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35話 コロシアム

 一旦シェルターミラー内に戻っていた玖音を再び呼び出し、三人で町をぶらついていると、コロシアムの前でフラム達と遭遇した。


「あら、こんなところで何してるの?」

「あ、凛。モンスターバトル観ようかなって話してたんだ」


 モンスターバトルとは、調教されたモンスター同士を戦わせて、勝敗を争う競技である。

 手持ちの従魔で参加することもできるが、出場者にはモンスターバトル専用に調教されている選手が多く、素人には敷居が高い為、スポーツ観戦のように応援して楽しむのが一般的である。

 賭博も行われており、この世界ではメジャーな娯楽の一つであった。


「へー、こういうの興味あるんだ?」

「ああ、昔からよく観に行ってたんだ。小遣い全部スッてからは賭けるのは禁止されたけど」

「駄目じゃん」

「いや、でも、モンスターバトル自体は最高に面白いんだぜ。鍛え上げられたモンスターが、全力でぶつかり合う熱いバトル。血沸き肉躍るだろ?」

「うーん、スポーツ自体あんまり観ないのよね……。あ、一般参加もできるのね。玖音、出てみれば?」

「お、いいな。優勝賞金めっちゃ貰えるぞ」


 コロシアムの壁に掲載されている広告には、飛び入り参加歓迎という文言もあった。

 素人参加が難しいからか、なかなかの賞金額が記載されている。


「馬鹿にしておるのかっ。外で従魔扱いされるのは仕方ないとしても、こんな調教された家畜みたいな真似するのは御免なのじゃ」


 玖音が出れば優勝間違いなしであったが、プライドが許さなかった。


「優勝したら賞金沢山入るから、食事が豪華になるわよ」

「……やらん」

「今迷ったでしょ」

「ま、迷っとらんわっ」


 旅を始めてから、人一倍食事を楽しんでいた玖音は、食べ物の魅力に弱かったが、神としてのプライドの為に、何とか踏み止まった。



「じゃあ普通に観戦するか。凛達も来る?」

「そうね。特にやることなかったから付き合うわ」


 観戦することした凛達は、コロシアムの中へと入って行く。


「なぁ、ただ見るだけじゃ燃えないから、ちょっとだけ賭けていい?」

「……さっきの話聞いたら、許可出したくないんだけど」


 大損した話を聞いた後では、流石の凛も許可を下ろすのには抵抗があった。


「お願いっ。好きな選手が出るんだ。ちゃんと限度を弁えてやるから、頼むっ」


 フラムは拝むようにして頼んでくる。


「うーん、仕方ないわねー。ちゃんと節度を持ってやるのよ」

「よっしゃっ。サンキュー、凛ー」


 少女のお願いに弱かった凛は、結局すんなり許可を出した。




 凛達は賭券売り場で、お目当ての選手モンスターに賭けてから、観客席へと移動する。


 席に着くと、中央の闘技スペースでは、既にモンスターの戦いが行われていた。

 熊のモンスターと小型ドラゴンが、雄叫びを上げながら激しいぶつかり合いをしている。

 観客席には結構な人が入っており、皆熱狂してそれぞれ賭けた方のモンスターを応援していた。


「結構人気あるのね」

「大人気だぞ。凛は冒険者やってるから、珍しくとも何ともないだろうけど、一般人が熱いバトルを観られるのは、ここくらいだからな」


 この世界は娯楽が比較的少ない為、コロシアムがあるところでは、モンスターバトルは一定の人気を博していた。


 話していると、早々に決着が着き、次の試合へと移る。


「さぁ、王者決定勝ち抜き戦、続いての対戦はこのモンスター達だ!」


 MCの言葉に続き、控室から大柄のバッファローを引き連れた兎人族の少女が入場してくる。


「おっ、来た」


 そのバッファローはフラムが賭けたモンスターであった。


「あら、可愛い。兎人族の子ね」

「そっちかよ。まぁ、調教師も凄い奴だけどさ。あの子はミーシェ・クラビッツ。あたしと同い年なのに、若手調教師のエースやってた子なんだぜ。ただ、ちょっと前にスランプ起こしてたみたいで、負け続きになってて。元々うちの街でやってたけど、いつの間にか姿見なくなってたんだ。こっちに来てたことは、あたしもさっき初めて知った」

「都落ち? 可愛い女の子なら、私も応援したくなるわね」


 続いて、相手選手も入場してくる。

 対戦相手は鋭い牙を持つゴリラのようなモンスターであった。

 筋肉質で強そうな風貌をしているが、バッファローの方も負けず劣らず、凛々しい身体をしている。


「野性のモンスターとは感じが違うわね」

「そこらのモンスターと比べてもらっちゃ困るよ。あのモンスター達は、バトル専用に鍛えられたエリート中のエリートなんだぜ」


 フラムは、まるで自分のことかのように自慢げに言った。

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