表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/63

42話 緊急討伐依頼

 賞金のおかげで、当面の旅費は確保できたが、ラピスへの指導はまだ続いていた。

 凛、玖音、ラピスの三人は、まず依頼をチェックしようと、冒険者ギルドへとやって来た。


「戦闘訓練ばっかだったから、偶には気分転換に討伐以外の依頼をやってみてもいいかもね」


 三人が建物の中へと入ると、そこはいつもと雰囲気が違っていた。

 冒険者の人達は皆、厳しい表情をしており、職員達は慌ただしく動き回っていた。


「ジェネラル・ゴブリンが出たってよ」

「マジかよ。ジェネラルってことは、もう軍隊になってるんだろ。ヤバくねーか?」


 入って来た三人を目にした職員が、駆け寄って来る。


「冒険者の方ですよね? 先程、町の近くで、危険度の高いモンスターの巣が発見されました。緊急で討伐隊を結成しますので、是非ご協力を」




 冒険者ギルドの会議室。

 そこでは緊急討伐を引き受けた冒険者が多く集まっており、早速ながら討伐に向けての作戦会議が始められていた。

 パーティやクランごとに集まって座る冒険者達を前に、今回の任務の指揮を務める元熟練冒険者の教官が、情報共有や作戦説明を行う。


 話を聞く冒険者の中に、凛達の姿もあった。


「何で儂まで参加せねばならんのじゃ」


 椅子にもたれて、だらしなく座る玖音が、面倒臭そうに言う。

 指導とは関係ないとのことで、シェルターミラーに引っ込もうとしたところ、凛に引き止められて、強制参加されられていた。

 そこには玖音とラピスだけでなく、シーナの姿もある。


 危険度が高いとのことで、凛は念の為に戦闘力の高いメンバーを出していた。

 ただ、パーティとしてのランクは低い為、この作戦会議では後ろの方に座らされ、殆ど蚊帳の外のような状態だった。


「何かヤバいらしいから、戦力として協力してよ」

「冗談はよせ。モンスターなんぞ、主一人で十分じゃろ」

「そうかもしれないけどー、みんなで戦いに行くの楽しそうじゃない。本当はフラムちゃん達も出そうかと思ったんだけどね。流石に危ないから、今回はこのメンバーで」


 その時、近くの席から声が投げかけられる。


「遠足したいなら、余所でやれよ」


 凛が声の方を向くと、そこにはラピスの元パーティの人達が座っていた。


「お前らのパーティ、女子供しかいねーな。遊びで来るような奴らは、邪魔だから帰れよ」


 先日、返り討ちにされたアラン達であったが、若さからか、それで折れることなく、懲りずに再び喧嘩を売って来た。


「邪魔になるのは、私一人にボロ負けしたパーティの方じゃないかしら」

「何だと、てめぇ! ままごとパーティの癖に」


 前回やられた悔しさもあってか、アランは一言言い返されただけで激高した。

 だが、それで前で説明てしていた教官が、騒ぎに気付く。


「そこ! 騒がしいぞ!」

「ごめんなさーい」


 凛が謝罪し、アランも押し黙るが、それからは恨みがましい目で凛を睨み続けた。



 引き続き作戦会議が行われ、持ち場の割り当てがされて行く。

 割り当ては主に、巣への突入班と包囲班に分けられ、パーティとしてのランクが低い凛達は、当然のように包囲班の端へと配置された。


 配置指示を出された際、凛が挙手をして言う。


「あの、私達も突入班に入れてくれませんか?」

「ははっ、活きのいいルーキーがいたようだな。お前らは包囲班だ。勇ましいことを言うのは、日頃の活動で実績を上げてからにしろ」


 教官は話を取り合わず、一蹴する。

 ランクも低い無名冒険者からの申し出であるので、当然の反応だった。


 凛も駄目元で言ってみただけなので、すぐに受け入れたが、アラン達はクスクスと馬鹿にした笑いを向ける。

 凛は不快そうに視線を向けるが、相手にしてもしょうがない為、無視する。


 割り振りを再開しようとした教官だったが、何かに気付いたように、凛の顔を二度見して言う。


「ちょっと待て。君はまさか、この前、モンスターバトルで新たな王者となった道場破りの調教師か?」

「うぇ!? あっ……はい」


 その教官は凛が飛び入り参加したモンスターバトルの観客の一人だった。

 凛は認めながらも、バツの悪さを感じる。


「あれ程のモンスターを従えるテイマーなら、話は別だ。突入班に入れよう」


 凛が確認するように玖音に視線を向けると、玖音は首を横に振った。


「あ、すみません。あの子は今ちょっと従えてなくて。今回は戦士として参加します」

「テイマーでもないのか。それなら、すまないが、予定通り包囲班に入ってもらう」

「はぁい」


 あまり追及されたくないことだったので、凛は素直に受け入れた。


「悪いな。あっ、後でサインくれ」


 凛が苦笑いしながらオッケーすると、教官は配置の割り振りを再開する。

 それからの教官は、心なしかテンションが高かった。



 作戦会議を終えた討伐隊は、すぐさま現地へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ