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60話 ドリアードの集落

 ドリアードの少女の案内で森を進み、程なくして集落へと到着する。

 到着した凛達を出迎えたのは、武装したドリアード達であった。


「ユーリスを離せ! この人間どもが!」


 ドリアード達は敵意剥き出しで凛達を包囲する。


「ち、違うの。私はこの子を送り届けに来ただけ。モンスターに襲われてたから助けたの」

「そうやって油断させて、村に入り込む気だな。騙されんぞ!」

「本当だって。ほら、ユーリスちゃんも言ってあげて」


 凛は助けたドリアードの少女、ユーリスに援護を求める。


「んー? そうだよ」

「無理矢理言わせてんじゃないぞ。この卑怯者が!」


 ユーリスが肯定してくれたが、気のない喋り方で一言言っただけだったので、信用されなかった。


「ちょ、本当にそうなんだって」

「黙れ! 問答無用だ!」


 先頭のドリアードが地面から鋭い蔦を伸ばして、凛達へと攻撃して来た。

 凛は慌てて土の壁を作って、その攻撃を防ぐ。


「違うって言ってるのにー」


 凛は必死に弁解するが、ドリアード達は聞く耳を持たなかった。


「殺せー!」


 最早対話をする意思もなく、ドリアード達は皆一斉に攻撃を始める。


「もー! いい加減にしなさい!」


――――


 数分後。

 そこにあったのは、凛達に向けて土下座をするドリアード達であった。


「本当に村の娘を保護してくれたのですね。そんな御恩人の方にとんだ失礼を」


 ドリアード達が聞く耳を持たなかったので、凛は強引に蹴散らして反抗できなくさせたところで、淡々と言い聞かせたのだった。


「お詫びも兼ねて、村で持て成させていただきます。どうぞ中へと」


 先程とは打って変わって丁寧な態度で、凛達は村へと招き入れられる。

 どこかであったような光景と思いながらも、凛は持て成しを受けることにした。




 案内された小屋で、大量のフルーツに囲まれる凛とガーネット。


「何だか、おかしなことになったわね」


 ガーネットはフルーツを食べながら、そんなことを呟く。


「冒険していれば、そういうこともあるわ。これが冒険の醍醐味ってね」

「こんな醍醐味いらないわよ。勝負もおじゃんになっちゃったし」


 持て成される際に聞いた話で凛達は知ったのだが、ドリアード達が外の人間を嫌うのは命脈草が原因であった。


 ドリアードの身体は、他の種族と比べると少々特殊で、通常の回復魔法や傷薬が効かない体質だった。

 その代わりに足の根に栄養剤をかけることで、治癒力を高めて再生を促すことができるのだが、怪我や病気の状態や重さによって、必要な栄養剤は変わる。


 そこで出てくるのが命脈草であった。

 命脈草から作られる栄養剤は、その効果を引き継いで継続的な回復効果を齎してくれる。

 その為、長い闘病生活や高齢者の延命には必須なものだった。

 特に年老いた高齢者は、ちょっとした怪我からも腐敗を誘発させるので、常に欠かすことは出来ない。


 つまり、ドリアードならば、何れ必ず要ることになる生命線とも言える薬草だったのだ。


 だが、近年になってフェルシアで需要が高まったらしく、冒険者達によって命脈草の乱獲が行われるようになった。

 ドリアード達は何とかして止めてもらおうとしたが、止まることはなく、無理に止めれば暴力に訴えてくる者も出てくる始末。


 そうしているうちに嫌悪感が高まり、外の人間を嫌うようになっていたのだ。



 そんな話を聞いてしまった凛とガーネットは、自分達も採りに来ましたなどと言えるはずもなく、依頼を諦めるしかなかった。


「無駄足だったわ。食べたらさっさと帰るわよ」

「もうちょっと留まりましょうよ。せっかく入れてもらったんだから、観光しなきゃ損だわ」


 早く帰ろうとするガーネットを凛が引き留める。

 観光と言いつつ、本音はユーリスともっと交流したかっただけであったが。


「閉鎖的な村なんて碌なものじゃないわよ。と言っても、そういうとこ出身じゃなきゃ分からないわよね。適当に時間潰して待っててあげるから、満足したら呼んでちょうだい」

「ありがと。やっぱり、ガーネットちゃんって優しいわね」

「やっ、優しくなんてないわよ。ふざけたこと言うなら、先帰るわよ」

「あはは、ごめんごめん」

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