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152.遠征前日

いつもお読みいただきありがとうございます。


今回から通常の時間軸に戻ります。


4/18 バングル型の通信の魔道具に付いて、後の展開に矛盾点が発生していたので一部性能を変更しました。


遠征に向かう前日、騎士団から出してもらえる馬車にショーキがせっせと荷物を積み込んでいた。大きな荷物はモノが積み込んでくれていたので、ショーキは隙間に色々と細々した物を乗せていた。こうして必要な物を揃えることは新人の担当だ。どういった場所にどの魔獣討伐に行くかによって必要な物が違って来る。それを学ぶ為に重要な仕事だ。もちろん後から先輩に確認してもらうことになっている。


「ディアマーシュ地区に行くのに馬車二台とは、随分と贅沢なことだな」

「ウチのメンバー見れば分かるでしょ。レンドルフ先輩とモノを一台の馬車に詰める気ですか」

「う…」

「ただ絡みたいだけなら僕だけにしといて下さいよ。もっとも、僕以外の人には怖…いや、僕が可愛いからつい何か言いたくなるのは分かりますけど〜」

「なっ…!」


ショーキが馬車に必要な物を全て積み込んで降りて来ると、待ち構えていたかのように先輩騎士に絡まれた。実のところ、声を掛けるタイミングを計る為に大分前から物陰に潜んでいたのは分かっていたが、重要な遠征用の積み荷の準備を邪魔するところを誰かに見られると反省文五枚以上は確定だ。その為ショーキはわざとゆっくりめに準備をしていた。そのうちに痺れを切らせてどこかに行くことを期待していたのだが、相手は存外辛抱強かったようだ。


ショーキは先日から彼にやたらと絡まれるので最初は鬱陶しいと思っていたが、段々と一周回って面白くなって来ていた。本当は、いつ互いに組まされて遠征に出されるか分からないので、あまり恨みを買うのは良くないのは分かっているが、ショーキはつい沸点の低い先輩騎士を揶揄いたくなってしまうのだ。


「昨日、レンドルフさんが薬局の受付の女性と出掛けたって聞いたんだが、お前、知ってるか」

「んー、まあ何となくは」

「何となく?何だよ、それ」

「いや、実際目にしてないし、聞いてないですし。でもあの受付の女性とは顔見知りみたいでしたし、昨日の夜は外出してたからそうじゃないかなとは思いますけど…そういうのは、向こうから言って来ない限りそっとしとくものじゃないですか?野暮ですよ、野暮」

「う…」

「じゃ、僕はこれからオスカー隊長に確認してもらいますんで〜」


ショーキはにっこり笑ってその場を後にした。彼はまだ何か言いたげだったが、隊長役に任じられているオスカーがこれから来るので、見つかる前に立ち去るだろうとショーキはさっさと呼びに行くことにした。


今回派遣される討伐先は、新人のモノがいる為に通常より人数が多めだ。王都から馬で一日、馬車なら一日半程度の場所であるし、基本的に討伐する魔獣は鹿系中心なので、危険度はそこまで高くない。普段ならば、新人と言う程ではなく中堅と言うにはまだ足りないくらいの経験者三名くらいで組ませることが多い。しかしモノは呪いを制御することを学ぶために、オルトが常に同行して動かなければならない。そしてショーキも初遠征ではないにしろまだ新人の部類だ。その為、今回はベテランのオスカーと、異動したばかりだが討伐経験豊富なレンドルフが参加している。なかなか異例の討伐隊なので、それなりに注目を浴びていた。



「オスカー隊長ー!荷物の確認お願いします」

「ああ、少し待ってくれ。今、剣の付与を待っているんだ」

「分かりました」


オスカーは訓練場にいることが多いのだが、ショーキが訪ねたところ、遠征に備えて武器の調整の為に第五騎士団の管理部に行っていると教えてもらった。

第五騎士団とは通称で、本来は騎士団ではない。元騎士で色々な事情で続けられなくなった者や、入団試験には通らなかったが突出した才を持った者などが所属していて、騎士団を裏から支える重要な役割である為、敬意を表して「第五騎士団」と皆が呼んでいるのだ。


ショーキが武器管理をしている窓口に行くと、教えてもらった通りオスカーがいた。基本的に武器は自分で手入れをするのだが、自分では難しい付与魔法の調整や追加などは専門的な知識を持つ第五騎士団の管理部で頼むのだ。


獣人の能力のせいか、付与魔法が使われている道具とは相性が悪いショーキは、滅多にここに来ることはない。つい物珍し気にあちこちに視線を送る。どんな種類があるか、色々な武器や防具の見本が壁に掛けられているのだ。見本なので付与魔法や魔石などは一切使われておらず、ショーキでも安心して間近で眺めていられる。


「お待たせしました。こちらで如何でしょう」

「うむ。余程気を付けていなければ前と殆ど変わらないな。ショーキ」

「は、はい!」

「すまないが、ちょっとこの剣を持つか、近くに立つかしてもらえるか?」

「僕が持っていいんですか?」


無造作にオスカーから差し出された剣を目の前に、ショーキが目を丸くした。人にもよるが、基本的に騎士は命とも言うべき自分の扱う武器を他者に簡単には預けない。それに、確かオスカーは魔力が少なく魔法も苦手なので、付与魔法に頼ることが多い筈だ。魔法の影響を受けやすいショーキが持つには向いていないことは、オスカーも承知している。その上で渡そうとして来る意図が分からず、ショーキは手を出せずに首を傾げるばかりだった。


「ああ。ショーキと遠征に行くから、剣に掛けてもらっていた付与魔法の上から魔力遮断のコーティングを頼んだんだ。これなら付与効果はあるが、魔力が外に出ない筈だ」

「えっ!?も、もしかして僕のため、ですか?」

「お前とモノは付与魔法の影響を受けやすいと聞いているからな」


確かに近付けられても僅かな魔力しか感じず、恐る恐るショーキは差し出された剣を手に取った。おそらく軽量などの付与が掛かっている筈だが、ショーキの手には随分重く感じられた。


「どうだ?影響はありそうか?」

「…こうして直接触れれば多少クラクラしますけど、隊長が持つ分には近くても大丈夫だと思います。ありがとうございます。お気遣いいただきまして」

「いや、今後は全体の騎士の道具に施すことも視野に入れてるらしいからな。まずは軽めの討伐で試して欲しいと頼まれたのもある」


ヒョイ、とショーキから剣を受け取って、オスカーは自分の腰に差す。ショーキは持っていた剣の僅かな魔力の残滓を、軽く手を振って払い落とした。魔力は物理的にどうこうなるものではないが、それでも気分的にスッキリする。


「ウチの国は人手不足を魔道具で補ってる部分が多いからな。魔力過敏者が多い獣人や特殊魔力持ちには色々と大変だから、やっと最近お偉方が対策に乗り出したようだ」

「それでも隊長はその話を自分から進んで受けてくれたんでしょう?やっぱりありがとうございます」

「なあに、この先優秀な獣人や特殊魔力持ちが騎士や王城付き魔法士になってくれれば、巡り巡って自分の為だからな」


素直にペコリと頭を下げるショーキに、オスカーは少し照れたような何とも言えない表情になってポンとショーキの肩を叩くと、管理部の受付に礼を言ってその場を後にした。ショーキもその後に続く。

ふとショーキは、特殊魔力持ちと聞いて、薬局で出会った受付の女性の一人を思い出した。


「あの、オスカー隊長は、新しく出来た薬局に行きましたか?」

「ああ、今日朝一で行って来た。狭い分品揃えは王城内の窓口には適わないが、基本的な物がすぐに買えるのはありがたいな」

「受付には誰がいました?」

「ええと、確か赤っぽい金髪の短い…」

「ヒスイさんですね」

「名前までは聞かなかったな。何だ、若いやつはやっぱり興味があるみたいだな」


オスカーが必要な回復薬を買って戻ると、受付に誰がいたか数名の若い騎士達に聞かれたのだ。理由を聞くと、受付には二人の女性がいて、片方は混雑時に補助的に出て来るだけなので殆ど見たことがない為、見た者から情報を集めているらしい。どうやら受付担当の二人は全くタイプは違うがどちらも美女らしいので、男ばかりで平均年齢も若い第四騎士団の面々は早速どちらの受付嬢派かという派閥まで出来ているらしい。

今のところ、ただいつもよりはマメに薬を買いに行ってはキャッキャとはしゃいでいるだけなので、上の者も放っておいているのだろう。なにせこれまでの第四騎士団は、薬局の窓口が遠かった為にちょっとした不調でも面倒臭さを優先して放置した為、騎士団内で流感や胃腸炎が蔓延したりして統括騎士団長から大目玉を食らうことは年に一度や二度ではない。

若い女性が受付に立つ上、敷地内の研究施設は国同士の重要な一大事業だ。上の方でもキッチリ目を光らせているのはすぐに予想がつく。何かあれば早急に対処されるだろう。それを理解した上で適切な距離でちょっとしたやりとりを楽しんでいるのなら問題はないが、羽目を外し過ぎて迷惑をかけて出禁になったら再び遠い薬局に行くことになる。


「いやあ、僕は獣人の女の子しか興味ないんで。でも滅多に姿を見せない方の女性は、レンドルフ先輩と知り合いみたいです」

「そうなのか?」

「あの感じだと、お付き合いしてるんじゃないですかね。本人からは聞いてないですけど」

「あいつには特に婚約者はいない筈だから、相手が人妻じゃなければ何の問題もないだろう」

「さすが貴族情報は貴族の方が詳しいですね」

「下位貴族とは言えこれでも当主だからな。色々と把握してないと痛い目を見る」


そう言ってオスカーは妙に実感がこもった口調で肩を竦めた。ひょっとしたらショーキが産まれる前から騎士をしていたであろうオスカーの過去は色々とありそうだったが、興味本位で開けてはならない扉だと察しの良いショーキはそれ以上は訊かないことにした。


オスカーは馬車の積み荷を確認して、僅かにまだ余裕があったので水の魔石を手配するようにアドバイスをする。万一何か困難な状況に陥っても、水さえあれば何とかなる場面は多い。逆に水がなければあっという間に詰むことばかりとも言える。たとえ寒冷地の遠征であっても、水の魔石は多めにしておいた方が良い。


ショーキはオスカーの言葉に頷きながら、今日中に魔石の管理担当に水の魔石を手配してもらうのに必要な申請書類を書く為、備品庫と事務官のいる窓口へと向かう。水の魔石は常に需要があるので、十分な程の在庫は準備されている。今から申請しても希望数の確保は出来るだろう。

まだ今回の遠征で初めて組んだ部隊でもあるので正式な専用の談話室は与えられておらず、必要な物はいちいち備品庫から持って来なくてはならない。ショーキは備品庫から書類だけでなく筆記具なども一揃え抱えて移動する。

正式に部隊として登録されれば鍵付きの専用談話室が与えられる。そこで遠征計画や作戦会議などを行うのだ。専用談話室にはロッカーもあり、申請書類や文具、共用の備品などが置けるようになるので何かと便利なのだ。

一抱えもある備品を袋に入れて移動しながら、ショーキは早く専用の談話室が欲しいな、と空いている談話室をオスカーと探し回ったのだった。



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「ショーキ、何か不足したものでもあったのか?」

「レンドルフ先輩。積み荷の確認をしてもらったら、オスカー隊長がもう少し水の魔石を足しておいた方がいいってことだったんで」

「それならさっき、モノとオルトさんが追加してたが」

「えっ、それなら確認しておかないと!」

「積み荷担当の新人が複数いるとよくあるヤツだな。俺も受付まで付き合おう」

「ありがとうございます!」


ショーキが申請書類を書いている途中で、オスカーは明日の遠征の件で召集が掛かったので席を外していた。それまでは書類の苦手なショーキの書類作成をオスカーが指導してくれていたのだが、仕方なく自力で四苦八苦して仕上げて管理担当のいる受付まで向かっていると、鍛錬を終えたのかレンドルフが首にタオルを掛けて汗を拭いながらやって来た。そしてショーキの話を聞くと、先程すれ違ったモノとオルトの話を教えてくれたので、共に受付に確認しに行くと、ショーキが申請しようとしていた魔石よりも少し多い数の追加を申請して、既に持ち帰った後だった。

遠征用の荷物を揃えるのは新人の役目なのだが、その新人が複数いた場合によく起こるすれ違いだ。こうして新人は遠征に必要な事項を覚えて行くのだ。


「僕、頑張って書類書いたのに…」

「良くあることだ。慣れればどうということはないさ」

「うう…」


あれほど苦心して書いた書類が丸々いらないことになったので、ショーキは大分凹んでいた。騎士には書類仕事が苦手な者が多く、ショーキも例外ではなかったようだ。

ある程度ベテランになってそれなりに重要書類などに携わるような地位になると、間違いがあっては行けないと第五騎士団から書類作成が得意な者が代理で作成、確認まで行って、当人は最終確認としてサインを入れるだけになる。実は書類仕事が嫌過ぎて、それを代理でやってもらいたくて出世しようと必死になる騎士も存在していた。誰にも言わないようにと当人から厳命されているが、現近衛騎士団長ウォルターもその一人であることは有名だ。その地位にまで到達することと、書類仕事とどちらが大変かは、個人の感覚によるだろう。


「悪かったな、確認を取ろうとしたんだが、見当たらなくってな」

「酷いですよ〜オルト先輩〜」

「ま、今度何か旨いものでも奢ってやるから」

「絶対ですよ!」

「あの、すみません…自分が報告しなかったばかりに…」

「「モノは謝らなくていいから!」」

「!…す、すいません…」


馬車のところまで戻ると、追加した魔石を積み込んでいるモノとオルトがいた。それを確認すると、ショーキは小走りに近寄って口を尖らせて苦情を申し立てていた。しかし外見が小さくて可愛らしいショーキなので、あまり怒っているように見えない。オルトは笑いながら受け流していると、生真面目なモノが精一杯身体を小さくして謝って来た。それに対してショーキとオルトが異口同音に全く同じことを口に出した。だがそれが却って驚かせたのか、モノはビクッと肩を跳ね上げさせて更に小さくなった。


「お前が小さくなるこたあねえよ。俺がオスカーかレンドルフに報告しておけば良かっただけだ」

「ですが…」

「それを言ったら、僕もモノと同じだから僕も悪いってことになるけど?」

「それは…」

「だから、オルト先輩のせいなんだから、いいの!」

「…はい」


二人のやり取りを後方から眺めていたレンドルフは、その側でオルトが少々難しい顔をしているのに気付いた。


「オルトさん?何か気に掛かることでも?」

「ああ。騎士団内でも通信の魔道具無しだとすれ違いが起こるなら、遠征の時はどうしたものかと思ってな」


ショーキは一部の獣人によく見られる特性から、モノはその身に受けている呪いの関係から、あまり魔道具を身に着けられない。騎士ならば絶対に装着しておかなければならない毒や麻痺の無効化の装身具は、ギリギリまで弱く付与を施してもらって、どうにか身に付けているが、遠征時などに必要な通信の魔道具を二人はどうしても付けられないのだ。この魔道具は主にバングルの形をしていて、同じ討伐隊と離れていても会話が出来るので、万一はぐれてしまった時に役立つし、隊長格が持つ物は騎士団の事務官がいる部署にも繋がるので、応援要請などをすることも出来る。しかし様々な機能を付けた結果、ショーキやモノのような魔力が悪影響を及ぼす体質には拒否反応が出てしまうのだった。


「今回はそれを確認するための遠征でもあるんですよね」

「そうなんだが…同部隊に二人もいることはほぼなかったし、特にモノがどう反応するか不明だからなあ」


彼らのように魔力過敏などで魔道具の使用が制限される騎士も存在する。そういった者は、幾つかの対応策も準備されているのでそれを選んで対処している。だがやはり汎用品であるのでそれでは不便すぎるので、自分の体質用に改造した通信の魔道具を作る騎士もいる。が、一定の補助は出るがはみ出す部分は自腹になる。そして手入れの際も、特別な手間がかかる場合はそちらも自費になるのだ。それはそれなりに金額が嵩むので、まだ新人の二人には費用面でも少々厳しい為、自分専用の魔道具は作っていなかった。


ショーキは、少しだけなら我慢出来るので、討伐作戦参加の時だけ限定的に装着し、装着時間も縮めるという対応策を取っている。彼の場合斥候や偵察を主に請け負っているので、基本的に魔道具使用の時間は短くて済むので取れる策だ。

しかし今回初討伐のモノはどこまで、何の魔道具を使わせることが最も有効かを確認しつつの討伐になる。獣人や体質ならば、過去にも似たような者がいるので対応策は絞りやすい。だがモノの場合は誰も知らない呪いの影響である。対処法そのものが全く未知数だ。

今回の討伐に大型の馬車が二台も用意されたのは、身体の大きなレンドルフとモノが参加しているからだけでなく、モノの呪いに対処可能な魔道具を探る為に、ありったけの魔道具を持たされるからだった。こればかりは予測もつかないので、過去のデータを照らし合わせたところで参考になるような資料がないのだ。今後の為にも地道に色々と試して行く他ない。


「レンドルフんとこの領ではどうしてたんだ?」

「森の幾つかにはぐれた際の拠点を決めてましたね。だからここではあまり有効ではないかと」

「ああ〜確かにウチじゃあっちこっちに行かされるもんなあ」


故郷のクロヴァス領の国境の森は広大だが、馬に乗れるようになったらベテランの大人達に連れられてあちこちの場所を覚えさせられる。そして万一のことがあった場合、拠点と呼ばれる地点まで退避して、そこに隠してある救援弾などを使用して助けが来るのを待つのが基本だ。

第四騎士団は王都周辺か、要請が来た場所に派遣されるので固定した地区へ行く訳ではないのだ。


「ああ、あと、子供には伝書鳥を用意させてましたね」

「ほう。それはどんな?」

「子供は体が小さく見失いやすいので、子供に向かう伝書鳥を大人達が持ちます。声が届かないところに行ってしまったら、伝書鳥を飛ばしてそれを追うんです」

「…それは、追うのが大変そうだが手としては悪くねえな」


オルトは思案顔で顎に手をやる。顔の傷の影響でひどく不機嫌そうで怒っているように見えるが、実際はそうではない。

伝書鳥は魔道具の一種ではあるが、実際持つのは当人以外なので影響はない。問題は、伝書鳥は手紙を運ぶものなので何も持たせずに送ることは出来ないが、前もって一言でも何かを書いた紙を準備しておけばすぐに使える。レンドルフが幼い頃にはぐれて届けられた伝書鳥の運んで来た手紙には、父の荒々しい文字で「動くな馬鹿者」とだけ書かれていたのは今となっては良い思い出だ。


「索敵魔法や気配探知出来る者がいれば割と追えるんですが」

「ウチのメンツじゃショーキが使える…って、ショーキとはぐれたらダメじゃねーか」

「はぐれたのに気付いた時点でそう遠くには行ってないでしょうから、大体の方向が分かるくらいなら使えるかもしれませんよ」

「んー、一応オスカーに確認してみるか。ありがとうな、レンドルフ。助かった」


伝書鳥は文房具の一種になる魔道具なので、魔獣討伐に使用することは考えていなかったようだった。レンドルフにしてみれば昔からクロヴァス領で使われていた方法なので、やはり文化の差というのは話してみないと分からないものだな、としみじみしていた。


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