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33話 魔術講義

 今日のところはこれまでとして、凛達はシェルターミラー内へと戻る。

 中に入ると、庭ではフラムとシーナが木の枝を手に、チャンバラみたいなことをしていた。


「あ、お帰りー。稽古つけてるの見てたら、やりたくなっちゃって」


 稽古を見られたことが恥ずかしかったのか、フラムは少し照れくさそうにして言った。


「だったら、フラムちゃん達も参加する? 一人や二人増えたところで、負担にはならないからいいわよ」

「あー……遠慮しとくよ。本格的にはやるつもりはないし。それにシーナが教えてくれるってことになったから」


 やんちゃに育っていたフラムは、学生時代に進路で冒険者になることを迷ったほどであったが、父の会社を継ぐことを意識して、職人の道を選んだ。

 だから、興味はあったものの、職人としての鍛錬の方が優先であった。


「フラムちゃんの師匠はシーナちゃんってことね」

「うん、私が暗殺術教える」


 シーナは任せろと言わんばかりに胸を張って言った。


「それは……どうなの?」


 受けていた指導は、あまりにも物騒なものだった。

 凛が反応に困っていると、それを見てフラムが笑う。


「暗殺術なんてできないから安心してくれ。あたしと戦闘スタイルが全然違うから、やろうと思ってもできない。でも、だからこそ勉強になることもあるんだ」

「なるほど……」


 分野が違うからこそ、得られるものもある。

 理に適っている為、シーナをラピスの講師につけてみるのもありかもと考える凛だった。




 小屋の居間にて、座学による知識面での指導も行う。


「……で、ここの部分は形に関するところだから、拘りがなければ、ばっさりと切り捨てて簡略化できるわ」


 黒板に魔法の術式を書き、凛は学校の先生みたいに講義をしていた。

 凛の前に座って講義を聴いているのは、ラピスだけでなく、フラムやクレア達もだった。

 集めた訳ではなかったが、みんなの前で始めたので、自然と全員が参加する形となっていた。


「こんなアレンジ方法があったなんて知りませんでした……」

「これ、消費魔力めっちゃ減るから、あたしでも大魔法使えそう」


 講義内容は魔法の術式の改変方法であった。

 こちらの世界では、まだ術式の中身が完全には解明されていなかったので、凛が話す内容は、みんなにとって驚くべきことであった。


「でも、こんなこと教えてもらっていいんですか? 独自に開発した術式は、秘伝として門外不出にしているところが多いですが」

「私も友達に教わったことだからね。独占する気なんてないわ。みんなも使いやすい方がいいでしょ」


 凛の知識は大体、ゲームをやり込んでいた瑞希から教わったことである。


 術式を代々研究しているところもあり、改変の情報は非常に価値のあるものだった。

 上手に売り払えば巨万の富を得られる程であったが、凛はそこまで重要視しておらず、皆が便利になればいい程度にしか考えていなかった。


「主は精鋭の傭兵部隊でも作る気か?」


 部屋の端で見学していた玖音が、呆れた顔で言う。


「そんなの作らないわよ。ただ、術式の改変方法教えてるだけだわ」

「それだけで戦力が爆増なのじゃが……」


 改変は上手く行うことで、効率や威力が劇的に上がるので、それだけで戦闘力は格段に上がる。

 凛は意図せず、この講義で女の子達の戦闘力を強化していた。


「まぁ、護身になるから、強くなるに越したことはないわ。玖音も強くなれて良かったでしょ?」

「儂は術式など使っておらん」

「あ、そうなんだ。そういえば人間じゃなかったわね」

「そういえばって……。ほら、話が脱線しておるぞ。さっさと講義に戻れ」


 玖音は呆れるが、相手が凛なので、諦めて話を終わらせる。

 凛がいるからか、神としての威厳が薄れており、最近では他の子からも友達扱いされていた。

 しかし、玖音は無礼だとは思いつつも、受け入れていたのだった。




 それからも指導は続き……。


「そのモンスターには炎がいいわ。弱点を覚えることも重要よ」

「はいっ」

「積極的に攻めつつも、心に余裕を。ミスはどんな時でも起こり得るから、いつでもリカバリできるようにね」

「はいっ」


 今日もいつものように、ベルガ近郊の森でモンスター相手に指導を行っていた。


(フラムちゃんもそうだけど、言うこと素直に聞いてくれるから、可愛過ぎて抱きしめたくなっちゃうわ……)


 師弟の関係から、ラピスは非常に従順で、凛の言うことは何でも真面目に聞いていた。

 しかも、フラムはクラフト指導の時だけだったのに対し、ラピスは指導外のことでも従順だったので、凛は最近愛しく思えて仕方がなかった。


「ね、ラピスちゃん。私、ラピスちゃんのこと好きになっちゃった。だから私のハーレム入らない?」

「え……あ、はい」

「えっ、いいの!?」

「は、はい。私に返せるものは、それくらいしかないから」

「ノウ! それ、身売りじゃないの。指導の見返りとか、そんな弱みに付け込んでものにするなんてこと、私にはできないわ」


 ラピスは指導の見返りに身を渡してきたが、凛は受け取らなかった。

 少女が好きだからこそ、嫌がる相手を無理矢理ものにすることは出来なかったのだ。


「すみません……」

「謝られると逆にダメージ来るわ……。はぁ……花嫁探しの旅は険しいわね。相思相愛になれるのは、いつになるのかしら」


 先日、ハーレムと言った時のみんなの反応を思い出して、凛は溜息をつく。

 同行してくれる子は増えてきていたが、恋愛的に好いてくれる子はまだ全然であった。


「そんな目的で旅をしておったのか……。同性愛とかハーレムとかもそうじゃが、同行者がいる以上、後出しで言うべきことではないと思うのじゃが」

「先に言ったら、来てくれないじゃない。私は旅の途中で目覚めることにも期待してるの」

「悪質じゃの……」


 凛は女の子の気持ちを尊重してはいたが、それで取り逃すようなことはしたくなかったので、まずは確保を行い、そこから関係を築きたいと考えていた。

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