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176.積み重なる思い出


鳥のいるエリアから少し歩くと、少し大きな池のような場所に出た。やはり気温が高めのせいか、水は緑色をしている。近くに寄って覗き込むと水自体は透き通っていて、水底に隙間なく生えた藻のせいで緑色に見えるのだと分かった。その池の向う側で、体は鶏くらいの大きさだが黒い色をした足が細くて長く、美しい紅色の羽根を持つ鳥が佇んでいた。クチバシは細身で大分尖っていて、足と同じ黒い色をしている。少しだけ湾曲した形状のクチバシで水辺に佇むようにしているということは、魚を補食する鳥なのだろうか。

ユリに尋ねてみると、感心したように頷いた。


「あれ見るの初めてでしょ。ミズホ国の特に稀少な固有種だから。それなのに分かるのってすごい」

「似たようなクチバシの魔獣がいたから、そうかな、と」

「それでも観察眼がすごいって。あの鳥は魔獣じゃないけど、小魚とかエビとか獲って食べるの。クロガネヒイロって名前の鳥なの」

「クロガネヒイロ…初めて聞いた」

「クチバシの色で種が違ってて、あれは黒いから「黒鉄(クロガネ)」白いのは「白金(シロガネ)」っていうの。それで、シロガネは本当に希少種だから、国外には絶対出してくれないのよね。でも何年も色々と取り引きして、ようやくクロガネの方を迎えることが出来たの。でもクロガネも結構な希少種だから」

「そんなにすごい鳥なんだね」

「美しさもあるけど、羽根にすごい防御魔法が掛かってるっていうのも昔から偉い人が使いたがる理由なの」

「面白いな。そんな鳥もいるんだね」


魔獣は個体差は大きいが、どれも魔力を有している。そして体内にその魔力の元である魔石を持っているのが特徴だ。しかし魔獣ではない生物も魔力を持っていて、魔獣との大きな差は体内に魔石を持つか否かだ。基本的に魔力は魔獣の方が多いのだが、時折魔獣ではないのに魔力が強い種類も存在するので、クロガネヒイロはその珍しいものなのだろう。


ミズホ国ではヒイロ科の鳥の羽根は瑞兆の証として、皇族が慶事の時だけに羽根から作った織物を纏うという伝統がある。ヒイロ科の鳥の羽根は非常に繊細で、織物に使える部分はほんの僅かだ。そしてその羽根の生地は軽く、絹よりも複雑な虹色に輝くため、別名「彩雲の言祝(ことほ)ぎ」と言われている。そしてその羽根に掛かっている強力な防御魔法は、織物になっても効果が衰えることはない。その中でも最も防御力が高いシロガネヒイロの織物は皇王と皇妃、皇太子のみが纏える。


「だから乱獲されて数が減っちゃったんだけどね。今はミズホ国で完全に保護して、数を増やそうとしてる。それで先に数の増えたクロガネヒイロを繁殖の条件を満たした国に貸し出してるの」

「貸し出し?」

「うん。ミズホ国だけで保護し続けるには莫大な資金が必要だから、番を何組か貸し出して、繁殖に成功したら生まれた半数はその国のものになるって契約を結んで他国にも協力してもらってるの。そして返した雛と同数の違う個体をまた貸してくれる仕組みになってるのね」

「ああ、血が濃くなり過ぎるのを防ぐ為か」


緑色の水面に、紅色の羽根は良く目立っていた。どこかに隠れているのかもしれないが、水辺には四羽のクロガネヒイロの姿が見える。どれも美しい色だが、個体によって随分と色味が違う。あれだと色が一定の織物を作るのは確かに難しいだろうな、とレンドルフは眺めながら思っていた。


「そう言えばここは二階なんだよね?そこに池があるのは不思議な感じだな」

「もともと丘の上にあった人工沼で、長らく放置されてたからその上に温室を建てた、って聞いたよ」


鳥の生息地は保護されているのか、池の半分は人が立ち入れないようになっている。反対側の遊歩道のようになっている途中に、屋根の付いたベンチがあるのでそこでゆったりと池を眺めることにした。


「今日は天気が悪くて良かったね。晴れてたら大分暑かったと思うよ」

「そうか。じゃあ雨に感謝しなくちゃだな。あ、一番感謝するのはユリさんだよ」

「そんなこと…たまたま予約が取れただけで…」

「ユリさんのおかげで美味しいものを食べたり、珍しいものを見られたり出来たんだよ。もっと威張ってもいいと思うけど」

「そんなこと…」


ここは急遽レストランと偽ってたった一晩で準備してくれた場所で、誇るべきは大公家の使用人達なので、ユリは何となく後ろめたい。



「ええと、レンさんは、休みは明日までだよね?明日の予定とかは決まってるの?」

「ギルドに行って、昇格試験受ける予定。もう申込もしてあるよ」

「受けることにしたんだ」


レンドルフは以前エイスの副ギルド長に、上位ランクの資格だけ取って実際のランクは上げないままに出来る制度があると教えてもらっていた。現在レンドルフはDランクで、指名依頼はCランク以上からという決まりがある為、ランクを上げるつもりはなかった。ユリはCランクの冒険者なので指名依頼を受けることが出来るが、パーティを組んでいる冒険者に個人の指名依頼を受けてもらうにはパーティリーダーの許可が必要になっている。ユリに限らず、女性単身の指名依頼は悪質な目的で依頼を出すことが多いので、レンドルフはユリとパーティを組んでリーダーを務めることで防波堤替わりになっているのだ。特にレンドルフが指名依頼を受けられないランクだと、それを通り過ぎてメンバーに依頼を出すのはトラブルになりやすいとされて、最初の時点でかなりふるい落とせるメリットがあった。

レンドルフは本業は騎士であるし、ユリも薬師見習いでも回復薬などをギルドの納品したりなどで別に稼ぎ口がある為、冒険者として指名依頼などに拘る必要もなかった。


「うん。と言っても、本当にランクを上げるつもりはないよ。ただ、いつでも何かあった時の為に、手持ちのカードは多い方がいいかと思って」

「そうなんだ…でもレンさんはいいの?もし私に気を遣ってランク上げないとかなら構わず上げていいんだからね」

「俺も指名依頼は色々面倒になりそうだから、このままでいいと思ってるんだ。ほら、一応本業は騎士だし」

「一応って…」


レンドルフの言い方に、ユリは少しだけ苦笑する。


「レンさん、最初に会った時とちょっと感じ変わったね」

「え?そうかな…どんな感じに?」

「んーと…最初はもう、絶対に騎士!って感じだったんだけど」

「ああ…あの時…」

「もう見るからに『騎士です!』って感じ」

「そうか…」


最近は確かに何をしても騎士に見られやすいとは自覚していたが、あの時はまだ平民に紛れられていると思っていた頃なので、どうにもならないのだが気恥ずかしくなって来る。


「だけど今は…」

「今は?」

「騎士…なんだけど、絶対って感じじゃないって言うか…ん?やっぱり騎士?何て言ったらいいんだろう…騎士以外あり得ない、って感じじゃなくなった?」

「そっか…」

「んー…語彙力出て来い…」


ユリが顎に手を当てて難しい顔で考え込んでしまったのだが、その横顔を見ながらレンドルフは何だか嬉しくなってつい笑みが浮かんで来る。レンドルフも、ユリと出会うまでは自分の中で騎士の立場で隙間なく埋め尽くされていて、他に選択肢がなかった。しかし何気なくユリに勧められた冒険者登録から、レンドルフの世界が広がったおかげで、心にも余裕ができたような気がしていたのだ。ユリが悩んでいるように、騎士かと問われれば「騎士である」と答えるのは間違いないが、それでも気持ちの在り方が確実に変化している。


「ありがとう。何となく伝わった気がするから、そんなに悩まなくていいよ」

「うう…スッキリしない」


ユリが未だに眉間に皺を寄せていると、パシャリと音がして遠くの水面で波紋が広がった。


「魚もいるんだ」

「あの鳥の食べる用だから、釣りは出来ないよ」

「それは残念。今度はちゃんと魚も釣れるところもユリさんに証明したかったのに」


以前に湖に釣りに行った時に、何故かレンドルフは貝ばかりを釣り上げていた。レンドルフは冗談めかして大仰に肩を竦めてみせた。


「…ここ、貝もいるよ」

「ああ、それだとまた俺の貝釣りの腕前が上がってしまう」


レンドルフの妙に芝居がかった言い方に、ユリは思わず吹き出してしまう。それに釣られてレンドルフも声を上げて笑った。その向こう岸で、美しい紅色の鳥が丸い真っ黒な目を彼らに向けて、不思議そうに首を傾げて見ていたのだった。



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しばらく経つとさすがにレンドルフが暑くなって来たので、下の階に戻ることにした。来た時とは違う場所にも階段があったので、今度はそちらから降りて行く。


「レンさん、ここから外に出られるよ!」


階段は温室の壁沿いに設置されていて、途中にベランダのようになっている場所があってそこから外に出られる仕組みになっていた。ユリがヒョイと温室のガラス戸を開けると外側に開いて、そこからフワリと外気が入り込んで、少々火照ったレンドルフの頬には心地好かった。温室は天井が高いので、二階の途中でも十分高さがあってかなり遠方まで見渡せた。外に設置されているベランダの上にはせり出した屋根が付いていたので、外は雨でも殆ど防がれているので濡れることはなかった。少しだけ風の方向で霧のような粒が当たる程度だ。


「ユリさんは寒くない?」

「大丈夫!今日はあんまり遠くまで見えないねえ」


そこまで風は強くないが、緩くまとめいているユリの髪が生き物のようにうねって顔に貼り付くので、軽く押さえながら少しだけ背伸びをして遠くを眺めた。このベランダの向いている方向は貴族達の別荘地があり、森という程ではないがそれなりに緑が豊かだ。木々の間から、大きな建物の屋根が垣間見える。そして更に向こうには緑というよりも黒に近い森が広がっている。雨で白く霞んでいるのでハッキリとした境目は分からないが、それでも近くの木々とは一線を画した色合いなのは確認出来た。


「こうして高いところにいると、千年樹を上ったのを思い出すな」

「ふふ…私も同じこと思ってた」


少し強い風が吹き付けて来たのでレンドルフは風避けになる位置に回り込むと、ユリはすぐに気付いてレンドルフの手を引っ張ってすぐに中に入った。


「レンさん、濡れてない?」

「少しだからすぐに乾くよ。ユリさんこそ冷えてない?」

「私もすぐに乾くから平気」


ユリの手はいつもレンドルフよりひんやりしているので、通常なのか冷えているのかが少し分かりにくい。彼女の黒髪に細かい水の粒が付いていたので、そっと手で払う。まるで宝飾品のようにも見えたので少々勿体無いと思いつつも、元は水なのだから早めに払ってしまうに限る。


「下に着いたら、何か温かいものでも頼む?」

「そうね。レンさんは冷たいものの方がいいんじゃない」

「そうだね」


少しだけレンドルフが先に下に降りるようにして、ユリをエスコートするかのように手を取った。レンドルフの大きく少しだけ固い手の平と指先触れる剣ダコの感触にすっかり慣れたユリは、確かな温かさと安心感に包まれるのを改めて感じるのだった。



広く入り組んでいる温室の中は目を飽きさせることはなく、ユリから植生の話を教えてもらったり、花の四阿のようになっている場所に設置されたソファでレンドルフの故郷の話や魔獣討伐の話をユリが前のめりに聞いたりしながら一日を過ごし、いつの間にか日が暮れて温室の中は明かりが灯っていた。



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「ディナーの準備が整いましたので、ご案内致します」


ランタンを片手に、支配人役の執事長が二人を迎えに来た。ランチもたっぷり食べた筈なのだが、改めて告げられると空腹になっていることに気付いた。後に着いて行くと、ランチを食べたヤマアンズに囲まれた場所に戻って来た。しかし、黄色みを帯びたランタンが吊り下げられていて、それが白い花弁を柔らかく照らし出して全く違う様相になっていた。敢えて他の場所の明かりを落としているので、まるで木自体が発光しているかのような幻想的な光景だった。


その中でも特に大きな木の側に来ると、簡易の竃が設置されていて、その上に網が置かれている。既に炭も準備されていて、側には様々な食材が串に刺さった状態で並んでいた。


「こちらはご自身でお好きなものを焼いて楽しんでいただくようになっておりますが、ご注文いただければ料理人が代わって調理致します」


レンドルフがユリに尋ねようと横を見ると、既にユリはやる気満々でエプロンと軍手を受け取っていた。思わず口元を緩めてしまったレンドルフだが、ふと隣に立っていた案内してくれた男性を見ると、まるで孫でも見ているような表情でユリを見て笑顔になっていた。が、彼はすぐにレンドルフの視線に気付いたらしくすぐに頭を下げようとしたが、レンドルフは少しだけ首を振ってそれを止めると、お互い何となく通じ合うものを感じて目線だけで微笑み合ったのだった。


「レンさんはどうする?私が焼こうか?」

「じゃあユリさんの分は俺が焼こうかな」

「それ、いい考えね!やろうやろう!」


レンドルフも給仕からエプロンと軍手を受け取った。わざわざ大きめのものを用意してくれたらしく、エプロンも軍手もレンドルフでも装着出来るものだった。ユリは少し結び紐が長かったらしく、踏まないように侍女のエマに調整を手伝ってもらっていた。


ズラリと並んだ串を前に、どれから焼こうか悩んでしまう。ふと見ると網の端の火が遠い場所に、小ぶりの鍋が置かれていた。覗き込むと、とろみのある白いスープのようなものがフツフツと小さな泡を立てて温められている。


「これは?」

「そちらはワインで溶かしたチーズが入っております。野菜などは下茹でしてありますので、少し炙ってからこちらを搦めてお召し上がりください」

「それ美味しそう!これには何がお勧めなの?」

「パンやジャガイモなどが良く合いますが、ベーコンやソーセージなどもよろしいかと思います」


選択肢が増えてしまって、ユリは串の前で難しい顔をして考え込む。食材を選ぶだけなのだが、まるで一世一代の選択をしているような表情に、レンドルフは少しだけ笑いを堪えるのに苦労してしまった。


「もー、レンさんは全種類でも食べられるからいいけど、私の胃袋はそこまでじゃないの!ちゃんと考えて選ばなくちゃならないの!」

「ごめんごめん」


堪えていたつもりがバレていたらしく、ユリからしっかり苦情を受けてしまった。本気で怒っている訳ではないのだが、ちょっと尖らせた口元が可愛らしく、レンドルフは更に笑顔になってしまい、慌てて手で隠した。


「じゃあ、ユリさんは食べたい串を一口だけ齧ればいいよ。残りは俺が食べるから」

「そ、そういうことじゃなくて!」

「さあ、どれがよろしいですか、お嬢様?」

「……その右端の肉と、ジャガイモと、大エビ」


わざと給仕風に恭しく礼を取るレンドルフに、火に照らされている以上に顔を赤くしながらもユリが串を選ぶ。レンドルフはユリに頼んで厚切りのベーコンと皮付きタマネギを網の上に置いてもらった。

焼けるまでの間近くに設置された椅子に座っていると、冷えた飲み物を渡された。既に好みを伝えてくれてあったのか、レンドルフには甘めのシャンパン、ユリにはエールが入ったグラスだ。お互いに特に何も言わずに自然にグラスの縁を合わせる。火の側にいるせいか、火照った顔には冷えた飲み物が嬉しかった。


その後、程良く焼けて表面の脂がジクジクと滲み出ている肉や、表面に香ばしい焼き目を付けてからトロリとしたチーズを絡ませたジャガイモ、皮が真っ黒になるまでじっくりと焼いて中が蕩ける甘さになったタマネギなど、次々と焼き上がって行く食材に二人は舌鼓を打った。大エビは焼き立てを齧って中から汁が溢れ出して、少しだけユリが舌を火傷してしまったのだが、すぐに薄めた回復薬入りの水が渡されていた。おかげで火傷を気にすることなく、どの食材がチーズに合うかを試してみたり、よく焼こうとしていたら焼き過ぎて少々苦味優先になってしまったり、ずっと賑やかな笑いの絶えないディナーになった。


ユリは最初こそは遠慮していたが、やはり色々なものを試したいという好奇心には勝てなかったらしく、レンドルフの言葉に甘えて焼き上がった串を一口だけ貰っていたのだった。



用意された串が半分以上なくなった頃、すっかりユリは満腹になって椅子の上で寛いでいた。椅子の脇に置かれているテーブルには、渋みが強めだが香り高いことで有名なワイナリーの赤ワインが入ったグラスが置かれている。それを少しずつ口に含んでは香りを楽しみつつ、デザートのマシュマロを焼いているレンドルフの火に照らされた真剣な横顔を眺めていた。最初は加減が分からず、火に近付け過ぎてしまって溶けて串から落ちてしまったのだ。あの時のレンドルフの絶望した顔は、悪いとは思いつつもつい思い出すと口角が上がってしまいそうになる。


「よし、焼けた」


程良いタイミングを掴んだのか、火から下ろしたマシュマロをすかさずビスケットで挟んで、素早く串から抜いた。間に挟まったマシュマロは半分溶けるように潰れてトロリとした見た目になっていて、レンドルフは満足そうにユリに見せて来た。


「今度は上手く焼けたよ」

「ふふ、おめでとう、レンさん」


レンドルフはマシュマロサンドを片手に、ユリの隣の椅子に腰を降ろす。そしてユリのグラスの隣に、すかさず回復薬入りの冷たい水が注がれた。

まだ焼き立てで中の方に熱が篭っているので、レンドルフは両手で持って少しずつビスケットに齧り付いている。ビスケットの大きさは普通のものなのだが、レンドルフが持つと幼児のおやつ用に見えてしまう。それをチマチマと齧っている姿をユリは内心「可愛い!可愛い!!」と叫びながら、表では柔らかな微笑みをたたえていた。こんな時は淑女教育に感謝せねばなるまい。



「ユリさん、今日は一日ありがとう。すごく楽しいところを紹介してくれて」

「あ、うん。レンさんが楽しんでくれたなら、良かった」

「中を回ってて、モタクオ湖や千年樹や、植物園とか、果樹園に行ったことを思い出したんだけど」

「うん」

「最近、楽しいこととか嬉しいこととかを思い出すと、必ずその中にユリさんがいるんだ」

「え…」


あまりにもストレートな笑顔を向けられて、ユリは目を瞬かせた。


「俺は、ユリさんとそうやって思い出が増えて行くのが嬉しい。その…ユリさんもそう思ってくれたら…これからも、沢山一緒に楽しめたら…と思うんだけど」

「うん…うん!私も楽しい!だから、これからも一杯会いたいし、出掛けたいし……」

「じゃあ、これからもよろしく」

「よろしく!」


レンドルフはビスケットから片手を離して、エプロンでゴシゴシと拭ってからユリに右手を差し出した。ユリも躊躇うことなく自分の右手を差し出して、レンドルフの大きな手をキュッと握り締めたのだった。



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