95.「天上の楽団」
ビーシス伯爵家にレンドルフが赴くと、朝に先触れを出しておいたからか既に玄関先でアリアが待ち構えていて少々ギョッとしていたら、有無を言わせぬ勢いで屋敷の中に引っ張り込むように案内された。
「まあまあまあ、本日はようこそおいで下さいました!」
「…先日はありがとうございました」
「今、娘は支度をしているところですの。ささ、こちらの紅茶をどうぞ。先週入荷したばかりの新茶ですわ」
「いただきます」
「ご一緒に来られたスレイプニルはご立派ですわね〜。我が家では普通の馬しかいないものですから驚きましたわ。あ、ですが厩番はベテランですので、お預かりする分にはご安心いただける筈ですわ」
「はあ…」
微妙に噛み合っているのかいないのか分からない会話をアリアと繰り広げ、紅茶一杯分が何時間にも感じていると、ようやくエリザベスが顔を出した。いや、レンドルフの体感的にようやくなだけであって、実際はそこまで遅れた訳ではなかったのであるが。
これから視察に出向くエリザベスの装いは、実にシンプルで動き易そうなドレスだった。貴族女性はあまり着ないようなくるぶし丈のスカートで、足が露出しないように編み上げブーツを履いている。全体的に茶色っぽいのはテンマのことを意識してのことだろうか。
先日の襲撃の後、大丈夫か心配になって訪問をしたことと、これからエリザベスが視察先に行くのならば折角なので護衛として同行させて欲しいという旨を告げる。テンマの方から、エリザベスにはレンドルフが自分の代わりに護衛に向かうことを昨夜のうちに伝えているということだったので、特に疑問もなくすぐに承諾してくれた。そしてまだまだ喋り足りなさそうな顔のアリアと手土産のチョコレートを執事に任せると、レンドルフはエリザベスと共に伯爵家を後にした。
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「あの…テンマ様がご無理を言ったのではありませんか…?」
テンマがどう伝えたのかは分からないが、眉を下げて済まなそうな顔のエリザベスにそう言われてしまうと、確かにその通りと思っても正直に頷けるほどレンドルフの神経は太くない。
「ちょうど空いている日だったのでお受けしたまでです。お気になさらず」
「ありがとうございます。…あの、テンマ様が今日こちらに来られない理由はレン様はご存知でしょうか?」
「いいえ。ただ、都合が付かないとだけ。商会のことでしたら外部に言えない理由もありますでしょう。私も詳しくは聞いておりません」
「…そうですか。お手数をおかけしますが、本日はよろしくお願いしますわ」
エリザベスの乗り込んだ馬車に並走するような形で、レンドルフはノルドに騎乗して付いて行く。一応護衛なので帯剣はしているが、今日は乗馬服なのでそこまで物々しくはない。しかし平民街を抜けて行くので、街中でスレイプニルに騎乗している姿は目立つらしく、すれ違う人にほぼ二度見されている気がした。
程なくして馬車は街の最も西側にある紡績工房の正門に到着した。
事務所のある建物まで馬車を寄せると思っていたが、すぐにエリザベスが扉を開けたのでレンドルフは急いでノルドから降りて、小走りに馬車に近寄って彼女に手を差し出した。
「恐れ入ります」
貴族のドレスによくあるようなレースの装飾の施されたものではないが、それでも馬車から降りるのはいささか大変そうに見えたので手助けをしようと思っただけで、レンドルフには一切他意はなかった。だがエリザベスにとっては少々思うところがあったのか一瞬レンドルフの手をどうしようか迷うような素振りを見せたが、すぐに手を重ねて来た。
知らせていた時間よりも早くエリザベスが到着したのだろう。迎えに出るのが間に合わなかったのか、建物の奥から口髭を蓄えた中年男性を先頭に数人の男性が血相を変えて走って来るのが見えた。
「お、お嬢様、大変、申し訳…」
「いいのよ、リール卿。道が空いていたせいか、大分早く到着してしまったのはこちらなのですから」
「は…恐縮です…」
リール卿と呼ばれた口髭の男性は、息を切らしながらもエリザベスに丁寧に頭を下げ、それからチラリとレンドルフに視線を寄越した。さすがに貴族に見えるレンドルフにあからさまな疑いの目は向けては来ないが、表情には怪訝な色が浮かんでいた。
「こちらは本日特別に護衛に就いていただいているレン様です」
「レンと申します。よろしくお願いします」
「は、はい!ようこそおいで下さいました」
「リール卿、まだ準備もあるでしょうから、予定の時間まで帳簿を確認しながら待たせていただくわ。馬車と…レン様のスレイプニルを頼めるかしら」
「畏まりました」
エリザベスは慣れた様子で迎えに出た男性達に色々と指示を出すと、リールの案内で建物の中へ入って行った。レンドルフも護衛なのでエリザベスの斜め後ろを付いて歩く。
ほんの一瞬、奇妙な気配を感じてレンドルフは視線だけで周囲に目をやったが、特に怪しいものは見つからなかった。しかし初めて足を踏み入れる場所なので、何が怪しいかは判断が付きにくい。レンドルフはいつもよりも周囲の様子に神経を尖らせて、エリザベスの後に続いて建物内に入って行ったのだった。
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「うう…何でいつもレンさんが前髪を上げてる姿を側で見られないのかしら…」
レンドルフ達が入って行った工房よりも大分離れた木の上で、ユリが枝の陰に潜むように座り込んでいた。
昨日、特に急ぎの採取はないからとレンドルフを三日間の護衛に就いてもらうように提案したものの、やはり心配になってユリはこっそりと付いて来ていたのだった。今はレンドルフに気付かれないように、大分離れた場所から身体強化を使って見守っていた。
「よう。お嬢さんもなかなか大胆だな」
「……テンマさん。何やってるんですか」
「それを俺に言う!?」
ユリが潜んでいるのとは違う枝に、ユラリと陽炎が立つような空間の揺らぎと共にテンマが姿を現した。少し前に微かに魔力の揺れがあり、その魔力に憶えがあったのでユリは何となく相手を察していた為にそれほど驚かなかった。
「期限は三日とは言いましたけど、早く終わる分にはいくらでもいいんですよ」
「朝に依頼を出してそんなにすぐ候補者は見つからんだろ」
「他に個人的な伝手を探すとか、いくらでもあるでしょう」
「…相棒を巻き込んで悪かったな」
少しだけ声を低くして真摯な口調でテンマが呟いたので、ユリはそれ以上は文句は言わずにツンとした表情でレンドルフ達が消えて行った建物の方をジッと見つめていた。
「まだ工房視察が始まるまで一時間くらいある。その間は事務室で帳簿の確認で動かんから、その間にメシでもどうだ?奢るぞ」
「それは……ああ、それなら大丈夫ですね」
レンドルフ程ではないかもしれないが、テンマもそれなりに目立つ風貌である。そしてただでさえ狙われているのに一緒にいるのは得策ではないと断ろうと思ったのだが、そちらに顔を向けるといつの間にかユリの目の前には印象のハッキリしないテンマとは似ても似つかない人物が立っていた。
髪や瞳の色を変えて印象を変える変装の魔道具ではなく、見る者の精神に干渉をしてぼんやりとした印象にさせる認識阻害の魔道具を使ったようだ。これならばテンマのように色を変えても体格で分かってしまうタイプには有効な手段だ。
「さっきもですけど、闇属性魔法は珍しいですね」
「大した魔力はないけどな。魔道具で補えばそこそこ使える」
先程ユリの感知した魔力の揺れも、テンマが闇属性の幻影魔法で潜んでいたのだろう。この認識阻害の魔道具も、悪用されないように登録した人間の闇属性の魔力でないと使用出来ないように設定されていて、魔石に魔力を充填しない形で所持しないといけないと国から定められている。常に魔力を充填しながらでないと使用出来ないようにして、長時間稼動させないようにしているのだ。そうでないと、暗殺などに容易く転用出来てしまうからだ。
「食べてる最中に切れたりしませんよね?」
「そのくらいなら持つさ」
「では、ご馳走になります」
「この身の誉にございます」
わざとらしく言うテンマにユリはあくまでも塩対応で、人目もなかったので返事もしないで木の枝から飛び降りた。
「お嬢さ…いや、ユリ嬢も貴族なんだな」
「それが何か?」
「…っ、そう殺気立つなって。こいつがな、微細な魔力も結構拾うんだよ」
ユリにジロリと睨まれて、テンマは慌てて手をヒラヒラと振っておどけたような態度を取った。そしてバジリスクの石化毒の影響が残っている右肩を叩いてみせた。
「この前ここに魔力を流しただろ?それでユリ嬢も変装の魔道具使ってるのが分かったからな」
貴族は血筋を守る為に縁戚との婚姻も多く、各家門で特徴的な髪や目の色が出やすい。確実という訳ではないが、夜会などでも名乗らずとも色で大体の家系が分かると言われている。その為貴族が身分を隠す時は、正体が分かりやすい髪や目の色を魔道具で変えることが多いのだ。
平民は貴族と違って色への拘りは薄いので、色を変えたい時は気楽に髪を染料で染め変えたりしている。元に戻す気がなければ魔法で色を変えることも簡単に出来るので、いちいち高価な変装の魔道具を購入して使うことは少ない。
「…随分感度がいいんですね」
「まあなあ。どっちかっていうとノイズを拾い過ぎるから不便の方が多いけどな」
テンマは本当に不便だと思っているらしく、その声にはうんざりとしたような色が滲んでいた。
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テンマに案内されて、ユリは工房から少し離れた通りの二軒の店の前に立たされた。片方は古そうな店構えでお世辞にも綺麗とは言えず、看板には分かりやすく「肉」と大きく書かれている。もう片方はパステルグリーンの可愛らしい扉に花の鉢植えが窓辺に並び、日替わりメニューが書かれている黒板には「本日のおススメ・温野菜の満開プレートランチ」と書かれていた。
「…極端が過ぎる」
「どっちでも好きな方を選んでくれ」
「……じゃあ、肉で」
一瞬、ユリはテンマを可愛らしい方の店に連れ込んでやろうかと思ったのだが、よく考えたら認識阻害の魔道具を使っているのであまり意味がないことに気付いて、素直に自分の本能に従った。
店内に入ると、外見よりも内装はずっと綺麗だった。内装の方を優先し過ぎて外見は後回しになった典型のようだ。ランチタイムには早い時間帯のせいか、客はまだ誰もいなかった。取り敢えず奥の二方を壁に囲まれた席に落ち着く。
「俺はハンバークランチで」
「じゃあ私はサービスステーキランチ。ガーリックトーストに変更でお願いします」
「はいよ」
店を切り盛りしているのは初老の夫婦らしく、ランチのセットになっているのか夫人が注文を取りに来る前に既にスープとサラダをテーブルに置いて行った。野菜の切れ端を使っているのだろうが、じっくりと煮込まれたコンソメスープの具はスプーンに触れるだけでホロリと崩れる程に柔らかく、強めに効かせた胡椒の辛味が食欲を程良くそそる。
「ユリ嬢は薬師って言ってたよな」
「薬師見習いです」
「それでも薬の注文はできるんだろ?」
「モノにも寄りますよ。資格がないと販売許可が下りないのもありますから」
「毒抜きの薬は?」
「…種類にも寄ります」
テンマはチラリと店主夫婦に視線を送った。あまり聞かれたくない内容のようだ。その時点で、ユリはやはり隣の店にしておけば良かったと後悔していた。少なくとも隣には店内に数組の客が見えたので、さすがに面倒な話にはならなかっただろう。
「はい、お待たせしました」
夫人がジュウジュウと派手な音を立てている鉄板の上に乗った肉を運んで来た。肉の下にはタマネギともやしが敷き詰められていて、揚げた芋が添えられていた。テンマの注文したハンバーグは、コロリとした丸い形のものが二つ並んでいて、片方には赤いソース、もう片方にはチーズがトロリと乗っていた。ユリの注文したステーキは、大きな塊肉を整える際に出た端肉を焼いたもので、見た目は悪いが断面から脂を滲ませて香ばしい匂いを漂わせている。
「取り敢えず、美味しく食べたいので、その話は後にしてもらえます?」
「あ、ああ」
ユリの皿の上の肉は、様々な部位が混じっているらしく、見た目には差は分からないがフォークを刺そうとするとそれを拒もうとするくらい弾力のあるものから、蕩ける程や柔らかな手応えのものもあった。弾力のあるものは口に入れても予想通り思わず無言になる程の歯応えで「これは…サンダル…?」と一瞬思ってしまった。とは言っても、その場で削ったばかりらしい胡椒の香りと、甘辛いソースの味は良かったので、普段の倍以上の咀嚼回数を重ねれば食べられなくもなかった。
変更してもらったガーリックトーストはたっぷりとバターとニンニクが染み込んでいて、肉のソースを付けて食べると次々と入ってしまう。いつもミキタの店で食べているパンより少し固めで小麦の香りも薄いのだが、こうして味が付いているとさほど気にならなかった。その後のニンニク臭が多少気になりそうだが、今日はレンドルフとは顔を合わせることはないので別にいいか、などとユリは考えていた。それでも一応食後にミルクティーを追加注文しておく。
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食後のデザート代わりなのか、一口大の小さな焼き菓子が二つ乗った小皿と飲み物を置かれると、テンマの顔付きが一瞬で真面目なものに変わった。
そして腕に付けているバングルの赤い石の部分を軽く押しすと、微かに魔力の揺れをバングルから感じた。そのバングルはテンマの腕から外されて、テーブルの中央に置かれた。
「防音、ですか。そんなに重要なお話ですか」
「巻き込んですまない。が、今薬師と縁が出来たことは、神の導きだと思っているんだ」
「薬・師・見・習・い、ですが」
テンマの言葉にユリはきちんと訂正する。まだ資格を取っていないのに薬師だと名乗る、或いは勘違いさせることは重大なペナルティとなる。人の話を聞く気がないのに、後々「薬師だと言った!」などと言い張る人間は残念ながら一定数はいる。ユリは警戒をあらわにして顔を顰めた。
「いや、すまない。もし無理そうなら、薬師との繋ぎを取ってもらうだけでもいい」
「それなら薬師ギルドに依頼すればいいのでは?」
「その…それは…」
「公に出来ないようなことでしたら、お話を聞くまでもありません。お断りします」
「いや、そこは」
「お断りします。まあ薬師の中にはそういった緩い方もいらっしゃいますので、ご自身でお探しくださいませ」
話を聞く前から、テンマの頼みの用件は正規の依頼では支障のある内容なのだろうということは察しがついた。
世の中には、違法とまでは行かなくても情に絆されて決められた処方とは少し違う薬を渡してしまう薬師もいる。たとえば幼子を抱えた親がそう頻繁に薬の購入に来ることが出来ないことを考慮して規定よりも大目に薬を融通したり、熱冷ましの処方で薬代もその分しか受け取ってないのに、ついでだからとおまけ感覚でその中に腹痛の薬草を混ぜたりすることがある。
環境や状況で、全てギルドが定めた規定通りに線引きが出来る訳ではない。相手の様子と自身の判断で融通することも必ずしも悪とは断定出来ないことはユリにも分かっている。それでもユリの家門は医師や薬師を多く輩出して来た血筋であり、祖父のレンザは薬師ギルドに深く関わっている人物だ。その家門の名を背負う以上、ユリは正規の依頼を憚るような案件だけは受ける真似はしないと固く誓っているのだ。
「悪かった。あんたの言うことは正しい。きちんと薬師ギルドにも話は通す。ただ…」
「まだ何か?」
「その、急ぎで毒抜きが欲しい。当人を確保出来てないから、俺の証言だけになるんだが」
「毒抜きは使い方によってはそのものが毒にもなります。本人が来られないなら難しいですね。居住を一定年数共にしている配偶者か親子であれば、話次第では…」
「『天上の楽団』絡みでもか?」
「待ってください!そんな大きな話、私では扱いきれません」
テンマの口からでて来た単語に、ユリは思わず立ち上がっていた。防音の魔道具を使用しているので、店主夫婦からは静かにしていた客のユリが突然立ち上がったので、不思議そうな顔を向けていた。ユリはすぐに我に返ってごまかすように微笑んで軽く頭を下げると、そっと椅子に腰を降ろした。
テンマの言った「天上の楽団」とは、使用すると気分が高揚したり、身体能力が向上したり、恐怖感が薄れたり、様々な効能を持っている薬の数々を指す。どれも共通して強い依存性と後遺症が出る最悪の違法薬物だ。それぞれ別の薬草なのだが、近年の研究で全てミュジカ科に属する植物がその症状を引き起こすと判明し、薬師ギルドの特別な許可がないところでは、使用は勿論、栽培、種や苗の移動、製薬も禁じられている。精製前の植物を所持しているだけでも罪になるものだった。
「天上の楽団」という名が付いたのは、それぞれ効能の違う薬草の花が楽器の形に似ていることから来ている。それらの薬を摂取すれば、まるで天上の音楽を聴いているかのような高揚感や多幸感を得られるそうだ。しかし、実際は天上の音楽が消えれば待っているのはおぞましい苦痛だ。
しかしそんなミュジカ科の植物でも適切な管理下で使用すると、極々症例は少ないが難病と呼ばれる病に効果を発揮するのだ。その為代替えの薬が出来るまでは絶滅させる訳にはいかず、現在は薬師ギルドで徹底して管理している。
「その内容なら、薬師ギルドよりも警邏隊…それも隊長のいる本部か、第三騎士団に話を持って行った方が早いです」
「それは俺も分かってる。だが、証拠がないんだ」
「確証はあるんですか?」
「…多分」
「多分、ですか…」
ユリは頭が痛い、とでも言いたげに手を額に当てた。
警邏隊は中心街以外の王都の治安を守る組織で、第三騎士団は在所は王都中心ではあるが、王都以外でも広域に渡る対人犯罪を取り締まり処断可能な権限を持つ。「天上の楽団」の薬師ギルド以外での違法な使用や流通のような重大案件ならば、どちらかに頼った方が確実だろう。しかし、さすがに確固たる証拠がないとそれは難しい。
「ああ、もう!もうちょっと話聞かせてください」
「悪いな」
「ただし、いよいよマズいと思ったら聞こえないフリしますからね!耳遠くなりますから!」
「ああ、それでいいよ」
あれほどレンドルフにはテンマに絆されないように、と言っていたユリだったが、結果的に自身がその策に嵌まっているような気がしていた。決して情に絆されている訳ではないが、違法薬物のことを聞いてしまったら無視は出来なかった。
「ああ、もう腹立つ!…すみません!火酒下さい。ロックで!」
「ちょ、おい!」
ユリはテーブルの中央に置いたバングルをゴンと殴りつけてスイッチを切った。そして声が届くようになってから追加注文をした。まさか見た目は小柄で可憐ともいえるユリが、そんなキツい酒を頼むとは思わず、テンマは目を白黒させた。
「何かあったら、酔って覚えていませんで通します」
「お、おう…」
キッと目を吊り上げてテンマを見据えるユリの顔は、既に絡み酒寸前な程に出来上がった酔っぱらいのような雰囲気を醸し出していた。
ミュジカ科の植物は、エンジェルトランペットとかダチュラのイメージです。スズランなんかもあるかもしれません。
王城所属の騎士団の役割の違い(補足)
近衛騎士団・王族のSP、要人警護がメイン。時折囮捜査や諜報みたいなこともやらされることも。
第一騎士団・王城警護。人<城メインで守っている。侍所みたいな部署。
第二騎士団・中心街の保安がメイン。団長がお奉行で部下は同心的な。自警団は岡っ引き。
第三騎士団・対人広域犯罪担当。公安的な部署。
第四騎士団・対魔獣討伐メイン。各地に駐屯地があり、災害地復興なども担う。SATか自衛隊的な部署。
警邏隊・中央街以外の王都領の治安維持。地域警察的。街のお巡りさん。
地方は領主の方針によるところが大きい。基本的に領専属騎士団があり治安を担当。各町や村などは自警団が作られていることが多い。魔獣の出現が多く専属騎士団だけで手が回らない領地は、国に申請を出して第四騎士団の駐屯地を置いてもらい魔獣討伐を任せている。一応国所属の騎士団なので、領の治安には介入しないとこにはなっているけれど、現場で顔を合わせれればそれなりに協力もしたりする。
他の組織も一応区分けはされているけれど、現場の状況や指揮官の方針や個人の裁量などでふんわりしているところもあります。