにも悪い手札に内心絶望しながらも悟られないようにニヤリと強気の笑い顔を作ったのだった。



カードゲームは何戦かして、ショーキは二位になった。一応ベーコンの権利はあるが、別にそこまで食べたいわけではないので放棄した。そのまま誰かが部屋からワインを持って来て、そのまま軽い酒宴へとなだれ込んだ。ショーキは完全休暇であるし、アイルは見習いなので違うが、他の三名はいざ何かあった際に駆り出される待機休暇の筈なので、ショーキは大丈夫かと心配になった。


「いーのいーの。薄めて飲むし。それにあと一時間で終了だし」

「それならあと一時間だけ我慢しておけって…」


同隊の騎士は酒豪なのを知っているが、他の二人はそこまで詳しくは知らない。彼は飲むつもりだったらしいが、他の二人はショーキの苦言に従う様子だったので、結局あと一時間はジュースで我慢しようということになった。しかし、それと関係のないショーキとアイルには普通にトプリとワインが注がれる。


「僕、あまりお酒は…」

「そーなの?じゃあジュースにしておきなよ。そこの保冷庫の中なら好きに飲んでいいし。あ、でも名前を書いてあるのは避けた方がいいよ」

「はい、そうします」


談話室には大型の保冷庫が設置してあって、交替で来る寮母達が中にお茶や飲み物を補充してくれる。その中は自由に飲んで良いのだが、時折先輩などが自室ではなくここに個人の物を入れることがある。本来は共有の保冷庫の中に入れた時点で所有権は無くなるのだが、名前が書いてあると何となく手が出し辛いのでなし崩しにその個人の物として認識されている。とは言え、あまりにも長い間だったり、量が多くなると、寮母に回収されて部屋の前に置いて行かれる。


「僕もジュースにしよっと」

「別にショーキはいいだろ」

「僕一人にワイン飲ませて、何か探ろうっての?その手には乗らないよ」

「ははは、バレたか」


ほとんど年齢も変わらないので、こんな冗談を言うくらいには気安い。先程のカードゲームで距離が縮まったtこともあるだろう。慣れ合うのは良くないが、違う団員同士で仲を深め合うのはむしろ推奨されている。一応役割は各団ごとに分けられているが、人手が足りない時や大規模な任務の際には合同で出ることもあるのだ。仲が良くて悪いことはない。



「アイルは先月入寮ってことは、基礎鍛錬中?キツくない?」

「あー…ええと、僕は、別の領地で魔法騎士をしていたので。一年くらいでしたけど。なので、今はどちらかと言うと応用とか連携とか…」

「へえ〜。魔法騎士!格好良いな!」


王城の騎士団には、魔法も使えるがどちらかと言うと力や剣技などを主にした者が騎士になる。そして魔法が得意な者は魔法師団が別組織であるのでそちらに入団することが多い為、魔法騎士という職種は王城ではいない。しかし地方の領地になると、規模や人手の関係もありどちらもこなす魔法騎士という職種が存在するのだ。


「僕は、どちらも少し使える程度なので、全然…」

「それでも王城(ウチ)の入団試験に合格してるんだから、問題ないだろ」

「…だと、いいんですけど」


アイルはそう言ってまた自信のなさそうな笑みを浮かべた。当人は貴族の教育を受けていないと言っていたが、ショーキの目には随分と所作は綺麗なものに見えた。よく考えたらショーキは自分の所属する部隊は貴族ばかりだと気付いた。そのせいで、今まで何となくだった貴族の所作と平民の所作の差がはっきり分かるようになっていたのだ。同じ第四騎士団の騎士は平民出身で、第二騎士団の二人の内一人は確か男爵家の四男だった。もっとも下位貴族の末端な男爵家で自由奔放に育ったとチラリと聞いたことがあるが、今のショーキには彼の所作の一つ一つが平民とは違うと見分けられた。

それを根底に考えると、アイルはもっと上の貴族の出身のように思えた。そうなると、当人の評価よりもずっと魔力も高いのではないだろうか。


一瞬探るような考えに至って、ショーキはハッとして軽く頭を振った。

他領で魔法騎士をしていたのに妙な時期に一人入団したのは、色々と複雑な事情があってのことなのは簡単に予想がつく。当人が言わない以上触れないことにするのが暗黙の了解だ。もし問題があるなら、上層部が把握していない筈がないので、入団自体が認められない筈だ。色々あっても騎士団に入ることに問題がないと判断された為に今ここにいるのだ。周囲がとやかくいうことではない。


「騎士団にも魔法がすごい方もたくさんいるんでしょう?僕程度じゃ自慢にならないです」

「そうか?俺達はちょっとは使えるけど、魔法はからきしだぜ。あ、ショーキは色々使えたよな」

「それなりに細かいのは使えるけど、攻撃とかは全然。索敵とか補助くらいだよ」

「同じ部隊の先輩がすごいんじゃなかったっけ?ほら、近衛騎士団でやらかして異動して来た…」

「レンドルフ・クロヴァス先輩な!」


レンドルフの名が挙がって、ショーキは誰にも分からない程度にほんの僅かに眉間に皺を寄せた。同じ部隊で接することが多いということもあるが、未だにレンドルフに付いて回る不名誉な噂を耳にする度にショーキは不愉快な気持ちを抱いていた。レンドルフ自身も語りはしないし、色々と面倒な誓約があるのだろう。公には「騎士として任務に支障を来す失態をした」とだけ通達が来て、近衛騎士団副団長から第四騎士団の平騎士に降格になった。そしてそれにまつわる不名誉な噂も広まっていたが、レンドルフはそれを知っていてもただ時折困ったように微笑むだけで放置している。

ショーキは第四騎士団にレンドルフが配属になってすぐに組むようになって同じ部隊になったが、噂のような不誠実な人間ではないことは十分分かっている。

その誤解を解いて欲しいとショーキは思っているが、多くの思惑が絡んでいる以上それはレンドルフ本人も困らせるだけなのだろう。それも分かるだけに、ショーキはこういった場に遭遇するともどかしい気持ちになるのだ。


「クロヴァス卿…ですか」


アイルが少し低めの声で呟く。その自信のなさそうな笑顔に少し翳りが生じている。


「あれ?アイル知ってるの?」

「ええ…その方、婚約者などは?」

「いるって聞いたことはないけど。ショーキは知ってる?」

「うん。いないって言ってた」

「どうしたんだよ、アイル。調子でも悪いのか?」


レンドルフの名を聞いた瞬間からガラリと雰囲気の変わったアイルに、他の騎士達も気付いて心配そうに声をかける。ショーキはその顔を黙って探るように見つめた。彼の薄い笑顔が、特に変容したようには見えないがショーキの目にはひどく薄気味悪いものに映った。そしてこの自分の勘は正しいとこれまでの経験で知っている。


(こいつはただの騎士見習いじゃない…)



「僕の婚約者…いえ、元婚約者が、クロヴァス卿に奪われたんです…」



ここのところ平和なほのぼの回が続きましたが、少々不穏が仕事を始めます。

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