表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/63

62話 冒険者達の襲撃

 驚いて目を向ける一同。

 すると、村の入り口には、倒れた見張りのドリアードと、武装したグループの姿があった。

 入口近くの建物は火をつけられ、燃え盛っている。


「くっ、しまった!」

「何? 何なの、あの人達」

「フェルシアの冒険者だ。村にある命脈草の備蓄を狙って、襲撃に来るんだ。いつもなら警備を厳重にしてるんだが……」


 普段なら、村への侵入を許すことはなかったが、村の中に居る凛とガーネットを警戒するあまり、そちらに警備を割いて、外への防衛を疎かにしてしまっていたのだ。


「オラァ! ありったけの命脈草出せや。お前らが隠してるのは分かってんだぞ」


 襲撃してきた冒険者達は、武器を出して恐喝する。

 ガラの悪い、冒険者とも思えない連中だった。


 ドリアード達は慌てて冒険者達に詰め寄る。


「出ていけ、粗暴な人間共! ここは貴様らが入って良い場所ではない!」

「なら、さっさと出すもの出せよ。さもないと、お前ら全員燃やすぞ」

「ふざけるな! 貴様らなどに与えるものは何もない」

「そうか、よっ」


 冒険者は突然ドリアード達に火炎瓶を投げつけた。

 身体に火が広がり、ドリアード達は悲鳴を上げて燃え盛る。


「貴様ぁ!」


 先程栄養剤を浴びたドリアードは、燃えながらも蔦を伸ばして反撃するが、炎に巻かれているせいで威力が弱く、冒険者に簡単に撃ち落とされる。


 しかし、そこで燃え盛るドリアード達に水が浴びせられる。

 彼女らに水を浴びせたのは凛だった。


「私が相手をするわ。貴方達は下がっててちょうだい」

「人間の手を借りることなど……」

「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ。死人、出ちゃうわよ」


 ドリアードは迷う素振りを見せるが、すぐに避難を始めた。


 そこでガーネットが何事かと小屋から出てくる。


「何? あんた、何かやらかしたの?」

「私じゃなくて、あっち。あっちは私が相手するから、消火お願い」

「わ、分かったわ」


 ガーネットは状況がいまいち分からなかったが、燃え盛る炎を見て、慌てて消火活動を始める。



 凛はドリアード達を避難させつつ、冒険者達と向き合う。


「ドリアードじゃない奴が、何でこんなところに居る」

「観光客みたいなものよ。それより貴方達、こんなことして、ライセンス剥奪ものよ?」

「何だ、同業者か。真面目ちゃんだねぇ。実際、この程度で処罰されることなんて殆どねえんだよ。それにな。今、領主様は命脈草の収集に力を入れている。沢山回収して来れば、お咎めなしってもんよ」

「領主、ね……」


 凛は命脈草採取の依頼が、領主直々のものだったことを思い出す。


「つう訳で、退けや。邪魔するなら、お前の痛い目に遭わせるぞ」

「それはこっちのセリフよ。痛い目に遭わされたくなかったら、立ち去りなさい。あ、建物損壊させた分と、ドリアード達への治療費・慰謝料はちゃんと置いて行くのよ」

「馬鹿にしてんのか、てめぇ! てめぇも、ぶっ殺してやる!」


 激高した冒険者達は、武器を振り上げて飛び掛かった。


――――


 凛はボコボコにした冒険者達を縛り上げる。


「まったく……。チンピラと変わらない冒険者って結構いるのよね。ギルドはもっと厳格に冒険者の管理をしてほしいわ」

 

 愚痴を言いながら縛り上げていると、栄養剤をかけられたドリアードの人が、おずおずと凛に近づいてくる。


「あら、怪我はもう大丈夫?」

「あ、ああ、他の子達も、貰った栄養剤のおかげで快晴に向かってる」

「それは良かった」


 すると、ドリアードはもじもじしながら言う。


「……助けてくれて感謝する。それから、先程のことは失礼した。改めて謝罪させてくれ」

「いいわ。実はね、私も同じ依頼を受けて来たの。勿論、もうやる気ないわよ。受けた時は、貴方達にとって大切なものって知らなかったから」

「そうか……。ならば、お礼に分けてやりたいところだが、乱獲で備蓄も少なくてな」

「そのことなんだけど、私が話をつけてきてあげましょうか? 領主の娘さんとは、お友達なの。聞いてくれるかは分からないけど、任せてくれるなら、何とか話してみるわ」

「そうなのか? できるなら頼みたいが……」

「任せて。出来る限り頑張ってみる」



――――



「そのようなことが起こっていたのですか……」


 それから一旦街に戻った凛は領主邸へと赴き、クーネに事の次第を報告していた。


「でね。乱獲するのを止めさせてほしいのよ。必要だから依頼出してるのは分かるけど、無茶苦茶やる人も出てきてるから」

「……実は現在、父は身体を壊していて、兄が代理で取り仕切っているのです。兄は私の言葉など聞きませんから、出している依頼に口出しすることはできません」

「じゃあ無理ってこと?」

「いえ、依頼は変えられませんが、別の指示を出すことはできます。私の方から、ドリアード達の村周辺を保護地域に指定するようにすれば、環境を破壊することは厳罰となりますので、乱獲はなくなるでしょう」

「おぉ、いいじゃない。じゃあ、それでお願い」

「はい。現地には私も行きましょう。ドリアードさん達には、領主の娘として、これまでのことを謝罪しなければいけないですから」


 クーネとの話により、比較的あっさりと解決策が出された。


 それから、クーネはすぐに動き、ギルドの方にドリアードの村周辺を保護地域に指定するよう指示を出してから、凛と共にドリアードの村へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ