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9話 少女化

 そこでクレアが駆け寄って来る。


「凛さんっ。九尾様は?」

「ばっちり倒したわよ。もう、ぺっちゃんこも、ぺっちゃんこ」


 巨大ハンマーで潰された場所は、大きな窪みとなっていて、草木も何もかも潰れていた。

 それを見たクレアは複雑な表情をする。


「これまで神様と呼んでたから、気にする気持ちは分かるけど、あれは本当にただのモンスターよ」

「じゃあ、凛さんは……凛様は神様なんですか?」

「うぇ!? 何で神様!?」

「だ、だって、あんな凄い戦いしてたから……」


 人間離れした戦いの姿から、九尾の狐以上の存在、即ち、神ではないかと疑われていた。


「正真正銘人間よ。アーティファクト使ってたから、そう見えたのかもね。私自身は他人より、ちょっと魔法ができるくらいよ」


 凛は手の甲に宿る土の刻印を見せて言った。


「アーティファクトですか! 初めて見ました」


 クレアはまじまじと、その刻印を見る。

 この世界でアーティファクトは大変貴重で、一般的に庶民は、まずお目にかかれる代物ではなかった。


 興味津々であったが、あまり見るのも失礼と思い、クレアは早めに視線を外す。

 しかし、その視界の先で、おかしな動きをする物体が映った。


「えっ、あれって……」


 巨大ハンマーにによって出来たクレーターの中央。

 そこでは肉のような塊が蠢いていた。

 その肉塊は形を変え、九尾の狐の姿へと変貌して行く。


 振り向いた凛は、その姿を見て驚く。


「嘘!? まだ生きてたの!?」


 凛はすぐさまハンマーを再生成する。

 すると、それを見た九尾の狐は、飛び退くようにして、その場から逃げ出した。


「あ! 待ちなさい!」


 凛は慌てて、逃げた九尾の狐を追い始める。



(あいつを逃すのは不味いわ。あんなヤバいモンスター、絶対ここで始末しないと)


 異常な強さと、しぶとさを持ち、人間を食う。

 そんな危険なモンスターを野放しにしておくことはできなかった。


 逃げる九尾の狐の背に向けて、凛は石礫を乱射する。

 九尾の狐は石礫を何発か受けるが、振り向きもせず逃げ続ける。

 敵わないと理解してか、逃げの一辺倒だった。


「逃してなるものですか」


 凛は逃すまいと、放つ石礫の勢いを強くする。

 数多の石礫が九尾の狐を襲い、被弾数も増えて行った。


 どれだけ当たっても構わず逃げ続けていたが、身体はいつまでも持つことはなく、遂には力尽き、九尾の狐は落下して行った。


「よし!」


 撃ち落としに成功した凛は、落下地点へと走る。



 すぐに落ちた地点に辿り着くが、そこには何も残っていなかった。

 周りを見回すが、九尾の狐らしきものは見当たらない。


 そこで凛は魔法陣を描き、探知魔法を発動させると、すぐ近くの木のところに反応があった。


 その木は結構な大きさで、地面から露出した根が洞穴みたいになっているようだった。

 穴の前には不自然に岩が置かれており、塞がれている。


「ふっふっふ。見つけたわよ」


 穴の中にいると分かった凛は、いつでも攻撃できるよう身構えながら、その岩を退かす。

 すると、中に居たのは着物を着た十二、三歳の少女だった。


「うぅ……。殺さないでくれなのじゃ」


 その少女は半泣きで命乞いをする。


「……誰?」


 首を傾げた凛だが、背中から見えている沢山の尻尾から、その子の正体に気付く。


「まさか貴方、九尾の狐なの?」


 一見、獣人の少女に見えるが、腰からは特徴的な九本の尻尾が生えており、それは九尾の狐の尻尾そのものだった。


「頼む。何でもするから、殺さないでくれ……」


 九尾の狐は全面降伏した様子で、必死に命乞いをしていた。


「あの、とりあえず聞きたいんだけど、その姿は?」

「もう力が残ってないから、この姿で形を維持しているのじゃ」

「省エネモードってことね」

「じゃから、もう儂には戦う力は残っておらん。頼むから、命だけは助けてくれ」


 九尾の狐は土下座せん勢いで命乞いを続ける。

 その必死の様子に、さっきまで殺す気満々だった凛は困惑していた。

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