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93.見誤った者の末路

エリザベスの元婚約者ジェイクと、ジェイクの現婚約者のフランソワのその後の話です。まるまるざまあ回?風味です。


ヘパイス子爵の領地にある鉱山は、多種の鉱石が採れることで知られていた。代表的なところではルビーやサファイア、年に数欠片程度ではあるがエメラルドやダイヤモンドも出て来る。とはいえ大半は色水晶や不透明な翡翠などの宝石の分類には入らない半貴石で、大きさもそこまで良いものは産出されないが、細かい分ビーズや粉にして加工品にすることで領の資金源となっていた。


そこに最近次男と婚約を結んだブラウン伯爵家との共同事業で、価値にならないような屑石を石畳のように並べるアクセサリーを売り出した。土台にはブラウン伯爵領で産出される魔鋼鉄を使用していた。魔鋼鉄は硬度があまりなく加工はしやすいが強度と魔力を通す量が少ないため、何度か精製を重ねた上でようやく魔道具の部品の一部に使用される素材だった。その加工しやすい特性を利用して、屑石を集めた形に後から土台の形を合わせるという製法で、同じものが一つとないという宣伝文句でブローチを作り出したのだ。

そのブローチは、世界に一つのデザインという希少性と、利用先のなかった屑石とは言え本物の宝石も混じっている割に安価で手に取りやすい商品として、若い貴族令嬢だけでなくそれなりに裕福な平民の間でも爆発的な人気となった。


「ただ同然の屑石なのに、これほど利益を出すとは思わなかったな」

「石で覆ってしまうから、土台が未精製の魔鋼鉄でも目立たないところに目をつけたのは私よ」

「ああ、僕と君の出会いで、両家はますます発展して行くだろうね」

「ふふっ。頭が固くて古くさいお父様より、ずっと貴方の方がブラウン家の当主に相応しいわ」


王都の中心街の一角にある宝飾店の最上階にある執務室で、ヘパイス子爵家次男のジェイクと婚約者のフランソワ・ブラウン伯爵令嬢が優雅に並び合って、日が高いのにワインを楽しんでいた。

この店はヘパイス子爵家が自領の鉱山から採掘される宝石を加工して販売している直営店だ。一階は宝飾品を陳列して販売している店舗、二階はお得意様用の個室となっている。そして三階には宝石の鑑定士と加工専門の技師が作業をする工房や事務所などが併設されていた。更にその上が経営者の執務室で、彼らはそこを我が物顔で独占していた。


ブラウン伯爵家には三人の子供がいて、本来ならば長子の嫡男が継ぐ筈なのだが、彼は根っからの研究者体質で、妻を迎えるくらいなら魔鋼鉄の研究がしたいと相続放棄を希望した。その為長女のフランソワが婿を取るという話になり、彼女の強い希望でヘパイス子爵家次男のジェイクとの婚約を調えたのだった。

ただブラウン伯爵は、ジェイクがビーシス伯爵家の令嬢と婚約解消をする前からフランソワと付き合いがあった為に一部で不貞や略奪ではないかと噂されていることが気に掛かっていたらしく、婚約までは認めたものの、フランソワと二人で何か事業を行いそれが成功を収めればブラウン伯爵家の婿としてフランソワと共に跡を継がせると条件を出していた。


その条件を満たす案件として売り出したブローチが思った以上に好評で、最初は試しにとヘパイス家直営の宝飾店の隅に置かせてもらっていたものが、今や主力商品として店の目立つ場所の半分を占拠していた。

ブローチの一つの価格はそこまで高価な商品ではないが、元の素材が捨てるような石と、未精製で手間のかからない魔鋼鉄で出来ているものだ。売れば売る程面白いように利益が出ていた。


「ねえ、ジェイク。この前サンドライト侯爵家のお茶会で、ディーテ様に私達のブローチを見せて差し上げたら、興味があると仰ったのよ。やっぱり侯爵家ですもの。見る目だけはありますのよねえ」

「それはすごいな!ディーテ様と言えば、第二王子の婚約者候補のお一人だろう?そんなお方に興味を持ってもらえるなんて、やはりフランソワのように伝統と格式のある血筋の言葉は尊重されるべきと分かっておられるのだな」

「ジェイクももうすぐその一員になれるのよ。貴方は頭も切れるし才能も豊かなのに、高位貴族でないだけでそれが埋もれてしまうなんてこの国の損失だわ」

「でも、その原石(ぼく)を見つけてくれたのは君だろう?君こそ真の審美眼を持つ女神だよ」


ジェイクはそう言って、フランソワの自慢の淡い金色の髪を一房手に乗せて唇を落とした。フランソワは、日に透けるような淡い金髪に淡い紫の瞳をしていて、人形のように整った容姿をしている。この彼女の髪と瞳の色は王族に時折現れる色と言われていて、数代置いて発現することも良くあることなので、おそらく遡れば伯爵家のどこかに王家の血を引く者がいたのだろう。彼女が生まれたことでブラウン家は王族の遠い縁戚であると証明されたも同然なので、彼女は伯爵家よりもずっと身分の高い家の令嬢とも交流があり、対等な友人としての関係を築いていた。()()()()


実のところ、フランソワは自身の能力よりもずっと自己評価が高く、それを隠そうとしない性格をしていた。爵位は伯爵ではあるものの、王族の血を引いた気高い存在であり誰よりも優秀で慈悲深いので、王族の血を引いていない家の身分が高いだけの令嬢達とも分け隔てなく付き合って()()()()()、と言動の端々から見え隠れしていた。

それを察している身分が上の貴族令嬢達は、言い争っても不毛なだけなので敢えて指摘はしないまま放置していたが、周囲の使用人達はしっかりと彼女達の親である当主への報告は怠らなかった為、娘達には表面的な付き合いだけに留めるように言い含めていた。そして身分が同等か下位の令嬢達はフランソワの態度に自然と距離を置いたが、元々無駄に上昇志向なフランソワには上位の令嬢達以外は視界に入っていなかったので、離れられていたことにも気付いてなかった。

今彼女の周囲に残っているのは相手を利用していい思いをしようとすり寄り、媚びへつらう者達ばかりで、少しずつフランソワの思考が悪い方向へ染まって行ったことを誰も指摘する者はいなかったのだった。


そしてジェイクも、金の髪にサファイアと評される美しい青い瞳の美貌の持ち主だった。スラリとした長身で、所作も美しいことから、高位貴族の令息と思われることも日常茶飯事だった。それ故に昔から、自分の実家の爵位に不満を持っており、美しいだけでなく才能も持ち合わせた自分はもっと上の地位に就いて当然だと思っていた。実際、嫡男の兄よりも後継にしたかった、と幼い頃から両親に繰り返し聞かされ続けていた。その為、彼もフランソワ同様、非常に自己評価の高い人間だったのだ。


二人が誰もいないことをいいことに、婚約者同士にしては近すぎる距離で睦みあっていると、執務室のドアをノックする者がいた。


「誰だ」

「あの、ジェイク様。ブラウン伯爵令嬢のご友人の方がお見えになっておりまして…」

「あら、どなたかしら」

「キルケ子爵令嬢とプシケー男爵令嬢でございます」

「ああ、あの…仕方ありませんわ。私に会いに来たのなら挨拶くらいして差し上げませんと」

「僕も一緒に行こう」


フランソワは一瞬眉を顰めて不快な表情をしたが、すぐに令嬢らしい微笑みを浮かべて立ち上がった。ジェイクも彼女の手をすぐに取って、執務室から出る。執務室の外では、疲れ切った様子の店長が深々と頭を下げていた。



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「ごめんなさいね。あの子達、少し元気があるからお店で騒いだのではなくて?」

「は、はい…その…」

「悪気はないのよ。ほら、こんな宝飾店にはなかなか来られないから、綺麗な品物を見て感動してしまったのね。大目に見てあげてちょうだい。後で私からそっと注意しておくわ」

「畏まりました…」


鷹揚な態度で微笑むフランソワに、店長は表情を消して、腕を組んで並んで歩く二人を先導すべく先に立って階段を下り始めた。

お得意様用の個室を設けてある二階を降り始めた時、既に下の階から甲高い声が漏れ聞こえて来ていた。基本的に高位貴族は馴染みの宝石商を屋敷の呼ぶので、こうして店に足を運ぶのは下位貴族か、高位貴族には入るが家格があまり高くはない伯爵家などが中心である。しかし、家格が高くなくてもれっきとした貴族である。そもそもあんな風に騒ぐことを推定していないので、個室に防音の付与は施していはいない。店長は個室に来ている長年のお得意様の伯爵夫人の耳にも届いているであろうことが分かって、背中を嫌な汗が流れるのを感じていた。


「キルケ子爵令嬢、プシケー男爵令嬢、お久しぶりですわね」

「まあ!フランソワ様!」

「いつもお美しいですわ、フランソワ様」


ジェイクのエスコートを受けながら階段を降りて来たフランソワが、鈴の転がるような声で話し掛けると、癖の強い赤毛のキルケ子爵令嬢と、水色の髪にわざと毛先を派手な金色に染めているらしいプシケー男爵令嬢がキャアキャアと甲高い声を上げた。どちらの令嬢も貴族の庶子で、生まれは平民だった令嬢だ。そのせいかマナーに疎いところもあり、許した覚えもないのに名前で呼ばれたフランソワはほんの少し、誰にも気付かれない程度に眉間に皺を寄せた。


「今日はお買い物ですかしら」

「ええ!フランソワ様にご紹介いただきましたので、あの人気のブローチを見に来たのです!」

「私達ではなかなか手に入りませんけど、フランソワ様がお口添えしてくださったおかげで買うことが出来そうです!」

「そ、それは何よりですわ」


フランソワは、彼女達の言っていることが分からないまま曖昧に返事を返した。そして彼女達は呼んでいるからとわざわざフランソワとジェイクが顔を出したのもそっちのけで、棚の中のブローチに向き合って楽しげにはしゃぎ始めた。


「あの…ブラウン伯爵令嬢のご紹介で、通常の価格の半額でお売りするように、と伺っておりますが」

「半額ですって…?」


そっと耳打ちして来た店長の言葉に、フランソワは目を見開いた。彼女はそんなことを言った覚えは全く無かったのだ。そもそも店に来ている二人の令嬢とはそこまで親しくしていたつもりはなかったし、何か言ったとしても分かりやすい社交辞令だった筈だ。しかしフランソワは、礼儀も知らない下位貴族の庶子であるし、そんな簡単な会話もままならないのだろうと思い直し、それならば今回は騒ぎを大きくしないでおいて後からさり気なく注意をすればいいだろうと考えた。高位貴族は下位貴族の規範とならねばならない。それも特に高貴な血を引いている自分なら尚更だ、と。


「何か思い違いをしているのでしょうが、ここで指摘して恥をかかせることはなりませんわ。彼女達の言う通りにしてあげて頂戴」

「ですが…」

「僕の婚約者の慈悲が分からんのか。差額は僕の資産から出しておけばいいだろう」

「まあ、ジェイク。私の心をすぐに分かってくださるのね」

「僕は常に君に相応しくありたいからな。これくらいすぐに分かるさ」

「畏まりました。そのように致します」


彼らのやり取りは、目の前のブローチを選ぶのに夢中になっていた二人の目には一切入っていないようだった。


「貴女達。折角来ていただいたのに申し訳ないのだけれど、私はこれから婚約者と打ち合わせがありますの。ですからこれで失礼いたしますわ」

「あ、私達はこちらをゆっくり選びますのでお気遣いなく」

「そうだわ!フランソワ様!私、あちらに展示してあります指輪を試着してみたいのですけれど、構いませんよね?」

「お客様、あちらは…」

「それくらい構わんだろう」


プシケー男爵令嬢が、比較的大きめの石を扱ったショーケースの一角を指差して言った。確かに店内で試着はしているが、それは購入をする予定の顧客に対してであり、実際の色味を指に合わせて確認してもらうのが目的で、どう考えてもただ試してみたいだけの相手には断るのが筋だ。しかしジェイクはそれを知ってか知らずか、余裕のある態度で店長の断りの言葉よりも早く許可を出してしまった。


「わあ!ありがとうございます!ねえ、私、あれとあれと…それからあっちのも試したいわ!」

「えーずるいずるい、私も!私も勿論いいですよね?」


キルケ子爵令嬢も声を上げてしまったので、店長は仕方なくショーケースの前に案内する。

それを見て、ジェイクとフランソワは安心したようにさっさと階段を上がって行ってしまった。後に残された店長は、貴族令嬢とは名ばかりの二人を相手にする羽目になってしまった。

ヘパイス子爵当人ならばオーナーであるし店長よりは身分が上であるが、息子のジェイクには本来はそんな権限はない。しかし、彼がさも自身がオーナーであるかのように振る舞ってしまったので、他に客がいる前で一から権限について滾々と言い聞かせることは出来なかったのだった。


その日は、ショーケースのものを次々と試着して、どさくさに紛れて指に嵌めたまま帰ろうとしたプシケー男爵令嬢をやんわりと留め、扱いの荒いキルケ子爵令嬢が試した物はすべて工房に再度鑑定を頼むことになり、二時間も掛けて選んだブローチを三つも買うからもっとまけろと交渉して来られてその対応に更に一時間以上掛かり、気の毒な店長は翌日急な体調不良で店を休むことになったのだった。



そして店長は二人の相手をしていたので気付いていなかったが、二階の個室に案内していた伯爵夫人が「こちらはいつから観光名所に指定されたのかしら」と氷の微笑みを浮かべて去って行ったことを聞いたのは、休み明けの翌々日であった。



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これが切っ掛けという訳ではなかったが、ヘパイス家直営の宝飾店は坂を転がるように業績が悪化の一途を辿った。


捨てるような素材で作られたブローチは確かに売れて一時売り上げが上がったように見えたが、その後の購買には繋がらなかったのだ。確かに貴族からすれば安価ではあったが、平民にしてみれば贅沢品だ。思い切って購入して、たまの記念日などに付けようというような価格帯にも関わらず、未精製の魔鋼鉄は柔らかく、少しぶつけただけで歪んで石が外れてしまった。貴族からしてみれば一度付けるだけの毛色の違うおもちゃのような品でも、平民からすれば節約してやっとの思いで買った宝飾品がすぐに壊れてしまうことは堪え難く、それならば小さな石でも長く使える物が良いと二度とそのブローチを選ばなくなった。

貴族達も最初は目新しさと気軽さから遊び感覚で購入してくれたが、夜会などに付けて行くには質も悪く、それこそ目の肥えた上の者達の評判は悪かった為に次第に付ける物はいなくなって行った。


業績の悪化をどうにか食い止めようと、ジェイクとフランソワはもっと品質を良くして単価の高い貴族向けの物を売り出そうとした。そこで屑石の中から価値のある石だけを選出するように工房に命じた。そしてそれでも足りない時は、わざわざ指輪に仕立てられる程度に大きかった石を砕いてまで小さな石を作らせたのだ。

ジェイク曰く、半端な石で指輪を一つ作るより、砕いてブローチ五個分にした方が倍は売り上げが出る、という理屈だった。確かに純粋な売り上げはその通りなのだが、実際は砕いた数だけ宝石の鑑定書を作成しなければならず、その分の事務費用が上乗せされた。更に土台にも高級感を出す為に徹底して精製を繰り返して美しさを追求した魔鋼鉄に変更したが、その精製の費用と硬さが増した為に特別の工具が必要となり、職人や事務員達の超過給与も嵩み、結果的に手間がかかっただけで指輪一つ分の売り上げと大差ない結果になった。


その上、安価のブローチだけを買い求める客の中にはかつての令嬢達のようにマナーも知らない者も増えて来て、以前より長く懇意にしていた貴族の顧客の大半が離れてしまった。良い石は砕かれ、腕の良い丁寧な仕事をしていた職人達はブローチ作りに追われて、新たな商品が一向に入荷しなかったのも大きかった。


伯爵家の、それも王家の血を引いている令嬢の婿になる為の試練の一環と思ってジェイクに宝飾店を任せきりにしていたヘパイス子爵がやっと現状を知った時は、既にどうしようもない程経営は悪化していて、これ以上負債が増えることを防ぐ為に店は閉められることになった。そしてその失敗を責められて、ジェイクとフランソワの仲も急速に冷えて行った。


フランソワの計画では、身分は低いが極めて美しい容貌を持つジェイクを自分の力で出世させて、誰よりも見る目があり献身的に夫を支えた妻の鑑として讃えられる予定だったのだ。自分には実現するだけの才覚もあったし、ジェイクにもそれだけの能力があると思っていたのだ。しかしお互いに自身の力を過信した結果、どちらも止めることも立ち止まって冷静に振り返る機会もないまま、ただ破局への道をひた走っただけだった。



やがてブラウン伯爵家の後継はフランソワの下の妹に決まり、地味ではあるが堅実なことで有名な家門の伯爵家の三男を婿に迎えることに決まった。

自分よりも地味な容貌の妹が、更に地味な婿と共に伯爵家を切り盛りして行くことが我慢出来なかったフランソワは、役に立たなかったジェイクを見限って自ら婚約を破棄した。そして今度は正統な王家の血を引く者だと声高に主張して、もっと高位貴族の相手を捜そうとしていた。しかし、既に彼女の望むような令息達はとっくに決まった相手がいたし、その後よりにもよって侯爵令嬢の婚約者を強引に奪おうと画策していたことが発覚した。かつて婚約者のいたジェイクを自分に乗り換えさせた成功体験があったからだろうが、それは相手が同格の伯爵家で、ジェイクは格下の子爵家だったからこそどうにかなったのだ。何とかその件は未然に防いだものの、危うく伯爵家が途絶える寸前であった。どちらかと言うと、侯爵家から後継に決まっていた妹に慈悲を掛けてもらったのが実情ではあるが。


その後ブラウン伯爵は、侯爵家からの「慰謝料の代わりに二度と戻って来ないことを条件に、フランソワを国外の貴族へと嫁がせるように」との要望を呑んだ。その嫁ぎ先は侯爵家が選定したもので、相手は噂でも聞いたこともない遠い国の、顔も年齢も性格も知らない大公だった。


状況の読めないフランソワは、嫁ぎ先が異国ではあるが大公家というだけで二つ返事であっさりと話を受けた。その後、ブラウン伯爵家に別人のような筆跡で「婚家では良くしてもらっています」とだけ書かれた手紙が一度届いただけで、それきりフランソワの消息は一切分からなくなったのだった。



フランソワからの婚約を破棄されたジェイクは、二度の縁談の消滅や事業の失敗などが社交界に知れ渡り、まともに相手をしてくれる者がおらずに夜会に顔を出すことはなくなっていた。辛うじて保たれている美貌だけで、幾人かの未亡人に共有で可愛がられているということだが、その真相は定かではない。



誰かにざまあされるというより、自滅した感じです。ヘパイス子爵もこの後巻き返すことは出来ず、夫婦揃って長男に強制的に隠居させられて、鉱山以外特に何もない領地で長い余生を送ることになります。

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