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55話 ランクアップ試験

 凛がフェルシアにやってきて、早数週間。

 生活費や細々とした出費によって、貯金が目減りして来たので、凛は稼ぐべく、ラピスを連れて、フェルシアの冒険者ギルドへと足を運んだ。


「おや? 二人ともランクアップ可能ですね。お受けますか?」


 二人が依頼を受けようと受付に行った時、受付嬢の人にランクアップ試験が受験可能となったことを告げられた。

 ベルガでの緊急依頼では、凛達は後処理の途中で逃げ出したのだが、ギルドにはしっかりと活躍分のポイントが加算されていた。


 ランクが上がれば、受けられる依頼が増え、冒険者としての立場も上がる。

 本日は丁度この後、ランプアップ試験が行われるとのことだったので、二人は滑り込みで入ることにした。



 ランクアップ試験の為、二人はギルド建物奥の講習部屋へと入る。

 部屋には既にランクアップ試験を受ける冒険者が数名、椅子に座っていた。


 二人も適当な席に座ると、二人の顔を見た近くに座っていた女の子が声を掛けてくる。


「あんた、ラピスじゃないの」

「え? あっ、ガーネットちゃん」


 ガーネットと呼ばれたその子は、赤い髪の毛で魔女服に身を包み、ラピスと同じ、目の星マークが特徴的な魔女族の少女であった。


「知り合い?」

「はい。同じ村の子です」


 凛が尋ねると、ラピスが答えた。

 ラピスとガーネットは、同じ村で育った幼馴染の関係であった。


 ガーネットはラピスに話を続ける。


「何で、あんたがこんなところにいるのよ。まさかランクアップ?」

「うん。そうだよ」

「ふーん、あんたがねぇ。あんたが落ちるのは勝手だけど、私まで巻き込まないでよ」


 ガーネットの態度はラピスを見下しているような感じだったので、凛は思わず口を挟む。


「ちょっと、そんな言い方はないんじゃない?」

「はぁ? 何なの、あんた。ラピス、こいつ誰よ」


「私の師匠」


 ラピスが答えると、ガーネットは吃驚した顔をする。


「人間種に弟子入りなんて、気でも狂ったの? あんた、ハーフとはいえ魔女族でしょ」

「凛さん、凄い人なんだよ。色んなこと知ってるし、魔法も全然凄いの。稀人だから普通の人間種とは、ちょっと違うんだ」

「稀人だろうと、人間種は人間種じゃない。冒険者に、ちょっと戦術教わることくらいは私もあるけど、弟子入りは話が別だわ。魔女族の誇りはない訳?」


 人間種と魔女族では、根本的に魔法の地力が違う。

 何もガーネットは人間種を見下している訳ではないが、魔女族が人間種の人に弟子入りするというのは、種族の能力差から、普通では有り得ないことだった。


「で、でも、凛さんは本当に凄くて……」


 ラピスが言い返そうとしていると、後ろの席に座っていた獣人の青年が声を上げる。


「うっせーな。喧嘩してんじゃねーよ」

「喧嘩なんかしてないわよ。割り込んでこないでくれる?」

「だったら、静かにしてろよ」


 試験前の会場だったので、みんな緊張して静かにしている中、お喋りする二人は非常に目立っていた。

 そのことに気付いたラピスとガーネットは、若干居心地悪そうにしながら静かになる。



 そうしているうちに開始時間となり、部屋に入って来た試験官がランクアップ試験の説明を始める。


「試験内容は団体での大型モンスター討伐だ。討伐対象はジャイアント・アイアンタートル。

硬いが危険度はそれほど高くない。だが、ただ倒せばいいという訳ではない。この試験では協調性も重視して評価をつける。

これまでソロでやってきた人もいるだろうが、今後ランクが上がって行けば、パーティを組んで重要な任務を行うことも出てくる。

チームワークを上手く取ることも、冒険者には必要なスキルなんだ。回復でも支援でも構わない。

直接的に攻撃に関わらないことでも、パーティに貢献していると判断すれば、評価をしよう」


 ランクアップ試験は個別ではなく、集団で協力するものだった。

 それを受け、緊張していたラピスは、さりげなくホッとした顔をする。

 凛の強さは知っていたので、試験で協力を得られるのは非常に心強かった。



 試験官は粗方説明を終えると、次に受験者の人達に作戦会議を始めさせた。

 その場で受験者の人達だけで集まり、討伐対象の情報を基に作戦会議を行う。


「アイアンタートルは動きが鈍いけど、身体が硬くて攻撃も重いの。唯一、真面に通るのが、弱点の炎。炎は私の得意魔法だから、攻撃は任せて。他の人は援護してちょうだい」


 ガーネットが取り仕切り始めるが、青年が異を唱える。


「勝手に仕切るなよ。リーダーは俺がやる」

「あんたこそ、勝手にリーダーになろうとしてるんじゃないわよ。このモンスターについては野良で戦ったことあるから、私の方が詳しいわ」

「そんなことなら、俺だってあるさ。魔女族は体力があんまりないんだろ? リーダーは荷が重いから、俺がやってやるって言ってんだ」

「馬鹿にしないで! そのぐらいの体力はあるわよ」


 作戦会議をするはずが、何故か喧嘩みたいになってきた。

 凛は苦笑いしながら試験官を見る。

 これも試験のうちであることが、二人には分かっていなかった。


 ここで巻き込まれて失格になるのも不本意だったので、凛は口を挟む。


「誰が仕切ってもいいけど、とりあえず役割分担決めない? それぞれの得意分野とかで、振り分けてよ」

「それもそうだわ。さっさと決めましょ」


 凛に促され、一先ずみんなで討伐の役割を決め始める。

 何だかんだで作戦会議は進んで行くが、凛は先行きが不安だった。

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