31話 ラピス
了解後であったが、凛はラピスから弟子になることを申し出た理由を教えてもらった。
森の奥にある魔女の村に住んでいたラピス。
木から産まれた純粋な魔女族とは違い、ラピスは人間種とのハーフだった為、村では迫害された生活を送っていた。
唯一の味方は高齢の祖母だけで、両親は幼い頃に自分だけ村に置いて行方知らず。
苦しい生活を続けていたが、祖母が亡くなったことを機に村を飛び出し、冒険者としての生活を始める。
しかし、結果は御覧のあり様。
パーティを組んだアラン達に嵌められ、奴隷も同然の扱いを受けることになってしまう。
より一層苦しくなっただけであったが、そこで現れたのが凛だった。
アランをあしらい、魔女族をも驚かせる高い魔法の力を見せつけた。
それを希望の光と見たラピスは、冒険者として生きる為に、藁をも掴む思いで、弟子にしてもらいたいと申し出たのだった。
「とりあえず何をしましょうか。あ、まずは私の仲間紹介するわ」
指導に感けていると、また文句を言われ兼ねないと凛は思ったので、今度は早めにシェルター内の子達を紹介することにした。
凛がシェルターミラーを取り出すと、二人の身体がミラーの中に飲み込まれる。
中へと入ると、いきなり連れて来られたラピスは呆気にとられた顔となる
凛は簡単にアーティファクト内であることを説明してから、小屋に向かって声を上げた。
「みんなー集合ー」
呼び出しをすると、小屋の中から、わらわらと玖音やフラム達が出てくる。
「何じゃ、さっそく引っかけて来たのか。手が早いの」
「違うわよ。今回は向こうからお願いされたのっ」
皆が集まったところで、紹介をする。
「紹介するわ。魔女族のラピスちゃん。冒険者の弟子として取った子よ」
「よ、よろしくお願いします」
ラピスが緊張した面持ちで挨拶をすると、みんなから歓迎の声を掛けられた。
他の子もラピスへ自己紹介を行い、互いの挨拶を終える。
「この人達が凛さんのパーティメンバーですか?」
「ううん、違うわ。一緒に戦うこともあるけど、この子達は私のハーレムメンバーよ」
凛がそう教えると、他の子達は驚いた反応を見せる。
「初耳なんじゃが」
「私の趣味を知ってて同行してるってことは、もうハーレムの一員になってるも同然でしょ?」
「いや、違うと思うが……」
玖音の言葉を受け、凛は他の子の反応を窺う。
クレアとフラムは若干困惑した顔をしており、シーナは何も考えていないような平然とした表情を続けている。
玖音は否定の意思を述べており、肯定的な様子の子は誰一人いなかった。
「ええっと、兎に角そういうことだから。仲良くしてね」
自分に不利と見た凛は、話を強引に終わらせる。
「じゃあ、早速、師匠として弟子に指導をしましょうか。とりあえず実力を知りたいから、んー……あ、丁度いい的がいるわね。玖音、ちょっと変身して」
「誰が的じゃ!」
「暇してるんでしょ? 暫く指導に専念するから、手伝わないなら、やることないわよ?」
「……しょうがないのぅ」
ただでさえ暇を持て余し気味の玖音は、更に暇になることのことで、渋々手伝うことを了承する。
身体を神獣化させると、ラピスが吃驚仰天した為、凛は玖音のことを軽く説明してあげた。
「アーティファクト持ちなうえに、神獣様を仲間にしてるなんて、ここまで凄い人とは思いませんでしたっ」
ラピスは目を輝かせ、興奮気味になっていた。
だが、その様子はすぐに一転することとなる。
「ううう……」
神獣姿の玖音と対峙するラピスは、震えながら縮こまる。
実力測定として、玖音を的に攻撃を行うこととなったが、曲がりなりにも神だけあって、その威圧感は凄まじく、新米冒険者のラピスには耐えがたいものだった。
「対等にやり合う訳じゃないから、そんな怖がらなくて大丈夫よ」
「でも……」
「大丈夫、大丈夫。反撃なんかしてこないわよ。姿だけ勇ましい木偶だと思って。ミンチにしても死なないから、手加減無用よ」
「言いたい放題じゃな……」
ラピスを宥める為ではあったが、酷い言われようであった。
本来、崇められるべき存在である神獣も、凛からしたら、ただの人間と変わらない。
怯えていたラピスだが、凛に責付かれ、覚悟を決めて構える。
「い、行きます」
杖を翳すと、その先端に水球が発生する。
その水球は球状を保ちながら、力を溜めるかのように高速で渦巻く。
水の流れがどんどん速くなって行くが、その時、突然水球が破裂した。
「ひゃわっ」
破裂の反動を受け、ラピスは尻餅をつく。
「大丈夫?」
「ご、ごめんなさい。緊張してしまって」
威圧されながらだった為、ラピスは魔法の制御に失敗してしまったのだった。
「姿が怖過ぎるのかしら? 玖音、人間の姿にする?」
「そっちの方が抵抗あると思うぞ……」




